ほぼ無雲だがごくたまに迷い雲。
中野へ行き再度NTT黒ビルへ構えようとするもリンホフアダプターを忘れてしまいどうにもならない。やむなく島*忠で蛇腹アタッチメントの後部分用のアクリル板を買い、ブロードウェイのTOAで蛇腹の裏貼り用の布を見つくろって帰る。アクリルは東*急ハンズで買ってカットもやってもらったほうが手間を考えるとよほど早いのだが、ハンズだとサイズが小さくて取り数が減る分ちょっと高くつくし、0.1mm単位のカットはできないのでどのみち現物あわせでヤスリがけしなければならないし、何より金属加工ならともかく、見た目を問わないアクリル部材の切断ごときを外注しているようでは自作者(モン)の名折れだと思って、またがりがりやることにする。カメラの小ネジはW1/2。大ネジは3/8だったか。ネジ専門店にもないのになぜか島*忠にはWのナットがある。このナットで自作カメラの雲台固定はどうにかできるだろう。板つきナットというものがあり、これは便利と思ったのだが、M系のみでWまではさすがにない。そもそもWとUNCの違いがわからんが互換性ありそう。板つきナットはハンズにもなかったと思う。アダプターネジはハンズにあり島にはない。
以前は島よりハンズのほうが高かったのだが、最近注意して見ているとほぼ同じ。ハンズが下げてきたのだろう。昔は多少高くても便利だということで売れたが、ネット売買の普及でそうも言っていられなくなってきたというあたりか。品揃えはハンズのほうが多そうな印象もあるが、ジャンルによっては島が勝っていることもあり、一概には言えない。場所柄もあるのだろうが、ハンズの特に素材コーナーには美大生とか仕事でものを作っているふうの客が多いような気がする。アルミ加工などはそういった筋が中心だろう。一方島は日曜大工が主体でときどき本職の大工さんといったところ。つまりはホームセンターであり、その方面の品揃えが分厚いのだろう。金属やプラの加工はできず、木材のカットもハンズのように曲線やこみいったことはできず大雑把な切断のみなのもそのへんを反映していると思われる。
島の接客にはだいぶムラがある。もちろん行きとどいた接客のできる店員さんもいるのだが、基本的にはある分野にのみ通じている店員ばかりで、そのへんを歩いている店員をつかまえてもたいていはわからずに担当の店員を呼びだすことになる。まああれだけの品数を基本的にはワンフロアで扱っているので、全員がすべてのアイテムを把握できるわけもなく、商品の近くを歩いている店員が商品知識を持っていなくても無理はない。ただ、呼びだされた担当も必ずしもわかっているとは限らず、もっと詳しい店員やメーカーに確認したりという流れになることが多い。なげやりな態度の店員もいる。島は社名の由来になっているが同族経営らしく経営者に問題があるという噂もある。むろんたいていの店員はきちんと対応してくれるし返品もいやがらず受けてもらえるし、現場はちゃんとしてるけれど。
ハンズはというと、階ごとでジャンルがわかれているので島よりは商品知識が特化しやすいといえるが、それでも、近くにいる店員に何かを尋ねてもたいていそこそこは答えられるというのはたいしたものである。その階で扱っている商品については、全員が一通り把握しているということだろう。もちろんつっこんだことになると詳しい人に聞きにいくことになるが、それでも質問を仲介するためには質問の意味を理解していなければならないわけで、その程度には全商品について知っている必要がある。この点についてはハンズはいきとどいている。とにかく、「話が通じる」のだ。何がら年中客からの質問にさらされていて、たいていの質問には慣れっこになっており、受け答えの型ができあがっているということもあるだろう。でもそれだけでなく、通常では考えないような特殊な用途に関しても、こちらの質問の意図を的確につかんでもらえることが多い。頭のいい人が多いなと思う。それに、他のフロアはよく知らないが、素材や照明器具といったところに限っていえば、何かを自分でやろうという客層が集まってきているわけだから、客の教育程度も高い。ドンキあたりの客筋よりはるかにいい。だから商空間としてはかなり気分はいいほう。客と店員とのやりとりを聞いているだけでいろいろわかってくることもある。
小売業にはいろいろあるわけだが、知る限りではハンズはかなり高度な商品知識と対応を迫られる小売り業態ではないか。たとえばネジ一つとっても、専門店なみの品揃えがある。専門店のほうが品数は多いし、ネジを一本単位で買えるので、必要な本数が少なければハンズで10本単位で買うよりもずっと安く買える。こないだも専門店で8種40本ほど買ったが250円ほど。ハンズなら2,000円近くになる。しかもローレットネジや黒ネジなどハンズにはないものもある。しかし、すりわりホーローネジなど、専門店になくてハンズにあるという品種もある。しかもネジ専門店にはネジと蝶番の連携といった知識は期待できないが、ハンズの店員にはそれがある。逆に言えば、専門店員ならネジのことだけ知っていればつとまるのに、ハンズではネジだけではなく、それ以外の膨大な商品についても知識が要求され、しかも複合的・応用的な局面への対応も必要となる。専門店は敷居も高く、素人お断りの風情を漂わせていても商売がなりたつ。そこではじかれた無知な素人が、というよりそれ以前に、どこにいけば目的の物があるのか、目的の物は商品の分類においてどの分野に属しているのかさえもわからずに、ハンズに行きさえすれば答えが得られるのではないかと期待してやってくるわけだ。つまり店員はある用途について分節されていない漠然とした解決法を抱いているだけの客の問いかけに答えて、客が必要としているのは何なのかをまず解読してやり、しかるのちにその商品について手取り足取り教えてやらなければならない。まちがったことを教えるとあとあとクレームになりかねないので正確な商品知識を正しく伝えなければならない。時間もかかるし根気もいる。ハンズの店員の最大の仕事はこうした客への商品説明であるかに見える。他の品物も一網打尽に買えるからハンズに行くということもあるし、見たことのない珍しい商品があって楽しいということもなくはないが、まずは、何か解決策があるのではないか、わからなければ店員にきけばいいのではないか、ということを期待していくのだと思う。
客みんなが説明を求めて待ちかまえているのでなかなか店員がつかまらない。待っているうちに、教えてほしいのに自分は無視されていると次第に不満が嵩じてくる。こうしたことから怒る客のためだろうか。ハンズではこのところ妙に接客がていねいになり、過剰に気を使っていると感じることもある。人によっては無理な作り笑顔が痛々しいことさえある。何もそこまでへりくだらなくてもと、かえって気後れしてしまう。客のクレームが成績に影響するような評価制度でもあるのだろうか。だとしたら気の毒だ。フランスあたりでは店員が客に対等の関係を要求し、横柄な態度の客は徹底して無視する風潮があるという。それも行きすぎじゃないかと思うが、客が店員に対して服従を要求するような権力関係も異常だと思う。この国で金を払う側が居丈高にふるまう傾向は近年増大しているようにさまざまな局面で感じるが、そのひとつの現れがホスピタリティなることばなのだろうか。しばらく前にある喫茶店にいたら、となりのテーブルに美大出だという20代の女性二人組がいて、一人はハンズ社員らしく、何やら仕事についてこぼしていた。会社の体制に問題があるのだろうか。しかし別のターミナル駅のハンズに行くと必ずしもそうでもなく、だいぶざっくりしていたり全体として和やかだったりする。そのほうが好ましい。店舗によっても接客方針に差があるのかもしれない。それとも、その店舗のほうが客が少ないので余裕があるというだけだろうか。品揃えも違うので、店ごとの独立性がかなり高いのかもしれない。ともあれ、あの接客は難度高いだろう。多方面の客が抱える多様な目的に対応しているのを見ると、接客のプロだなあと思うことしきりである。
梱包用品などについては品揃えが甘いなと思うこともある。専門店より売り場面積が狭いのだから当然なのだが。そのあたりは、需要やメーカー・仲卸の営業努力にもよるのだろう。