特快晴。原宿。カメラを三脚に据え、いよいよ4X5で、とこれからの一連の手順を考えてみるに、どうにもやりづらい。根本設計に無理が多すぎた。セットすらせず断念。ジナーを流用するということにそもそも限界があった。レンズを交換するようにリンホフボードでビューイングホールを交換できるとか、システムカメラならではの長所もいろいろとあるし、レンズ使用の撮影とも共用できて、うまくいけばなかなかのものだったのだけれど、自由がきくぶん制約も多すぎる。やはり当初の計画に戻って、木で丸ごと自作するのが選ぶべき解だろう。思考実験ではどうしてもわからない部分がある・実際にやってみると予想だにしなかったさまざまな困難に直面する・だから机上の論理には限界があって現実は豊か・思い通りにいかないからこそおもしろい・とかいう陳腐な話ではない。現実はわれわれの思考をつねに超えているといった図式のためにこの帰結に至ったのではなくて、単純に能力が足りなかった、あるいは能力の低さを補うだけの充分な熟慮の投入を怠った、というこちら側の落ち度が原因である。こんなことにも気づかなかったのかとおのが洞察の鈍さにほとほと呆れかえる。カメラ製作工程でのけつまずきをいちいち楽しんでいる余裕はないのだ。とっとと撮影にかかりたいんだよこっちは。
でも、この蛇腹とジナーのバックを使って6X9でデータ出しはできるから、テストだけして一からでなおすことにしよう、と青山通り隔てて国連大学本部へ右側から。14時半から1時間。HL160、EV15.4-15.0、2m-4m。おそらく4枚目以降は像なし。風強く露光中カメラがふるえているのが見える。これじゃ鮮鋭度下がるわけだ。鮮鋭度を下げたピンホール写真なんてすでにあるしこれじゃいかん。やはりビューカメラ転用は無理。露光時間が長いだけブレ対策は入念におこなう必要がある。ピンホール写真は一見自由だと思わせるが、このように実はそうでもない。ビューカメラなんて結構遮光がいい加減でも何とか写るもので、蛇腹に穴が開いたまま気づかずに使っていたとかいうのはありそうな話。現にこの長岡のバックもモルトプレーンで細心の迷光対策をしたにもかかわらず、電球でチェックするとモルトが貼れない部分がまだかすかに光るが、こんなものでも充分商品として通用してしまうのである。しかしピンホールカメラだと、わずかでも穴があればそれ自体がピンホールになってしまうので、遮光には万全を期さなければならない。露光時間が長い分かぶりやすいのだ。この点f22とかf32の明るい絞りで露光する一般のレンズカメラよりはるかにシビア。つぎはぎ工作ですき間をモルトプレーンで埋めるという方法に無理があった。せっかくこんなにも時間をかけて作ったのに、とは思うけれども、蛇腹はほかの用途にも使えるし、長岡のバックはそのまま再利用できるから、まったく無駄ということもあるまい、などと考えながら片づけていたら、バッグの上、40cmほどの高さから4X5バックが落ち、ピングラは無事だったがアクリルの接続部が、一度も使わないまま割れてしまう。ま、そういうことだ。