フィルムのたわみによる画像のゆがみをどうにかできないかと、フジヤジャンク館にあったRW*バキューム*吸着*フィルムホルダを見てくる。Fidelityの4x5カットフィルムホルダを改造したタイプ。エア排出穴は9カ所開けてあるが、外側の穴からフィルム端までは15mm程度離れている。これでは中央部の浮きは抑えられるだろうが、エッジ部の反りは吸着できないのではないか。問い合わせてみると、QLホルダ改造タイプは穴の数が増やしてあるが、フィルム周辺部に配置されているわけではなさそうで、また構造上フィルム周囲からのエア漏れがあり、周辺部の平面性には限界があるという。すみずみまでフラットとはいかないということらしい。フィルムでそれを実現したかったら、航空写真撮影装置、エアロテヒニカとかエアロタクとかそんなものではなく、航空写真専用飛行機に備えつけてあるバキューム機構搭載のシステムなみのものを使うしかないが、現実には到底不可能。でなければガラス乾板以外にはない。しかしカラーのガラス乾板なんて聞いたことがない。何十層にも及ぶ現在のカラーフィルムの乳剤の塗布にはローラーを介しての同時多層塗布技術が不可欠だろうから、ガラスで同等の製品を製造できるとは考えられない。現在の写真技術の限界ということだ。銀塩写真ではこれ以上の性能向上は見込めないし、CCDなりC-MOSなり撮像素子をピンホールカメラの受光体に使うのはサイズと受光角の点でまず問題外なので、この先も解決の可能性は絶無ということになる。どうにもならないのだ。この曲がりも含めて写真というしくみを提示する、と見なすしかない。
*色彩*写真*研究所では、フラットベッドスキャナ用の吸着ホルダを開発中だという。この御時世に今さら、と思わなくもないし、実使用時の有効性には疑問も感じる。脇さんという人物は写真家として後世に名を残すという人ではないだろうし、写真技術研究者としても過去の人ではあるのだろうが、齢73にして新たなものをつくりだそうという意欲はすばらしいと思う。そうありたいもの。