無雲だが昨日にまして透明度低い。でもこうしてふらっと出かけられるのもあと数日だし、行かない手はない。
湘南新宿ライン逗子行きにちょうど乗り込む。しかし9時過ぎ、川崎の手前ですでに雲ちらほら。9時半大船到着。観音まで坂を上がってみると拝観料300円。そういうことは坂の下に書いておいてくれよ。雲も増えてきたし下見だけのために払うのも癪。抵抗の表明として外から見るだけ見て引き返す。しかしあの受付をずっと拘束するのに見合う売り上げがあるようには思えない。ざっと見たところ長すぎてこの箱には向かないようなので、そこを明確にしておこうと、裏手から登り、忍び込めないかと探ってみるが、かなりの急斜面で高さもあり、体張らないと近づくのは無理。そこまでするほどのものでもない。ただ近くから見ても白くてなかなかきれいなので、別口でいずれそのうち。下のバス転回所から見上げると顔つきがやや俗っぽい。このあたりで集合住宅建設をめぐり業者と自治体と住民がもめているらしいが、この土地なのだろうか。
雲も広がってきて、都内に戻るか鎌倉で回り残した寺を見るか迷うが、都内も天気はさえないだろうと鎌倉。しかし歩き出してから都内の人間に電話すればいいのだと気づき、問い合わせると快晴だという。あわてて戻るが新川崎でも雲が晴れず、品川まで来ても西は雲だらけ、東は雲がないがいずれ来るだろうし濁り気味。だったら下見しようと、ホームの向かいに下り電車がいたのですかさず逆戻り。で北鎌倉。雲頂庵は改装のためか入れず。山ノ内八雲神社小さい。円覚寺有料。何しろ持ち合わせがないので入れない。東慶寺三脚不可で100円。浄智寺覗き見る限り金とるほどの寺ではない。それにしても、どこももう引き返しづらいところまで入れておいてはじめて有料の表示を突きつけるのだが、このこすっからさは三流観光地の安っぽい見せ物小屋となんら変わらん。バカらしくなり14時過ぎ退却。鎌倉に行くには最悪の時季。おそらく次が正月、その次は紅葉期。閑散期だったら人員を配置していないような見るからに弱小の寺までが、かきいれ時とばかりせっせとまきあげている。全部払ってたら数千円になる。12月に南東方面を回ったときには、受付があっても無人で入り放題だった。あとは2月末から3月はじめか。2月にもっと行っておけばよかった。
デジタル一眼レフを持った人が目につく。ようやくわかってきた。ソメイヨシノを撮影して倦まない手合いというものが。われわれは他人がやらないことをと考える。みながやっていることをあえて行うべき理由などない。ところがソメイヨシノや紅葉の人々には、みながやっているからこそやるべき価値と必要と意欲とが発生するわけだ。ソメイヨシノをめでるのが日本的だというのはそうした意味で理解されるべきである。そういう心性のおかげでこの冬は大粒の牡蠣が安くたらふく食べられてありがたい限りであった。むろんそうした性向が日本人すべてに共通するわけではないし、またそうした傾向がソメイヨシノを対象とする写真に限られるわけでもない。鑑賞対象としての写真や現代美術の随所にそのたぐいがごろごろしているだろう。
都内へ戻り、東は雲が少ないのでまだ撮影できるかと期待し目白へ。もう右往左往。やはりあの時そのまま戻るべきだった。鎌倉に再度向かったのは失敗だった。玄靜院かそこらへんにはソメイヨシノの人々。鬼子母神は東向き。ここは気持ちのいい神社。国家神道的な窮屈さがなく、民間信仰から興ったことがしのばれるような寛容さとおだやかさがうかがえる。東京音大に建設中のホールはちょっと凝ってるが建物も敷地もどこかちんまり。木が邪魔か。引きもとれない。本納寺は品がいい。こじんまり。大島神社はよくありそうな神社。そうこうして護国寺に着いた16時頃には北から北東に雲。ここはいい。故事来歴という過去の資産にすがりきって小銭をかすめとるようなみみっちいことはしない。好感の持てるお寺はどこでもそうだが、どうぞお入りくださいという鷹揚さと余裕が感じられる。いつも散策者がいる。気分がいい場所だからだ。高台という条件も寄与しているだろうが、それは同時にわざわざ階段を登る必要があるということでもあり、それだけの魅力があるのだ。近隣の雑司ヶ谷霊園にはそうした魅力はあまりないような気がする。どことなく居心地の悪い寺や、檀家以外はお断りと大書してあるような寺もあり、そういうところには結局人が寄りつかなくなる。この日も護国寺では葬儀があるようだが規模が大きくないようで警備員はおらず車も少ない。
松平*家墓標は暗い。日はまだあるのに。よく見ると、木々の枝に葉がついていて、これで光がさえぎられて暗くなっているのだ。前回、20日に行ったときにはこんなに暗くなかった。10日でこんなに変わるとは。迂闊。次の冬まで待つか。1日棒に振ったが、空がガスっぽかったし、どのみち撮影はできなかったかもしれない。こういう日もあるさ。帰途ラジオが聴きたくて地下鉄を避け目白まで歩いて帰投。