メガネだが、視野の周辺部でも歪曲収差が目立たない。よく見れば樽型収差が残ってはいるのだが、一昔前を思いおこすなら明らかに減っている。しかもこのフレームには鼻パッドがなく、本来レンズがあるべき位置より眼球に近いので、その条件でもこれだけ改善されているというのはかなりよくなっていると考えていいかもしれない。非球面レンズとのことだが、それが寄与しているのだろう。しかもかつてよりずっと安価であり、ガラスレンズより割れにくくて軽い。
光学が学問としては先端の座からとっくに降りているのは間違いないだろうが、光学製品の生産技術はまだまだ向上している。そして日常的対象の鮮鋭で色忠実度の高い再現像を得るためには現在のところ光学系を使うしかないのだから、光学製品の社会的需要がなくなることはないだろう。われわれが世界認識の主たる方法として視覚以外を採用するようなことでもない限りは。