朝から特快晴。目に刺さるような空の青さ。もっとも鮮明と感じるのは空の色自体ではなく家々の屋根や木の枝とのコントラストに由来するのだろうが。
出るのが遅くなったので近場でと思い、ずっとお預けだった東博の東の寺が集まっている一角へ。上野駅に近い角が輪王殿。寛永寺の葬儀用の施設らしいが鉄コン。その前に瓦葺きの門があり重文だがさして驚くほどのものではない。右が両大師開山堂。寛永寺だけでなく輪王寺の表記があり、両方に属するらしいがこのへんに輪王寺というのはない。日光の輪王寺のことらしい。皇族出身者の門跡として輪王寺宮という役職がかつてあり、寛永寺輪王寺比叡山天台宗三山を上野で統括していたとのことなのでその名残か。ここの堂宇は木造ではあるがさほど古くない。何度も焼けているので当然。青銅製の灯籠の6角に龍がいて、伸ばした舌が上に向けて巻かれて輪になっている。爬虫類らしく舌の先が割れている。石の灯籠でも角は巻きあがったような形状になっているものだが、こんなのははじめて見た。しかし木がかかり背後に寺もあるので断念。近隣の寺はすべて山号に東叡山とあり、寛永寺塔頭らしい。建物としては魅力がないが都内では塔頭が残っているほうだろう。
ぐるっと回り開山堂に戻る。灯籠が気になる。やはり撮影することに。南に雲はあるが画面にはかからず気象条件は上々。撮らない手はない。しかし、発見した当日にその対象を撮影できるなんて長いことなかったので、ほんとに撮っていいものやら途惑ってしまうのが悲しい。6体ある中では最初に目をつけた本堂に近いのが最適。条件がいいのはそのひとつ南のもので、本堂があまり写り込まず枝もかからないのだが、南側から見て手前の龍の舌が大きく傾いており、条件がよくても対象の状態で劣る。本堂に近いほうは下の地面に植物が生えておらず、他の場所のように特に名札も立っていないので、何かが植えられているわけでもないと判断。完全順光の少し手前で、三脚立てセッティング中に完全順光になる。ポラだが対象がいびつで左右対称になっていないのか、下の高さが左右で揃わない。いろいろやりながらもこの日はあとはないだろうとポラ5枚切って使い切ったのだったか。手持ちの縦位置用フィルム4枚のうち最後というところで、何をやってるんですか、と驚いた顔で関係者に責められる。写真撮影を、と応じると、こうなってれば常識的に入らないでしょう、だから写真の人は嫌いなんだ、と怒られる。別に何も生えてないし柵で囲ってあるわけでもないし、と思ってよく見たら細いひもらしきものが地面に置かれていた。あれが結界だったのか。とにかく謝る。あと1枚撮らせてくれ、と思ってたら退去を求めるでもなく怒りながら去っていく。特に何も植えてなかったのではないか。すぐに露光して撤収。撮影許可をとらなかったのはまずかったが、境内をうろうろしていたら奥の鐘楼に三脚不可の表示があった。それでは申し出るだけ藪蛇。でもあんなすみっこに書かれてたってわかりゃしない。庭は手入れがされいろいろ植えられているらしいので、その時期になると花鳥風月な人が押し寄せて庭を踏み荒らすのだろう。こっちも一緒か。反省しつつ13時過ぎ終了。
現像済ネガでは、フレームはまずまずなのだが、画面上、左右の舌の先の間の空に、光学的ノイズがある。ホルダのエッジ部分で反射してしまったらしい。左右のレールからの反射はよくあったが、こういうのは記憶にない。引きぶたロック付きのRegalMarkIIホルダ。Ebonyにはよく使ったのだが、このごろはまったく使っていなかった。そのため反射対策もおろそかだった。しかもよせばいいのにナンバリングが出るように削ってあり、中途半端に写り込んでいる。他のはと見るとToyoのホルダの1枚でよりはっきり反射が出ている。ポラにもそれらしき現象がある。何か特異な条件だっただろうか。特に頭上に思いあたる節はない。無傷なのは1枚のみ。でもやや目立つホコリ。
さてどうするか。ここは再撮影はできまい。対象にはほとんどかからず空だけのようだし、ナンバリングも含めて、1枚くらいこういうのがあってもおもしろいのではないかという気分に傾いている。プリントしてみなければわからないが。ただ、RegalMarkIIはナンバリングが必要な用途でない限りもう使わないほうがよさそうだ。
不忍池畔の鈴なり型建築、ソフィテル東京が見えないと湯島天神参りでも思っていたのだが、どうやら去年解体されたらしい。しまった遅かった。でもSinar改造も遅々として進んでいないしまあやむなし。撮影するにもなかなかやりづらいと思った記憶がある。東側からは池のため引きがとれず、不忍通りからとしても南面はとなりの中層ビルが邪魔。北面はやや西向きなので日が当たらない。西側は建て込んでいて視界が狭かったように思う。東大構内か建物の屋上からしかないが制約されすぎ。いずれにせよ困難。と思うことにする。12年で幕だそうだ。あそこにあれじゃ無理もない。
東博裏の寛永寺墓地をかすめて谷中を覗く。寛永寺根本中堂はやはりさえない。となりに幼稚園。このあたりにも寛永寺塔頭がちらほら。千駄木を抜けて本駒込へ。吉祥寺に再訪。獅子像にあいさつ。本郷通りを南下し十方寺、海蔵寺、工事中の顕本寺、真浄寺、大林寺、長元寺など。蓮光寺、光源寺、清林寺、清安寺はたぶん見てない。常瑞寺は見たのだったか。浄心寺は一種異様な雰囲気。まず門前の巨像、腹を出して袋を持ってるので布袋様だと思うのだが、こいつが尋常ではない。コンクリの地肌むきだしで妙につくりが悪く荒い。境内にはのぼりが立ち並びオブジェとコメントがひしめいている。そして高みにお堂。とにかくただならぬエネルギーが充満していてあちこち変。時間がなく本郷通りの西側は今回も見られず。