曇のちそこそこ晴れ。ベルンへ。例によって地図もなくただぶらぶら歩く。このあたりとしては道が広い。駅から南から西、北にかけては新しい建物が多い。首都ともなるとさすがにこうか。駅に戻り案内所で地図をもらってツェントルム・パウル・クレーへ。駅の東、川が湾曲した部分に立ち並ぶ古い街並は見事。石畳を保護するため路面電車のレールは敷かれていないが、架線はあり、トラムにはパンタグラフがついており、でもなぜかタイヤで走る。軌道を走るわけではないので車両が架線から離れると伸縮自在のパンタグラフが追従する。でもそこまでして電力を供給する必要があるのかよくわからない。電動車なのだろうか。などとのろのろ歩いていたら、着いたときには展示終了時刻まで30分を切っている。わかりやすいバスも出ているし乗ればいいのに。で、今回初の美術館。「オリエントを探して」とかいう企画展示で、オリエンタルな皿やほかの画家が旅して描いた絵画がクレーよりたくさん出ているのだが、そんなものはいいからクレーをもっと見せろというのが一観光客の素朴な印象。でも展示されている玉にいいのがあったのでまあ満足。クレーのエジプト人の絵なんかには企画趣旨が反映されている。展示終了になると館員が無言の圧力をかけてくるが追い立てはしない。さらに粘ったら何か言われたんだろうけど。もっと早く行けばよかった。近くの解体中のビルが外壁をはがされグリッド状になっていて、今回初めて箱を構える。まるでだめ。
古い街並の一階にはテナントが入っていて、現代美術のギャラリーも見つけただけで3件あった。ここを見れば、もうスイスの古い街並は充分という気分。ベルン大聖堂はストラスブールノートルダムほど執拗なつくりこみはないがシンプルとまではいかず、ストラスブールと違って彫刻に彩色が施してあるのでこれはこれで東照宮ぽい。受難節がらみの合唱とサキソフォンのコンサートがあり、バーゼル大聖堂でメンデルスゾーンソナタ中心のオルガンコンサートがあったのだが間に合わないのでこれを聴く。自由席25フラン。1スイスフランはだいたい100円。曲目は、ペピング、ブルックナー、レーガー、ブラームスという中期後期ロマン派の宗教曲とサックスのインプロヴィゼーション、それから詩の朗読。合唱とサックスのからみはなし。インプロヴィゼーションはいかにもサックス風のフレーズと音色ばかりの様式化されたもの。聴衆は合唱団の関係者が多かったらしく退屈しながらおつきあいで聴いている風情。残響豊かで教会の雰囲気たっぷりだが感激が薄いのはノイズが多いだけでもあるまい。日本にヨーロッパ古典音楽が根づいていないのは極東の特殊事情かと思っていたがこちらでも大差ない様子。いずれ衰退していくジャンルと確認。ここもミュージアムが多いがいかにもな現代美術が目につく。ギャラリーで展示されているのは、休みで入れないが外から見る限りでは実際のものをあつかう美術が多くて近しさを覚えるのだが、商品を流通させて利潤をあげる必要がある商業画廊は、そうした縛りがなく時流に合わせられる美術館とは違うということなのだろうか。日本に限らず。連邦議会議事堂は川沿いの絶壁にそびえていて街を睥睨している。建物のすぐ下まで入れるのに守衛が1人だけなのが日本国国会議事堂からすると考えられない。