朝から曇。ベルリン中央駅に7時過ぎ着。川を渡って南へ行き、警備されて国家の中枢とおぼしき建物の周辺をうろうろ。両替所が開くのを待って両替、それからベルリン・ウェルカム・カード購入。5日間有効のフリーチケット。美術館なども25%から50%程度割引になる。割引対象が少なくてもう少し安いのもある。24時間とか72時間のも。いずれにせよ短期旅行者は必携。ポツダムや空港まで行ける広域のほうで39ユーロだったか。有効なのは地下鉄だけだと思っていたら、バス・トラム・市電・国鉄まで全部乗れるとあとで聞かされ、市電があるのにわざわざ歩いて時間を浪費したと後悔したのだが、バスや市電は路線図が難しくて行き先がよくわからないので、ある程度路線図が理解できるSバーンUバーンの地下鉄をもっぱら使って無難だったかもしれない。地下鉄だと外が見えないのがバスより劣るが、山手線に相当する環状線のRingと中央線みたいな路線などいくつかは高架なので、これに乗れば街のつくりがおおまかにわかる。2日目はもっぱらこれをやっていた。Ringは1周すると1時間ちょっとで、山手線と同じくらいの長さだと思うのだが、駅は市街地の外側が多く、ベルリンは思っていたより狭い。
予約していたホステルの地図のプリントアウトがなくて、シュタットミッテ駅で降りたらどうにも行き方がわからず、モーレン通り駅のそばだというのでその駅で降りてみたらすぐ横にあった。チェックインは24時間OKとなっていたがさすがに10時では早すぎ、箱だけ持って荷物を預ける。通信博物館だかの近くで、中心部に近く意外にいい場所だった。近所にスーパーマーケットもある。交通手段と宿を確保すれば、あとはなんとでもなる。そのへんをうろうろ。すぐにベルリンの壁跡があり、その先にギャラリーの複合地帯。今どき風のおどろおどろな絵画やソフィ・カル。まったくかわりばえせずどうでもよし。早いせいかいくつかのギャラリーでは鍵がかかっていて、でも11時なのでインタフォンで話すとあけてくれる。そういうシステムなのかもしれない。真っ白で、つくりや雰囲気も対応もやってる中身も日本の有名どころの商業画廊とそっくり。日本がまねしたのか、ああいう商売をやっているとああなるものなのか。ただこっちは広くて天井が高い。
それからポツダム広場に出て、ソニーセンターやらダイムラーシティの典型的なポストモダン様式建築やら。現代建築はもうどうでもいい。ソニーセンターの西にはベルリンフィルハーモニーザール。えっこれがかのドイツ音楽の殿堂、ベルリンフィルの本拠地、なのか? それともそれは昔の話なのか? ずいぶんこぢんまりしているし、昔は黄金色に輝いていたのだろうが今はすすけていて、その周辺も見るからに「盛りをとうに過ぎた」風情。西洋のアカデミックな音楽の凋落ぶりを反映するかのよう。
そしてウンター・デン・リンデンから、これぞ統一ドイツの象徴たるブランデンブルク門へ。なんたってベルリンの地下鉄では、この門のマークが窓ガラスやら座席やらに敷き詰められていたりするのだ。ベルリンといえばここ。着く前からブランデンブルク協奏曲のスウィッチが入ってしまい、ぐるぐる回りっぱなしでとまらない。2番の騒々しいトランペットをどうにか追い出したら、俗っぽい5番が涌いて出る。大バッハもこのあたりのはただもう耐え難いが、こういうポピュラークラシックがこの陳腐きわまりない観光名所には実にふさわしいんだな。ブランデンブルク協奏曲ブランデンブルク門と歴史上の直接の関連はないけど。東向きで、西からではまったくの後ろ姿。そのすぐそばには国会議事堂。てっぺんはガラスドームの展望台になっていて、観光客の長蛇の列。川を渡り連邦議会図書館に行ったらギュンター・ユッカー「ヨブ記」の展示をやっているので入ったら空港なみのX線検査をやられる。そんなに怖けりゃ一般公開なんかしなきゃよかろうに。連邦議会が開催される国会議事堂も内部を公開していて「ガラス張りの開かれた議事堂」ってわけだろうが、図書館でこれじゃどんなだか推して知るべし。とその時は思ったのだが、これもユッカーの重さや危機感を増幅するための演出だったのではないかという気もしてきた。実際栃木県美で見たときよりも緊張感があった。でも慣れない異国の初日だったというだけかも。そのあとウンター・デン・リンデンを東に進み、フンボルト大学やら歴史博物館やら旧博物館やらごつい建物で満腹。観光客がたいへん多い。ベルンよりずっと多い。アレクサンダー広場でテレビ塔を見て一休み。この塔はどこからでも目につくのだが、東京近辺の電波塔などを一時期追っかけていた者としていえば、こんなみっともない塔は見たことがない。同じ一本柱のコンクリ塔なら京都タワーのほうがはるかにいい。旧東ドイツの建造だからやむなしか。そういえば、ドイツに限らずスイスでもフランスでもこれ以外に電波塔を見た記憶がない。一部の都市圏とその間をつなぐ鉄道沿線を見ただけだけだけれど。携帯はあるのになくていいのだろうか。規格が違うから必要ないのか。それとも、立ってはいるけれど、景観に配慮して目につかなくしてあるのか。
ここからポツダムに向かったのだったか。何とも盛りだくさんな1日。駅前の川を渡ったあたりは掘り返し中。大聖堂も改修中。サンスーシ公園をぐるっと回る。広い。でかい。庭園の手入れがいきとどいている。庭園に散在する彫刻はよく見るとまがいものっぽいけれど、それでも財力の豊かさを見せつけられる。京都の寺が世界遺産といったって、所詮はいくつかまとめてなんぼ。車はあるし看板は立ってるしいちいち課金するし土産物屋は商売に余念がないしでびんぼくさいことはなはだしい。まあ勝負にならんな。でも、ここにせよベルリンミッテ地区の歴史的建造物にせよ、たいがいは人像が立ち並ぶイタリア風なんだが。中国茶館があり金ぴかで、余裕があればいいかも。
ここを出る頃には日没後で暗く、ポツダム中央駅に着くまでに迷いまくる。22時か23時頃ようやく帰着。