バーゼルも曇。朝チューリヒへ。曇。途中爆睡して様子わからず。石畳の上ガラガラとカートを転がす。日曜の朝で礼拝の鐘がいっせいに鳴る。礼拝中でグロスミュンスターは訪問者お断り。シャガールとあと誰かのステンドグラスがあるというフラウミュンスターは10時からオルガンコンサートがあるということらしいのだがこちらも入れてもらえず。町をぶらぶら歩く。湖が広い。ベルンほどではないがバーゼルと似たような古い建物の町並み。店はみな閉まっている。駅のMigrosでみやげのチョコレートを買ってチューリヒ空港駅へ。スイス第1の都市だけあってそれなりに市街地は広い。駅ではチェックインにまた長蛇の列。なんとか間に合った、と思ったら預け入れ荷物がエコノミー上限の22kgから4kg超過。機内持ち込み荷物のほうに雲台などを入れ替えて再計量。21.8kg。係員が「Perfect!」とやたら感心するのだが、そんなことで喜ばれてもなあ。だいたいあと200gも入れられたんじゃんとそっちのほうが不満。荷物検査でフィルムが入っていると告げたところ、大丈夫だから通せ、という。X線スキャナには写真用フィルムも問題ないとある。でも成田でも検査機にそう書いてあったが、高感度フィルムなので目視検査でと言ったらすんなりそうしてくれた。もっともえらく顔つきの険しい女性に逐一調べられ、新品のクイックロードフィルムの箱まで開けさせられた。中の遮光フィルムまではさすがに開けろといわれなかったが。職業に貴賤はあると思ったね。あんな仕事いつもやってたら他人を疑う習性と規則に反するものはいっさい許容しない役人根性が骨の髄までしみこむんだとあの検査官の顔が語っていた。スイスの宿主は最近のX腺検査ではフィルムに影響を与えないらしいと言っていたし、空港でもそれらしく謳われているのだが、富士フイルムは目視検査にしろとアナウンスしている。国によって検査方法がまちまちであり、メーカーとしては万全を期してこう釘を打っているのであって、先進国の国際空港ならおそらく問題ないんだろうとは思う。でもともかく成田ではOKだったのでここでもvery high sensitive, special filmと主張したところ、X線にかけないと飛行機に乗れないと言われた。さすが永世中立国、日本よりも厳しいのか。それでもなお頑強にごねたら奥から別の人間がやってきて、フィルムを探られ、箱入りのは開けさせられる。それですむかと思ったら、フィルムを別の部屋に持っていってしまった。しばらく待たされて渡されるが、カットフィルムホルダや箱を開けられてしまったんじゃないかと不安。使いさしのカットフィルムの箱には開封した袋の中に裸で未露光のフィルムが入っている。袋を開けられたらおじゃんだ。「これを開けたのか」と聞いたら「だいじなものなんで開けてない」とかいって肩をポンポンされたけれど、国に帰っちゃえばあとはどうしようもないだろケケケな可能性は大いにある。あと、裏でX線スキャナにかけてるかもしれない。見えないんだから何やってるかわかりゃしない。ある程度訴えてもだめだったら適当なところで折れたほうが結果として安全なようだ。
行きの飛行機はすいていて窓側だったのでよかったのだが、帰りの席は真ん中。左はひとつ開いてイタリアのジジイ、右はイタリアの歳いった優男風。こいつがこっちにもたれてくるしiPodかけながらリズムとるわ空口笛吹かすわで醜悪このうえない。iPodほんとにみっともないね。使うひとにもよるけど基本的に閉じてて見苦しいものだと思う。Walkmanの昔からそう。だからその手のものを買ったことはないし、もらったのもどこか疎ましくて結局使ってない。あんなもんはポイしたほうがいい。あと、すべてのポータブルな音楽、符号化され圧縮されパッケージされ流通され、「no music, no life」とかいう、音楽を聴かない人間は間違っているとでもいわんばかりの抑圧的標語のもとに、無理矢理買わされ続けるような安い音楽も、まとめて捨てたほうがいい。全部ゴミ。その場に行かなければ聴けない音楽だけでいい。われわれに個別に結びつくよう流布される商品化されたものでなく、固有の場所や特別の機会とのみ結びついた音楽、それ以外は全部いらない。全部。そしてまた、安い写真もいらない。誰もがいたるところで写真を撮りまくる。どこかに旅行したからには、なにかあったからには撮影しなければならないという強迫観念に突き動かされるかのように。今重要なのは、いかに写真を撮らないか、だ。