ひさびさに機材話。
アオリ撮影を行う必要が生じた。商品撮影だし、web用途だしでデジタルで充分。わざわざフィルムを持ち出すまでもない。
新宿に行って量販店でTS-E90mm F2.8をEOS5Dにつけて貸してもらう。一見して、ティルトの目盛の少なさに唖然。ティルト最大角はわずか8°。
いじってみるがティルト効果浅い。これじゃ絞り込むのと大差ないじゃないか。
しかも50cmまでしか寄れない。AFもきかないから日常的用途には使えない。この撮影はちょくちょく行う予定だが、それ専用に10数万するさして使えないレンズを買うのはなあ。PC-E Micro-Nikkor 85mm F2.8Dはもうちょっとあおれるらしいが、20数万。
SchneiderからSK PC-TS Macro Symmar 90mm F4.5 HMというのが出たらしい。ティルト8°で40万。話にならない。大判Makro Symmar HMもかつて所有していたが、包括角度が狭かった。焦点距離が近い大判Makro-Symmar HMは80mm F5.6なので別設計と思われる。
これ以上のティルト量を得るにはベローズかアオリユニットに引き伸ばしレンズか。引き伸ばしレンズはまだある。でも撮影用となるとApo-Rodagonあたりを調達する必要があろう。それよりアオリユニットが高価。TSレンズより高くつきそう。ベローズによりアオリの制限もある。
そこではたと気づいた。4x5使えばいいじゃないか。35mm判レンズのおもちゃみたいなアオリ機能とは比較にならないアオリ幅がある。繰り出しも縮めるのもお手のもの。しかも、いっさい追加投資の必要がなく、フィルムやインスタントフィルムも持て余しているものがそのまま使える。カラーネガ現像までも手持ちの薬品でできるが、外注したってレンズやなんかを新調する費用にくらべれば知れたもの。大判レンズはずいぶん処分したが、Apo-Macro-Sironar 180mmはまだ残してあった。いつか使うような気がして手放さなかったのだ。これがあれば充分。包括角度72°以上、画角が40°ならおおざっぱにいって片側16°のアオリ幅がある。バックティルトを併用すればさらに稼げる。それにビューカメラなら前後とも全アオリとフォーカシングが使えるので、カメラ本体を動かさずにムーブメントの操作だけで調整できて機動性がずっと高い。しかも10年使い抜いた機材だ。新しくレンズを買ってゼロから覚えるよりよっぽど早い。小さいファインダーや背面液晶でピントを見るより、ピントグラスをルーペで確認したほうが楽に決まっている。いいことづくめ。
シフト・ライズ・フォールなんてより広角のレンズで撮影して切り抜いても効果としては一緒であって、ティルト・スイングによるピント面のコントロールこそがアオリの本領。これをうまく使えば光線状態の制約から自由になれる。ずっと前に構想してそれきりだった、平面上の光線の反射をとらえるというアイディアを、別のかたちではあれここに来て結実させられるかもしれない。
手についた技術は着想を支え導いてくれる。
 
なお、新宿各店に富士のカラー印画紙大四切から全紙の各種面質が半額で出ていた。