H-2.5F-1.2
H側にて8時過ぎ頃開始。いざ組み立てようとしたらエボニーSV45のバックが途中でつかえて動かない。無理矢理繰り出すが動きがぎこちなく、引き出してやらないとまっすぐ動かない。どうやら繰り出しギアの左右いずれかがゆるんでいるようだ。しばらく使わないでいるとこれだ。SV23のフロントでも一度あったので、構造的に弱い部分なのだろう。しかしフロントは露出しているのですぐ直せるが、バックは分解の必要があるので持ちこんでその場で直してもらうというわけにはいかないらしい。現状でも使えないことはないが、左右にぐらぐら振れるので緻密なフォーカシングはまずできない。やむなくフロントでピント合わせ。倍率は変わるし前後の関係が逆になるしで著しく効率が下がる。しかも2年ぶりなのでピントの山も判然としない。そういうわけでピントはかなり怪しい。周辺部はなおさら。160PS(有効期限2005.3)、横位置1:1程度、+4、22.5ー22.9、2s。露出倍数も忘れてしまった。ダークバッグで装塡した後とにかくすぐ1枚この時点ですでに変化しはじめていたのだが、ピントを合わせなおしているうちに進行し、さっさとやればいいものを2枚目はタイミングを逸してしまう。右下にかげり。3枚目でかげりはとったが右はスヌケに近く、もうさほど動かない。4枚目で手入れ。ここで実質上終わり。いったい何を考えていたのかホルダーを2枚しかつめていなかったので、3、4枚目を交換して5、手を入れても白くなるだけ。没する直前に6。ここで10時過ぎ。
結果として惜しいというほどのものでもなかったけれど、ひさびさでもあるしもう少しどうにかしたかったところ。
 
ゴダールの『映画史』にあった引用。まあこういう不可侵扱いになっているブランド固有名詞をふりかざすのは本意ではないし、そもそもこの人物の大雑把で断定的な物言いは昔から虫が好かないのだが、元ネタがわからないので孫引きするしかない。曰く、人間の条件とは手で考えるということである、云々。ビューカメラを扱っていると「手で考えている」と如実に感じられる。指先の運動量をとらえるならば、いまこうやってキーボードを叩いているほうがよほど活発なのではあるが、これは考えているというより手でしゃべっているというのが近いように思える。ビューカメラのムーヴメントを動かして意図通りの画面に追いこんだり、あるいは予想しなかったものを得たりするまでの一連の作業——画面をシフトして横に動かしてみて、やはり気にくわないので元に戻し、ティルトしたのちにフォーカシングしてピントを確認し、傾けすぎたのでまた調整し、という迷ってばかりの緩慢な動作——は、ああでもないこうでもないと行きつ戻りつしながら何ごとかを思考する状態に似ている、いや単に似ているのではなくて、手と目に拠りつつ考えることそのものであると思う。多くのパラメータを操作しながら、最終的に行きつくべきただ一つの解を探りあてるために試行錯誤する、のであれ、三次元空間の中で自由に姿勢を変え動き回って未知の何かの到来を待つ、のであれ。事態が進行してしまうと焦ってしまいゆっくり思案しているわけにもいかず、なかなか落ち着いて考えられないのではあるが。
そういったわけで本日は何とも歯がゆい思考不全、というよりも歯が痛くてろくにものが考えられないようなありさまであった。