hateno2007-04-23

フィルターモジュール届く。早い。こんなにすぐ届くとは思わず持ちあわせがなくて、夜に出直していただく。
これでようやく自宅で4x5のカラーネガが引き伸ばせる。しかしながら日頃ボロい機材ばかり使っているので新品だとつい遠慮してしまってやりづらい。新品を存分に削ったり切ったりひっつけたり塗りたくったりできるほど豪気じゃない。売るときのことも考えてしまうし。写真機材なんてものは、それも精度なんてほとんど影響しない大判ならなおさら、中古のほうが心おきなく使い倒せてよろしい。メーカーには悪いけど。むしろ中古市場やネットオークションのほうが、こんなヘンテコなものがかつてはあったのかという発見が多くて楽しいのだ。環境の変動に適応できなかった絶滅生物種の化石をおもしろがるのに近いのだろうか。うしろむきではあるけれども、大判用品に関する限り、レンズを除けば現行製品には正直なところあまり魅力を感じない。メーカーと販社にはほんとに申し訳ないのだが。
こういう高額機材の購入は2年前のSuperAngulonXL47mm以来。機材は小物しか買ってないのだ。しかし生活経費以外はほぼすべて写真に投入しているのだからまあ飲み代もあるけれど、感材と現像代にばかり出費しているということだ。あとはレンタル暗室代。でも、これでレンタル暗室代は使わずにすむ。レンタル暗室では相当量の現像液を使っていたらしいので、自前でやるとなるとその分の薬品代負担が予想される。しかし、自動補充式のプロセッサで薬品の消費量が多かったということは印画紙の消費量も多かったということであり、それは時間を節約するためテストピースをすっとばして1枚500円の大全紙(20x24)でいきなり焼いては気に入らず、またフィルター値を変えて大全紙で焼き直すということをやっていたのが大きい。時間が潤沢に使えれば、じっくりテストが焼けて、結果として印画紙を節約できるだろうから、薬品のコストを吸収できるのではと予想している。廃液処理費用は濃縮すればいいのでたいしたことないとの読み。みなやってみなけりゃわからないが、いちいち帳簿つけて経費管理するなんぞかったるくてやる気もしないので、やってみてもあんまりわからない。
そもそも大全紙カラー印画紙のバット現像が可能かどうかもやってみるまでわからん。でもこれに関してはどうにかするでしょう。というよりどうにかしてあたりまえ。
LPLの4x5カラー引き伸ばし機のどこがいいか。使う前からわかる。フィルター値そのままでの2段の減衰器。これがいいのだ。実物を見るとスイッチに連動してただパンチングメタル板が光路中にせり出してくるだけの仕掛けなのだが、これがあるとないとではまるで違う。どこが違うのか。
カラーの引き伸ばしでは、5x7で焼いたときとより拡大率をあげて20x24で焼いたときでは、同じフィルター値と同じ絞りで露光秒数を拡大率の二乗相当に延長しても色がずれる。カラー印画紙はモノクロよりも相反則不軌の影響が大きくて、その影響はカラーフィルムでわれわれが理解している相反則不軌とは比較にならない量である。相反則不軌現象とは時間の変化によるというよりも、光量の変化を原因として発生する。感材の設計で想定されている光量よりも過大ないし過小の光量の場合には、感材が本来の性能を発揮できない。単純にいえば、極端に暗いと反応しなくなるということだ。ただし光量よりも時間で表すほうが理解しやすいので、光量の変化をそれに対応する時間量で言い表している。その伝でいえば、最近の撮影用フィルムはたいへん高性能で、いつも使っているFujiのPRO160NCのデータシートでは、露光量が1/4000から4sまでは露光量補正不要、32sで+1段の補正とある。実に1万6千倍のレンジにわたって、露光量と露光時間との積が一定であれば結果も一定であると保証されている。つまり相反則がなりたつ。しかしカラー印画紙の場合、露光秒数を7秒から30秒に伸ばした程度、わずか4倍ほどで色がまったく変わってしまうのである。絞りで対応できればいいのだが、5x7から20x24となると拡大率は4倍程度なので露光としては16倍、5x7時点で4段の減光が必要となる。20x24でf11なら5x7ではf45となり、かなり無理がある。WorksにあるOmegaのオートフォーカス機は倍率の変更に応じて露光時間を自動的に変更してくれて一見便利なのだが、相反則不軌が反映されないので結局のところ無意味だった。ラボで始終倍率を変えながらの作業ならばコンピュータ制御のモーター駆動機は高効率だが、われわれのように同じフォーマットから同じサイズに引き伸ばすのが主体であればオート引き伸ばし機の利点は少ない。ピント合わせが面倒なだけ。露光時間の調整をせずなりゆきでフィルター値を変えるという対処方法はある。実際それで2年やっていた。しかしその場合、一枚のネガのなかで極端な濃度差があると相反則不軌が出てしまうのだ。ランプが暗い場合どうにもならない。画面内で色シフトが発生する。
そこで減衰器の出番である。しかしOmegaChromegaDでは1段なのであまり効かない。DurstCLS450にいたってはこうしたアッテネーター機能が装備されていない。LaboratorL1200なら当然ついてるだろうが、Worksではそこまで確認しなかった。2段というのはちょうど手頃なのだ。ただしそのためにはランプが高出力で、減光しても充分に明るい必要がある。LPLのハロゲンランプは250Wと高出力なので、去年の個展のプリント中に直面したような、ネガのなかでの相反則不軌という事態にもならないはず。ランプが照度不足だと手の打ちようがない。明るすぎるのを暗くする分には減衰器と絞りあるいはNDフィルターでどうにでもなる。20x24までを露光する分には申し分ない環境だろうと思う。モノクロでもカラーでも。それ以上だと横置きのレール式大伸ばし機には光量からして太刀打ちできないけれど。それでもやってやれないことはないはず。
ここにLPLで検索して飛んできたお客さん、LPLの4x5伸ばし機はおすすめです。OmegaChromegaDやDurstCLS450をさんざん使った上での判断です。ぜひ買ってあげてください。できれば新品で。745X系は5世代あるけど新しいほうが完成度が高い。7450はやめとき。7453でかなり完成されているが、最新の7454はラックピニオン式でピントが確実。余裕があったらこれの新品はいい買い物だと思う。シンプルでいい伸ばし機ですよ。DurstCLS450なんて大全紙がまともに焼けないんだから問題外。Omegaはフィルターダイヤルがライトボックスの下側にあり、ロールフィルムのスリーブの片側がその下に出ているとフィルター操作時にうっかり触ってしまう。これはどう見ても設計ミス。それに使った個体だけかもしれないけど、3台使った限りではファンの振動が大きすぎる。ピントルーペでよく見るとわかる。LaboratorL1200はいいんだろうけど高すぎ。Fujiはたいてい古くてフィルターが焼けてるでしょう。Ilfordもたぶん同様。Beselerは使ったことないけど話聞く限り工作精度上だめっぽい。ZoneIVにするってんなら止めませんけど。LPLの長所は他にもある。覆い焼き・焼き込みがしやすい。レンズ光軸から支柱までの距離が4x5クラスでは最も大きくとられており、レンズベローズのシャフトやらなんやらの邪魔物が支柱までの間に一切ないので焼き込みの紙がどこかにぶつかってぶれるという事故がもっとも少ない。Luckyとの比較でいうとネガキャリアが使いやすい。Luckyはランプが200WなのでLPLの7453以降なら2割明るく大伸ばし時には有利。カラーとモノクロ多階調の切り替えが簡単。一般の家庭で70cmの高さの一般の机上に設置してもヘッドを最上部まで上げて天井につっかえない。Luckyだとヘッドが縦に長いため同じ倍率でも上に出っぱる。アオリができるのをどう評価するかは人それぞれだけど、アオリ機能がないほうが精度が出しやすいとはいえると思う。LPLはストレートの蛇腹でふところが広く、テーパー蛇腹のLuckyより内面反射が少なそう。LPLでヘッド乗降ノブとロックノブが左右に分かれているのは不便。LPLのネガキャリアは持ち手がでっぱっていてよく額にぶつかる。フォーカスエクステンションシャフトはLuckyのほうがよくできている。LPLはピント合わせやヘッド乗降後にエクステンションシャフトがぶらぶら揺れて気になる。床投影でひっくり返すのはLuckyのほうが楽そう。どっちもよくできてると思うけどLPL買ってください。存続してもらわないと困るので。
ともあれ、今までできなかったことが意のままに可能になるというのは率直にうれしいことだ。天気次第だが、連休には本格稼働の予定。