朝から特快晴。それもしばらくなかった抜けのよさ。起床4時間前まで労働していて眠く、その修正が発生するかもしれないので待機していなければならないのだが、これが入梅前の最後の機会かもしれず、夏に入ったらこんな透明度はおあずけだろうから、出ないわけにはいかない。おそらく10年ぶりくらいに旧営団地下鉄の一日乗車券を買って、まずは浅草神社狛犬狙い。前の撮影はほこりも少なく失敗というわけではなかったのだが、日の低い時間帯で、彫りの深い眼窩の奥の目まで光が射しているたほうがなおよい。ところが浅草に降り立ってみたら三社祭をやっている。祭り嫌いなんだよね。場所柄そのスジ然とした衆が目につく。これは浅草神社の祭りなのでまきこまれたら撮影どころではないだろう。でもハッピの群はみな浅草寺方面から浅草駅に向かっているので、早いうちにすませればなんとかなるだろう。ところが8時40分頃着いてみたら狛犬が鉄柵で囲まれている。呆然。ここは猛獣のいる動物園なのか。つまりだ、狛犬というおとなしいけれどもずいぶんと打たれ強い存在を、それでもなお鉄柵で庇護しなければならないほど獰猛にして凶暴凶暴な生物の住み処なのか、ということだ。でもそこらにうろうろしている連中を見ていると合点がいく。いかにもあいつら得意満面で狛犬に登りそうだ。実際あとで知った報道によると御輿に登ってもめたらしい。もちろん三社祭の参加者がみんなそうではないのはわかるのだけど。それはそれとして、この時期になると8時台でも日が高すぎて目に陰ができるのが確認できたのでよしとする。そのくらい前に来た時点で予測できていてもよさそうなものだが。冬至近くでないと前回とかわりばえせず、わざわざやりなおす意味がない。柵がなくてもどのみち出直し。影向堂はほぼサイドライトでてっぺんの金色の鴟尾がほとんど光を反射しておらず早すぎ。でもこれが光る頃には三脚なんぞ立ててたらボコボコだろう。ここも冬至近く、南中時がよさそう。とは思うのだけど実際にはどんなもんだか。
撮影見送りとなったら長居は無用。痛恨の湯島聖堂。背後の木に葉がついて高層集合住宅が隠れているので前よりいいかも。しかしQLフィルムしかない。しかもこりずにまた4年前の期限切れフィルム。QLは縦位置ならさほど平面性が悪化しないのか線のゆがみが目立たないのだけれど、横位置でこのような直線の多い建築物だと平面性の悪さが如実に画面に出る。しかしこの時期、カットフィルムホルダにフィルムを装填しても使わなかったら露光がいつになるかわからない。秋までそのまま入れっぱなしというような事態は避けたいので、どうしてもカットフィルムの装填には慎重になり、いざというときにはQLを持ち出すことになってしまう。ほんとに晴れるのか疑問というのもあったが、実のところは寝る前に眠くて装填ができなかった。なので横位置の湯島聖堂は様子見。次。神田明神狛犬に木の影がかかっている。恵比須天だったかは幅が狭すぎ。あとまわしにして湯島天神。ここの狛犬も檻の中。狛犬を監禁するのが目下の最新流行なんだろうか。ちっちゃい御輿があって数人が集まっているけど気勢が上がってない。三社祭とは別のなんかだろうか。ともかく撮影は無理。湯島聖堂に戻って、平面性は悪いけどとにかく撮影することにする。もう10時半。午後から針灸祭だとかで、この時期はたぶん農業の繁忙期なんじゃないかと思うので、こんな時期に祭なんかやってたわけはないのだが、晴れてるうちにやっちゃえという最近の風習なのかね。でも本来なら日曜は扉が開いて公開されているのに午前中は準備で閉まっているからかえってよかったかも。平行が出ない。出ているはずなのだが構図上のセンターがずれている、とのいつもの苦闘で、上の余白を増やしておく押さえのカットでティルトしすぎてしまい、それまでのセッティングが台なしになるやらもあって、ポラ7枚も使ってしまう。EVはもう一緒なのでろくすっぽ測ってないのだが15.5程度。途中しつこく記念撮影する外人バカップルやらご老体が去るのを待っているうちに徐々に雲。さっさとやっておけばよかった。あいつら追っ払えばよかった。できないけど。雲が絶え間なく続く。雲が低く入るのを承知で露光したりしながら延々待ち続けて12時半。ついに聖堂がご開帳。ところがちゃんとしてるんならいいけど紅白の垂れ幕ではいかんともしがたい。これ以上待っても無駄なので撤退。期限切れQLの160NC3枚。1m程度。
次はどこか。神田明神も雲気味で難しい。護国寺東京大仏か迷って、東京大仏のほうが気になるのだがまだ早いため護国寺へ。でもこういう時はたいてい二件目にはたどりつけないもの。護国寺着が14時頃だったか。本堂は空が雲だし東向きなのでもう遅い。松平家墓標狙いで雲が消えるのを待つ。夕方になれば積雲は消えるはず。寺の境内で公共道徳に逆らっているバカップルを尻目にゴロ寝していたら16時頃雲が減ってくる。またもポラの大量消費。とにかくセットして雲の晴れ間を待って70sとか。空手関係の団体が集結しててラジオ体操かはたまた北のマスゲームかみたいな集団動作を行っているのだが、そのかけ声が絶妙に神経を逆なでしてくれて、撮影をしようという意欲をきれいに剥ぎ取ってくる。別の似たような集団が平和的に型をやっていたのだが、やはりあの街宣車型の抑圧的な声と人数の多さに気おされして盛りあがらず撤退してしまった。そっちのほうがよほどまともな神経。いやまあ神経細胞の反応速度を比較するなら、かの人々のほうがよっぽど優れてるんだろうけどさ。まだいるんだねあんな頭ごなし型の連中。護国寺に罪はないと思うけど。途中で写真器の位置と構図に疑問が生じ、せっかくポラ切って固めたのだけれど、不本意なのを続けててどうすると考え、2枚ほど撮影した時点で三脚ごと動かし、また一から出直しやり直し。そうこうしながら5枚撮影。結局ポラを11枚も使ってしまった。とはいえ、この時期のほうが日の光が墓標の北側に回り込んでくるので冬よりも映える。再撮影の意味は充分に立つに違いない。ここで5枚。
17時前に、ここで続行できなくなるまで見とどけるか築地本願寺に移動するかの岐路に立たされる。築地本願寺は正面が北北西を向いている珍しい寺院で、この時期しか撮影できない。しかしこれから行って入れないかもしれないのでNTTのいまいましい104に100円払って築地本願寺の電話番号を聞き、問い合わせるとイヴェントで17時半までは入れるとのこと。急いで店じまいし築地へ。ところが17時半に着いてみたらすでに高層集合住宅の影が正面上部にかかり、これは撮影しても意味がない。遅すぎた。親鸞上人生誕記念のコンサート。なかでは湿っぽい日本語ロック。ここのオルガンは昔から気になっていたのだが聴いたことがなく、結局鳴ったのは聴けかった。ただ、見るだけは見られた。手鍵盤2段。容積のわりには小規模。
護国寺に三脚のストラップを忘れてきたので回収。一日乗車券の元は充分取ったろう。4年前に期限切れのネガで、ちょっと不安なので水道橋クリエイトの夜間ボックスに1枚だけ入れて帰投。