写真器をこねこね

次世代写真器の素材の塩ビだが、光にかざすと透けて見える。指の影が裏から見えるのだ。こ、これじゃあ。こんなの使いものにならん。黒く塗ったところで完全遮光にはほど遠い。2mm厚では薄すぎた。もっと厚くて濃い色のを調達する必要がある。これでテストくらいはしておいて、実用器をつくるにあたってのデータとりまでもっていくべきだろう。印画紙の遮光袋で光を切ればテスト程度はできるはず。でもここまでで1k以上出費しているので、テストだけで終わらすのも癪。どうせなら実器として使えるものに仕上げたい。そこでダイソーで黒の紙粘土を買ってきて、こいつで遮光しつつ筐体の成形も図ることとする。まさしく可塑性全開。気泡が多いようで非常に軽い紙粘土。防水塗装すれば水に浮くらしい。高野豆腐みたいなもんか。その分遮光性には不安がある。ダイソーで墨汁でも調達して混ぜ込んではどうだろう。イカ墨入りパスタでも打つみたいになってきた。ハンズには陶芸用途ではなく、乾燥させるだけで最終提示媒体にできるような粘土類がひと棚ぶん揃っている。さすがだ。層が厚い。黒の紙粘土はダイソーと同じ豆腐一丁の半分くらいのサイズで260円くらいのとプロ仕様とかのもうすこし高いのとがある。ハンズのほうがやや重く遮光性は高いかも。ダイソーのは乾燥しても変形するらしい。いろいろ試してみるべし。
かつて粘土でつくられたカメラは存在したのだろうか。聞いたことはない。通常使うのは金属板、木材、プラスチック。手軽な用途では空き缶とか紙とか。カメラというものは通常それなりの精度が出せて、さらにその精度が保てる程度には形状が変化せず剛性が高いことが必須なので、粘土などというのはおよそほど遠い素材に違いない。せいぜいパテですきまを埋める程度か。京セラ製品にはフィルム圧版にセラミックを使ったのがあったけど、高度に生産管理されたセラミックは硬く寸度安定性も高くて、乾燥させただけの紙粘土とは別物。皮やビニールや布は柔軟だが、蛇腹かフード、あとはせいぜい、あってもなくてもいいような外装に使う程度であり、主要構造部分が革で組み立てられたカメラというのはありそうもない。
自由さを体現したカメラとしては、大辻清司の2リットル式写真機や一升式写真機だったかなどの枡にTopcorレンズをつけたものや鍋を加工した空撮用カメラが思い浮かぶ。目じゃない。史上もっとも自由な写真器をこしらえてやる。