朝から特快晴。11時半頃仙台着。空が深い。駅東口へ。今年の正月だったかにヨドバシに行った程度で、まともに歩くのは卒業以来だが、在学中も東側にはほとんど行ったことがなかった。図書館にオルガンのLPを借りに行った程度。入学前に高校の担任に再受験するなどと言っていたので、当時東口にできたばかりだった有名予備校の仙台校が実績をつくるための奨学生枠に推薦してもらえたらしく、ただで通えるならと通うことにしたのだったが、寮に入って毎日酒を飲まされていたのではとても再受験どころではなく、それきり行かずにしばらくたってから行ってみたら、今さら来るなと追い返されたのだった。そのころの東口の印象はほとんどない。再開発前で更地が多かったような気もする。現在はできたばかりという風情の中層ビルが林立している。はじめて来るに等しい場所。心が躍る。
新寺地区。東京なら谷中や本駒込にも並ぶほどの寺の密集地。その名の通り新しい建物の寺が多い。近世になって寄せ集められたのだろうと思っていたら、予想どおり仙台城築城にともなって川内地区を追い出されて移ってきたらしいのだが、その時代よりずっと新しい。ここも爆撃を喰らったのだろう。古刹というのはほとんどない。仙台の歴史が浅いということもあろうが。何しろ寺また寺という調子で、瓦屋根を追っていくと次々寺に行きあたるので印象に残ったところのみ。孝勝寺は小振りの寄木細工のような五重塔が珍しい、この辺にしては敷地の広い寺。駅に近いと高層建築が背後にあってまるでかたなしなのだが、このあたりから見通しがよくなってくる。五重塔の傍らに当地では政治力がありそうな団体展風のよくわからない母子像が高い石段の上に鎮座していて、構えてみるがまったくさまにならない。愚鈍院はあからさまな鉄筋コンクリでおもしろくもなんともない。ほんとに愚鈍そうだ。それ以外も建物はほとんど印象に残っていない。龍泉院はかつて中尊寺と伍す大寺だったらしいが荒廃して再興したとかで往時の勢いはない。本堂前に布袋尊像があるが、石材屋が最近つくったものらしく、仙台七福神とは別物。背後は本堂で中途半端に空が覗く。しかし面妖な笑いがなかなか捨てがたい。ちょうど12時ごろで南中時。南向きで完全順光。背後の壁には日が射している。斜光条件時に出なおすかとも思ったが、あとで時間がとれるとは限らないし、来てみてもうまくいくとは限らない。せっかくの機会を逃してあとで臍を噛む思いはさんざんしてきた。これはやっておいたほうがいい。寺の人に断って店開き。ところがポラが5枚しかない。帰れば売るほどあるというのに、出がけに時間がなく確認しなかったのだった。2枚切ったが余白多すぎずれすぎ。でも先のことを考えるとこれ以上使えない。QLフィルムは14枚あるのでちょっとずつずらしては撮影していくことにする。一年ちょっと前にはポラなんか使わずにやっていたのだ。像が高い位置にあるので、背が届く限界まで三脚を伸ばすが、低くしたほうが壁の直射日光の面積を減らせたかもしれない。でも像がちんまりしていてはよろしくない。極力寄ったほうがいい。また高いためピングラが充分に見えず、上部のフレーミングが難しい。上が余ってしまう。最初の3枚はバックの本堂をつぶすべく40sから50s、像が白いのでコントラストが高く、像が浮き上がってくる。うまくシャドウに落とせるかもしれない。だが、たぶん傾いている。位置を動かしてさらに2枚、これもたぶんだめ。次第に雲が出てくるが、空の写りこみはほとんどないので、日照が安定している限り支障なし。これも楽でいい。さらに3枚。うまくいったかどうか。13時過ぎ終了。このころにはさすがに日が傾きだしている。
さらに見てまわる。森城山大林寺の参道には両側に仁王像がある。金剛力士はずっと気になっているのだが、みな山門の中に入っていて、しかも鳩よけのネットが張ってあり条件が悪すぎる。風神雷神も同様。木造なので雨ざらしにするわけにもいかないのだろう。でもここは石像なので外に出せる。背後は青空、というわけにはいかず木々。ところが、あいにく北向きの寺で、仁王像も北向き。両側はビルで夏至時の日照も望めない。覗いてみるがまず見えない。あえなく断念。このあたりは北向きの寺が多い。北向きに大通りに面している寺はその条件に合わせたのだろう。一遍上人像のある法王山阿弥陀寺も北向き。たくさんありすぎて時間が足りずまた来ることに。