新宿クリエイトの夜間ボックスに4x5カラーネガ7枚投入して深夜バスに搭乗。新宿から首都高の下高井戸を経て中央道に乗るルートはまったくおもしろくない。次は東京駅から乗ってみよう。できれば2階建てバスの2階で。はとバスは首都高を走るのだろうか。
そしてついにやってきました16年ぶりの京都。前回は当時の勤め先としては異例の出張でやってきたのだった。あのころはどん底だった。祇園あたりで舞妓か何か花柳界の人と思しき和装の若くてきれいな女性を撮影したのだが、帰ってきてからそのネガを畳の上でキンカン漬けにしてしまい悲しかった。現像してみたらベースはごわごわになっていて、なのにうっすら像が出て、しかし当然のことながらとうてい焼けるようなネガではなく、いっそう悲しくなった。西成でカメラを構えていたら労務者ふうの人に気をつけろよと声をかけられた。当時は殊勝にもスナップをやっていたのだ。梅田あたりで塗装のはげなんかも撮影していた記憶があるが。
京都駅前には野中*ひろむ*事務所。駅のまわりはどこも閑散としている。5時半とはいえ主要駅なのだが。9時前にもあまり人はいなかった。名古屋も人が少なくて、東京が人が多すぎるということなのだろうけど、名古屋よりも少ない印象。暖をとろうと店を探すもやっていない、というより店自体がない。やむなく歩くといきなり東*本願寺。塀で囲われていて、このへんからして東京の寺とは違う。堀まである。さすが城なみだ。親鸞750年とかで標語が「今、いのちがあなたを生きている」。あれですか一時期はやった利己的遺伝子みたいなもんかな。いのちってのがあなたってのと別のものとしてあって、あなたってのはいのちが乗っかるヴィークル、みたいな。門はとにかくでかくてもう別次元。いや笑ってしまう。今までのはなんだったんだ。6時20分開門とのことでさらに歩くがハンバーガー屋と24時間営業の定食屋、会員制の寝カフェが一件あっただけ。6時過ぎに東*本願寺が開門したのでまだ暗いが入ってみる。境内にやたらでかいビルがある、と思ったらお堂を囲って改修中なのだった。御影堂といって、関東での祖師堂とか大師堂に相当する様子。とんでもなくでかい。あれで木造とは。明治期に復興したらしい。隣の阿弥陀堂はそれより小さいがそれでも浅草寺くらいはある。警備員に三脚禁止かと聞くと外ならOKとのこと。警備員はフレンドリー。さすが国際観光都市だけのことはある。しかししっかり警備している。人数も多い。僧侶は歩いていない。今年一杯改修中。また来なければ。
明るくなってくるが曇。次に西*本願*寺。こちらは阿弥陀*堂が改修中。東*本願寺よりは小ぶり。正面の戸はアルミサッシ。御影堂の右のコンクリの催事場のようなものが変わっている。守衛に聞くと三脚不可。撮影許可はと尋ねたら広報に聞けとのこと。個人ならOKなのかも。もっともこちらはあまり惹かれない。
はじめてデジタルカメラをメモ用に使ってみる。
さらに東*寺。五重塔や金堂は柵で囲ってあり拝観料800円となっているが、原則非公開なのがこの時期だけ特別に内部を拝観できるようで、概観を見るだけなら自由。国宝がごろごろ。茅葺の御影堂も国宝だが、古い民家のような無造作感。老婦人が念仏を唱えながらしきりに手をこすり合わせている。参拝客は多い。こちらの人は手をすり合わせて拝むのだろうか。五重塔は国内最高の木造建築。さすが強気だと思ったら、「最」も「高」い、ということのよう。講堂も国宝の金堂も古い。金堂は屋根が二層。柵があり、正面前に白いテント。構えてみるが灯籠があり引きもとれず撮影には及ばない。門も重文だったか。彩色を凝らした唐門も。他にもいろんな建物。広い。ボランティアらしい掃除の人が大勢。あいさつしてくれる。職員らしき人に聞くと外は撮影自由、みなさん三脚立てて撮影してますよ、中は係に聞いて、と。格式の高いお寺なのに非常に開かれている。鎌倉みたいにこぞって小銭をかすめとっておきながら三脚撮影させないようなみみっちい商売などしない。鷹揚で寛容。
近くにある龍谷大学は寺の学校が前身らしいが洋館。
河原町通りをてくてく北上し食べ物屋を探すが手ごろなのがない。以前このへんで探し回ったときもいい店が見つけられなかった。そして高い。あまり外食する習慣がないのだろうか。でもスーパーも高い。昼前から市役所で爆睡。
寺の密集地には小さい寺がたくさん。要法寺護国寺くらいの大きさだがこのへんでは埋もれる印象。日蓮宗浄土真宗が多いか。境内にワゴンタイプの大型車などが止めてあるのは東京と同じ。法華宗寂光寺は本因坊の元祖とか。このあたりまで書いていったらきりがない。
京都市美は前回来た時威風堂々たるたたずまいが印象に残っていて、こちらが京都国立近美だとばかり思っていた。ぱっと見だれもがそう思うのではないか。
平安*神宮は広くて大きい。それくらいか。金色の鴟尾。つま先がそりかえった靴を寝かせたような形。「神宮」の常なのか狛犬などいない。蒼龍楼は龍宮城を想起させるような造形だが、覗いてもうまくいかない。「三脚、一脚ご使用の方は、許可証(二千円)が必要です」とあるが、入場時有料の庭園内だけかもしれない。
熊野神社は印象に残らず。狛犬はゆるめだったような。どっかで見た狛犬が笑うせえるすまんみたいでよかった。どこだっけ。しかし背後が雑然。
聖護院は総本山聖護院門跡となっており、宿泊施設らしいのだがよくわからない。地名にもなっているくらいだから往時には権勢のある寺だったと思うのだが。裏道にある「聖護院八ツ橋総本店」は高校の修学旅行で生八つ橋を買った店ではないだろうか。こんなとおりのこんなたたずまいだった記憶がある。でもこの「総本店」がそこらじゅうにある。泊まったのは木造の由緒あるという旅館だったのでこのへんだったかもしれない。いや、出張時の土産だったかもしれない。何しろそのとき出張の日程後に近くの京大吉田寮に泊まったから。
むろん今回も吉田寮に臨泊。外観や建物の作りはまったく覚えておらず、こんな部屋じゃなかったような気もする。窓からの風景には見覚えがある。一泊200円。部屋にTri-X120フィルムの包装紙がいくつも落ちている。寮生かもしれない。むむむ。ナニヤツ。しかしここでプリントできるとは思えんが。
徒歩で地図もなくろくに下調べもしてないのにこれだけまわれた。バスなら2、3日あれば有名どころはたいていまわれるだろう。見るだけなら。
荷物は耐えられないほど重い。重いだけなら予想の範囲内だが、トイレで困るのは考えもしなかった。Tamrac777なら背負ったまま入れるがこれだと個室内での方向転換すらおぼつかない。こんなに重いんじゃ移動でくたびれ果ててしまい撮影までおっつかない。着替えとポラは寮に残していけば多少軽くなるか。ちょっと外出するとき荷物をいちいち持っていく気はせず、部屋に置いていくことになるが、盗まれそうなのはパソコンだけ。箱とかフィルムホルダとか持ってくやつはおるまい。でも冠布で包んでいると中身も見ずにそばの三脚から高価な品と判断される可能性もないとはいえないので、冠布をはがしてパソコンをくるんで外出時に持ち歩くことにする。
写真のファイルを忘れた。名刺も。へたにあんな写真見せたらもらえる撮影許可も下りなくなるかもしれないのでなくてよろしい。