12日目。曇。雪か雨も降っていたか。なおも寝カフェ暮らし。
四条河原町のバス停から岩倉実相院行きの京都バスに乗ろうと思ったら土日運休。糞。やむなく四条烏丸まで歩き地下鉄1日フリーキップ買って初の烏丸線。やっぱ電車はいいわ。土曜だからということもあろうけどすいている。観光客には使い道のない路線だし地元住民は自家用車で移動するし年配者はバスなんだから誰も使わない。それに本数も多い。定刻どおりに来る。立っててもゆれないから楽。眠かったら眠れる。折り返していくらでも、現実には終電まで、眠れる。このごろはバスでも眠れるようになってきたが、いやそれだけ歩いて疲れているのだろうが、目的駅を乗り過ごしたら戻れないので落ち着いて眠れない。そしていちばんいいのが広い。通路に人ひとり以上の幅の厚みのカメラバッグを置いても通行の障害にならない。バスにバッグ持参で乗ると、非常用なんとか入りの空間をバック置き場に確保すべく必死。しかし前に進むのが非常に困難。通路に人が立ってたら動かそうとするだけで白い目で見られる。だいたい乗合バスなのにいすを横一列形式にせずに全席観光バス風の前向きの配置にして通路を狭くしている路線があるのが問題なのだが、それ以上に、この狭さでうしろから乗って前に進んで降りるというしくみをとることに無理がある。均一料金区間と整理券式の従量区間が混在していてそうせざるをえないのはわかるけど。一日乗車券の意味がない。気の利いた人は混んでるときにはうしろの乗車口から降りて前に回って料金を払ってるのだが、このこぶつきだとそんな敏捷な動きはできない。この気苦労はけっこうなもの。地下鉄に乗ると、それがどれほどだったかがわかる。
終点の国際会館。すっかり山奥。国立京都会館はまったくつまらない。近隣のホテルも。信養院本光院は鉄筋。バスが160円なので乗ってもいいかと思ったが待たされるのでとっとこ歩く。
円通寺は拝観料500円。遠いわりに客はちらほら。フィルム一眼レフ持参の若い女性やタクシーで乗りつける一行。外から見る限り狭そうで、典型的な庭園型。皇族のからみだった気がする。だいたいこんな山奥に寺を構えるなんてやんごとなきかたがたの暇つぶしか余生の隠居先なんだから、現在の貧乏人ごときに用はない。しかも名勝なんて大嫌いだし。比叡山を借景にした庭らしい。そうか借景というのは風景のフィクションなんだな。人物のフィクションにも興味ないし、風景のフィクションもどうでもいい。山水を模した庭。あほくさ。元の風景見りゃいいじゃん。なるほどこれも再現か。なぜ再現するのか。所有のためか、管理したいからか。元の風景を意のままにつくりかえられる財力も技術もないから代行ですますのか。部外者にはまるで理解できない価値基準を共有した階層の間でのみ認められる価値は、そうした階層が現実的な力を行使できなくなったら通用しなくなる。現に、円通寺のすぐ下の二方向は開発で無残に切り開かれていて、比叡山方面も木などほんのわずかしか残されていない。北京で立ち退きを拒否し、周囲を堀のように掘り下げられた家のようになっている。そうでなくてもそのあたり一帯は民家だらけ。もやは風前の灯。
階段上のなんとか八幡を経て妙満寺顕本法華宗総本山とのことだが、あんまり聞かない宗派だし、見たところ妙心寺や相國寺ほどは力がなさそう。本堂はそこそこ大きいものの、背後には中途半端に木がかかっている。4mくらいの段の上に建っているため高く見えるが、建物の背は低い。正面ガラス戸。TVアンテナ、拡声器も見える。ブッダガヤ型仏舎利大塔は金の仏がはめこんであり異彩を放つ。でも、ここはもういい。
岩倉実相院も門跡で貴族の隠遁先。500円、三脚持込不可。室内撮影も不可で、縁側から庭への撮影のみOK。そこまで強気ならいっそ全面禁止にすりゃいいだろうに。御本尊の撮影ご遠慮くださいというのは宗教的理由から理解できるが、襖絵やただの室内を撮影させないというのは意味が違う。どのみち縁はないが。近隣の大雲寺はやる気なし。長源寺はその名がついたバス停が二つもあるのにあまりにもひどい。石座神社など。
さて国際会館駅に戻った。まだ時間はある。ついでに大原に行ってみるか。期待もしてないけど。バスで寝てたら着いた。寂光院は三脚不可。隣の建礼門院陵参道から見ると小さそう。庭園だろう。桂徳院×。三千院は三脚全域不可。庭と室内の順路で700円だったか。ここはちょっとよさそうな気もするが、どのみち撮影できないんだから入っても無駄。女性一人の客がいる。勇気あるなあ。勝林院は桧皮葺か。屋根に雪が積もっている。背後は木。声明の根本道場とかで他とは違う剛直な面持ち。地味だがひょっとしていいかも。300円。実光院しょぼ。宝泉院三脚不可庭のみ。来迎院板金屋根でやや新しく小さい。念仏寺は石畳の配列のみおもしろい。大原はこれで全部。帰り道、高野川の河原に大規模マンション。風致地区じゃないのか。何もこんな山奥に建てなくても。
ふもとでバスを降り蓮華寺。一脚三脚不可。古くて顔も削られた石仏がたくさん。そこらから集めてきたのだろう。庭は400円で見られるようだが人もおらずやる気なさげ。バス通りの近くで車の音が聞こえる。大原から離れているし客も来るまい。竹本寺は赤い板金の屋根。住宅がすぐ隣。
三宅八幡宮はちょっとおもしろい。はじめが狛ハト。でも阿吽になっていない。次は狛犬。目が飛び出ている。屋根の飾り瓦もハト。その先の狛犬の左側、頭頂に角が生えているのだが、カブトムシのように上下に分かれ、上のほうが長くなっている。これはユニコーンとは呼びにくい。何かに似てるが思い出せない。
地下鉄で松ヶ崎に行き、涌泉寺は本堂の前が幼稚園の庭。松ヶ崎大黒天は鉄コン。このへんには珍しく、七福神や観音像など彫像多数。でももう18時前で暗くてよくわからなかった。
この方面は、比叡山は別としてほぼ完全制覇。
京都に来てからはいちばん交通費を多く使った。1,230円。大原に行くなら1,200円の京都観光一日乗車券を買ったほうがいい。京都駅からの直通便でなく乗り継いで行くなら行き来だけでも安いし、岩倉も回ればもっと安くつく。こんなに歩かないですんだ。バスの本数が少ないので歩いたほうが早い場合もあろうが、うまく来れば乗れる程度に考えれば乗り放題のほうが得。でも、もう行くことはないがね。