どうにかハンドニブラで切っていく。
それなりに値段の張る引き伸ばし機の中核部分なので、手を加えるには踏ん切りがいるが、いったん歯型が入れば腹も据わる。

片側ひとしきり削る。結局ヤスリがけして整え、バリを削る。
精度に影響はないのか。ないとはいえない。下ろすとネガキャリアに圧はかかる。
こちら側を充分削ったので、壁までの距離がより短くて削りづらい右側は削らず、左だけですまそうかと考える。
左側にネガを2mm程度シフトした状態になり、光軸から外れるが、レンズのイメージサークルが充分広いのでその点での問題はない。
それよりも、下側のアパーチュアが画面に近接してきて、これが画面外の反射の原因となっているので、左に寄せると画面に干渉してくると考えられる。これを排除しなければならない。
そこで下側も斜めに削る。

でも、やってみると作業性がさらに悪く、蛇腹に傷をつけてしまいそうで怖い。
蛇腹やレンズボード付近に細かい削りカスが散乱するのも気分が悪い。それに、精度をいうならネガキャリアの上は圧をかけるだけだが、下側は平行度にもろに響く。
カッターで削ろうとするが硬い。鉄ではないと思うのだが、アルミ合金にもいろんな種類があり、硬い部類かもしれない。中断。
やはり上部のネガキャリア押さえの余分な張り出し部分は両側を削ってネガは左右中央に置くことにする。
下の反射はパーマセルでも貼って様子を見ることにする。

何かと難儀だが、パソコンのセットアップよりはるかに楽しい。作業するための下地作りという点では、それと引き伸ばし機の改造とは共通しているのだけど。OSやソフトのインストールなんて決められた手続きをその通りにこなすだけ。それを、ヴァージョンは変遷したとはいえこれまで何度やってきたことか。どんなことでもそうだが、与えられた手順に従った処理を繰り返していれば必ず飽きる。入社してしばらくは見聞きすることが目新しくて楽しいものだが、3年も同じ仕事をやっていれば慣れて新鮮味はなくなる。BootcampやVMwareFusionでMacにWindowsOSをインストールするのは未体験でやや難易度高そうだが、かといってとりたててわくわくもしない。やる前からどんなものかおおよその見当はつくから。ところが引き伸ばし機のネガキャリア押さえを削る改造なんてどこにも情報はないし、手順が確立されているどころかうまくいくかどうかもわからない。ハンドニブラの歯を逆向きにできただけでも、結果として役立たなかったとはいえ、かなりの達成感を得られる。でも、思い通りにいけばそのこと自体が報酬となるが、うまくいかないと何もかえってこないわけで滅入る。今やっている写真については常にそうだが。