またも買い物。あー。
賃労働の作業を完了しいざ出力しようとインクジェットプリンタを通電してみたらシアンとイエローのインク切れ。そのうえ、もともとプリンタヘッドの移動方向の制御がきいていないらしくてブラックインクのフォーカスが甘かったのだが、テストしてみるとなお悪化している。最後に使ったのは京都行前、1月中旬。97年の型で、購入後2回くらい不具合で交換しているのだが、交換後8年以上経過している。もう限界。でも明日の打合せに間に合わせなければならない。インクカートリッジを交換すれば当座はしのげるだろうが印字品質は劣悪。そのために6千円も払いたくない。というわけで急遽新しく購入することにする。
インクジェットプリントを展示で出す気は今のところ毛頭ない。せいぜいファイルに使う程度。だから写真用としてはどれでもいい。
商売上の用途としては、i1proofクラスでキャリブレートしてオフセット印刷の色をインクジェットプリンタでシミュレートするわけだろうが、広告方面で印刷所が決まっているのであればともかく、出版社や美術関連が相手であれば色の管理は印刷所に下駄を預けて、こちらでお見せするのはおおまかな見本、厳密な色は印刷所が出すデジタルプルーフなり本機校正で見てください、というのがリスクも避けられて八方丸く収まる。データを渡す先が特定の相手でなく多方面に散る場合には、少なくとも東京近辺ではそれが依然として現実的な進行方法。プロファイルくれとかテストさせろなんていっても嫌がられるに決まってるし、顧客が間に入ってたら面倒なだけ。商売のキモである実画像には触らせてもらえないことも多い。印刷所の聖域には立ち入らないほうがいい。そうなると高価なプリンタとCMSツールを揃えて色マネしてもほとんど意味がない。だいたいこの頃はPDFを送ってやりとりし入稿時のサンプルはもしあってもモノクロレーザ、色は色校で確認ということが大半で、だから11年前のおんぼろプリンタでもどうにかやってこれたのである。デザインカンプの出力機なんて安いので充分。
そこで半日かけて情報収集。結果、EpsonPX-5500、PX-5800、PX-G5300、CanonPixusPro9000に絞り込む。今あるMJ-8000Cは最大A2幅で、その代替になるのはPX-5800だが、年に1回あるかないかのポスターのカンプのために10数万払う気もしない。今は置けるけどそのうち引っ越さざるをえなくなったらでかすぎ。下位機よりインク代がかさまないようになっているが、たいして使わないんだから本体の価格差を考えるとランニングコストだけでこれを選ぶのはばからしい。というわけで脱落。これと同系列のPX-5500はA3ノビで手頃なサイズと本体価格、階調再現はいいということになっている模様。ただ、これの売りのひとつがモノクロ風プリントらしいのだが、わざわざモノクロ大全紙を焼ける環境を整えて、SaundersのイーゼルやKostinerのプリントウォッシャーまで揃ったというのに、インクジェットのモノクロもどきなんかやるわけがない。これについてはかねてより思うところがあるがあらためて。
まあとにかくなんでもいいので、安けりゃいいとCanonPixusPro9000に目星をつける。今日必要なのだ。配送では間に合わない。価格comに出ている秋葉の店は在庫がなかったり長期保証がつかなかったり。経験上、出力段がもっとも機器トラブルが多い。メーカー保証以上の延長保証は不可欠。在庫を持っていて即日持ち帰れるところというとYカメラ。Yの延長保証のあくどさは経験済だが、それでもないよりはあったほうがいい。5年と長期なのもいい。かつてSofmapの5年保証は良心的で、Yあたりは1回しか適用されないのに何回も助けてもらい、前のプリンタやSCSIのMOドライヴは何回も修理や交換をしている。でもSofmapも今やそんな余裕はないだろう。だいたい売値が高すぎ。Yは売値こそネットショップより高いが20%ポイント還元なので実質ほとんど変わりない。プリンタはメーカが強くて価格統制が行き渡っているのだろうか。
あとは現物見て判断すべしと新宿へ。PX-5500とPX-G5300の比較では、ライトシアンやライトマゼンタのないPX-G5300がハイライトでドットがたいへん目立つ。もっともこれはマクロレンズ仕様の肉眼ではない一般人には問題にならないのかもしれない。一方PX-5500はライトインクがあるのでハイライトはさほどでもないが、シャドウ部の荒れが非常に目障り。光沢紙ではPX-5500のインクの乗っていない部分との光沢の差が不自然で、実質半光沢かラフ目の紙にしか使えない。今もって顔料系は彩度が上がらないらしく、CanonPixusPro9000の派手な発色に対してPX-G5300は地味、PX-5500はさらに沈んで見える。ところが、出力サンプルを見比べているうちにだんだん気分が悪くなってくる。あらゆる色相を網羅したうえに、これでもかと彩度を強調したA3の画像が次々と襲ってくる。しかも、どれもみな臆面もなく売らんかなのあざとい構図。そのなかにこれもステレオタイプな「アートぽさ」をまとったアメリカ西海岸系のいかにもなモノクロ調画像が織り交ぜられなおさらげんなりする。とりわけCanonのサンプルが仰々しく装幀したポートフォリオにもったいつけてマウントされていて便意を催させる。さすがおトイレ社長の会社だ。もうとても買う気など起こらずほっぽりだして帰りたくなるが、それじゃ明日のプレゼンはどうなる。間に合わせでいいんだから安いやつをとPixusPro9000にしようと思ったら、配送のみで持ち帰りは対応できないとのこと。ならば候補の中で次に安いPX-G5300、68,000円の20%還元で5年保証が5%。PX-5500より実質で1万2千円くらい安いんでこれでいい。
抱えて帰ってA3ノビ10数枚プリント。10年落ちのMJ-8000Cに較べれば夢のように楽ちん。結果もデザイン用途には充分。インクの減りは早くてすでにブラックが半分くらい。MJ-8000Cはライトインクを使うMC系登場の直前の型で、印字は荒いがランニングコストは抜群にすぐれていた。もっともこの頃は印字ノズルの目づまりがひどくてしょっちゅうクリーニングをかけるのでものすごいインク消費だったけれど。なんにせよ、もはやたいして使わないんだからどってことなかろう。翌日のプレゼンに間に合った。それだけで充分買ってよかった。