このところ天気がかんばしくなくて絶好の労働日和だったのだが、前日というか当日深夜の天気予報を見るとひさびさの晴れ。こりゃ撮影に行かざるをえなくなるのか、と妙な義務感にさいなまれつつそのまま夜明け前まで働いていたら、晴れてはいるが南空遠くに雲がありなんともいえない。どうする。のんびり出かけていられる事態ではないのだが、ここで撮影に行かずに特快晴だったら、軽く10日は後悔してばかりでかえって業務に支障をきたす。だったら行ったほうがいい。しばらく撮影に出ていなかったので身支度に手間取り5時半すぎ出発。念願の日光へ。ところが新宿に着いたら埼京線がない。調べ回ったら早朝は埼京線が池袋までらしい。6時台なのに通勤客が多い。宇都宮線快速ラビットで北上。ところが利根川の直前から視界が濁ってくる。雲かと思ったが視界を去るのが速い。濃霧が発生していたのだ。利根川を越えてしばらくすると薄くなったが、古河を過ぎるとまた霧。このへんは霧が出やすいらしい。たまに宇都宮線湘南新宿ラインが止まる。小山で晴れるが北には雲。不穏な雲行きのまま宇都宮に着いてしまい、途中待ち合わせで送れたので日光線に急かされるように乗り継ぎし、ここまで来たらもう行くしかない。でもだんだん雲は増えていく。都内に戻っていれば特快晴だったのに、というよくある結末におびえながら9時過ぎ日光着。レーン2本。
もう全天の3割は雲で、ほぼ見込なし。でもせっかく来たので下見。10数年前に社員旅行で来て、一泊しているのだが、街並みはまったく記憶にない。途中以前聞いたことがあるオーダーメイド耳かきだかの店。商店街は活気がない。あれは仲見世とか参道という代物ではない。ただのシャッター商店街。調べたら「日本ロマンチック街道」なんだそうな。週末や繁忙期はもうちょっとシャッターも開いて盛況なんだろうけど。でも、観光客がいないわけではないのだ。JR駅は予想どおり閑散だが、東武駅は梅雨時の平日にもかかわらず大勢降りて駅前でバスに乗っている。駅から観光地までが中途半端に遠くて、徒歩20分なら歩いてくれるだろうと、沿道の人たちは観光客をあてこんで長い道なりにこぞって商売を構えたんだろうが、20分だと世間一般の人は歩かない。特に観光で散財していく年配者はまず歩かずにバスで素通り。たまに歩いているのはといえば払いの渋そうな若年健脚者と外国人観光客。
着いてみると外国人は多い。鎌倉と違ってコーカソイドが多いのは世界遺産登録のたまものだろう。地元あげて誘致に奔走したんだろうなあ。モンゴロイドにも外国人が多い。集団の客はほとんどが外国人観光客か修学旅行生。それが一人頭1,000円とか落としていくのだ。しかも国連のお墨つきなんだから次の世界大戦までは安泰。
むろんこっちはそんなお布施なんか払わない。全天に巻層雲が流れて撮影の見込みもないのに1,300円払うほど金離れよくない。輪王寺の中心施設の三仏堂は広大な観光バスの駐車場に隣接している。でかいことはでかくて木造らしいが、金払った観光客が我が物顔に内部を歩き回るもんだから、宗教施設らしいありがたみはまるでなく張りぼてみたい。境内は広くて、まさかあれだけじゃないんだろうし、梵字のお札が貼られ観光客を寄せつけない面持ちの建物もあったが、本堂があそこまで俗っぽいと信用できない。清水寺を思わせる、修学旅行コース特有のだれた風情。
東照宮はタダで入れる仁王門まで。五重塔は派手だが小さいしなんか軽い。醍醐寺とか東寺の五重塔より見劣りがするのはなぜだろう。真冬の京都より初夏の日光のほうが観光客が多いからというだけだろうか。しかし神社に五重塔ねえ。東照宮の見ものはたぶん陽明門くらい。それで1,300円はどうなんだろう。それを考えると京都の寺の拝観料はあれでも安いのかも。二荒山神社は拝殿が瓦葺きでまあまあでかい。特におもしろみはないが構えてみると撮れることは撮れそう。
雲も出てきたのでそのくらいで引き返す。ろくに見もしないで何だが、観光地としては見所が少なすぎるんじゃないか。鎌倉のほうがずっと歴史の厚みがある。それでも商売としてはたぶんこちらのほうがうまく回転しているのだろう。何しろJR東日本が新宿からの東武乗り入れの特急をわざわざ出すくらいなのだ。日光線と競合するにもかかわらず。よほど集客するんだろう。鎌倉のようにうるさい寺がたくさんあるんじゃなくて、事業主体が少ないからまとまれてよかったのかもしれない。帰路観音寺と龍蔵寺は住居兼で見るまでもない。近隣に他にもあるようだがたぶん似たようなもの。
11時46分に日光駅を出る頃には雲も広がってきて、14時に都内に入ると雲だらけ。どのみちこの日は無理だった。だが東照宮陽明門を何とかするまで行くつもり。