頭で

予報は晴れ、夜明け前から快晴の気配。でも午前中打ち合わせがありふらっと日光というわけにもいかない。少し寝て起きると予想通り快晴、南に遠くうっすら雲。透明度は低い。上天の抜けもそこそこ。夏の快晴。でもみすみすフイにするにはしのびない。どうにもこらえられず打ち合わせに機材を持っていく。両手にGitzoの三脚とB4のゲラ1,000ページ分、おまけに5歳児くらいのバッグ背負っての通勤時間帯の中央線上りは苛烈。
昼過ぎ出先から東横線で、ずっと引っかかっていた川崎三塔ビルをと思い横浜へ。夕方でないと北側に日が当たらないのでしばらく横浜駅周辺をうろつくことに。パシフィコの再撮影もやらなきゃならないのだが、南に遠く雲がありおあずけ。東口に出て横浜ポートサイド地区へ。ポートサイドギャラリーは去年たたんでいた。そんなもんだろう。
さらに海寄りを歩いていて発見。Q6。こういうのもいい。店開き。富士のインスタントフィルムを使いまくる。静電気か一枚目はすさまじいほこりが付着。感度500なのに800のPolaroidT53より短い露光時間で白飛びしてしまう。これまでほとんど冬にしか使ったことがなく、適正より短い現像時間で処理していたのでアンダーだったが、温度が高いのでオーバーになった、ということもあるかもしれない。露光時間の制御ができてなかっただけ。だが、それより、富士製品がPolaroidより相反則特性がよくて低照度下でも感度低下が少ないからだと思われる。カラーでも富士フォトラマのほうがいろがいいという。よそが開発した製品アイディアと規格にのっかりながらオリジナルより品質を向上させてしまい、オリジナルを退場させて自分は居座る、という写真業界のみならず製造業全般で行われている日本のお家芸がここでも。いえいえ、続けてくれるだけ感謝してますよ。EV15.5で4sでは長すぎ、2sでもまだ長いくらい。これじゃ感度3000なんて露光時間が短すぎて使いづらい。さらにPolaroidT50系と画面範囲の比較。縦位置では画面上がパックフィルムのほうが狭い。上というのはホルダからフィルムを排出する側で、通常の使用では縦位置時に下部分が写るほう。かなり狭い。7mmほど。その一方でこの方向の画面サイズは広いので下がより写ることになる。でも下なんてどうでもいいのだ。上が出ないのはつらい。そこで富士でテストしていって固まったらPolaroidで確認、という手順をとることになるがもうじゃかすかインスタントフィルムを消費してしまう。実地にテストしながら同時に本番。なんとかいう英語でのいいまわしがあったが、そんな気の利いたもんじゃない。ただ単にずぼらで準備不足なだけの泥縄式。約45sでカットフィルム3枚だったか、調子が出ちゃってついにQLも開封してしまい2枚。あとで気づいたのだが、何となくぽんと三脚をおいた場所がベストポイントだった。Ebonyのころからそういうのはよくある。たまたまということもあるし、どこでも大差なかったこともあろうが、今回はもっと前でも後でもダメだった。空間把握能力はなくてもこういう直観的判断の力はあるということか。ただの慣れか。さらに隣のP6も。Qのほうがその字がおもしろくて、それはなぜかと考えると、まともな局面ではQなんて滅多に出てこなくて、どこか奇異さがあるからではないか。ただ画としてはPのほうがいいかもしれず、文字に横画が入っているほうがパース効果の演出上は効果的。また来ることを考えたらついでにやっておいたほうがいいので撮影。風が出てくる。時計がないので何時だかわからないが、撮影開始時点ではほぼ巡行だったのが左サイドライトになってくる。次の川崎にさしつかえるのでは、と思いながらも、こんなぶらっと歩いていて行きあたるなんて滅多にないことなので、このさい心ゆくまでやっておく。QL
ふと、「頭でっかち」とぽっかり浮かぶ。そうだ。頭でっかち尻すぼみとはまさしくこの写真。これより頭でっかちの写真を見たことがない。だいたいこのガタイにしてからが、やたら頭部が長くて著しくバランスを欠いている。頭はでかいよ。昔からよく言われたものだ。モヤシみたい。失礼な。豆モヤシと呼びなさい。どっからどこまで頭でっかち。文句があるなら頭でかくしてみやがれってんだ。頭でかくして。頭で隠して。派生様態も味わい深い。頭隠して、では断じてない。頭デカとかありそうだな。先天性疾患により漱石をはるかに超える頭蓋容積を持ち、重すぎる頭部を脊椎が支えられないため外出もままならないが、並外れた知能で難事件を解決する刑事のアームチェア・ディテクティヴ・ストーリー。でっかいことはいいことだ。もっと頭を、もっとでっかちに。
まだ南に雲。15時半すぎに川崎へ。三塔ビルはこの時期の夕方に隣に高層集合住宅の影が落ちるのをライブカメラで確認していた。2年前に撮影したときはその高層住宅は建設前だった。着いてみたらもう三塔ビルにその影がかかりはじめている。それだけならもっと早めに出直せばすむことだが、高層住宅が三塔ビルのガラスの壁面にしっかり映り込んでいるのだ。しまった。あのときやっておけば。気がついたときが撮影しどきなのだ。条件はどんどん悪化してしまう。わかっちゃいるのだがなかなかできない。武道館も背後に高層ビルが建っているらしい。とにかく構えて撮影。影はどんどん高くなっていく。2枚で終了。出直す気も起きない。2年前のネガでいいかなという気分。だいぶ薄かったのだが、もともと上が黒くてうまくいかない物件。
近くをうろうろすると、西口さんかく公園の滑り台が悪くない。建物に絞らなければ、いくらでも対象はある。神奈川は都内より建物が建て込んでおらず、できる余地が大きい。北側なので日が回り込んでくるのを待ってからEV14.5で2m、QL3枚、カットフィルム1枚。寄ったらこのほうがよくて2枚、EV13.8とか、2m。さすがに暗くなったのでもうお開き。もっと寄ればなおいいかもしれず、結果次第ではまた来るかも。
で撤退して駅へと歩き始めたのだが、まだ日もあるのにやらないでかえってどうする、と思い返し戻って再度組み立て。この箱でこんなに対象に寄ったのは初めてではないか。EV11.9。こんなに暗いのも初。3sが2枚だったと思うが100をいくつ数えたか定かではない。これこそモノクロでやるべきだったかもしれないが、モノクロフィルムはない。むしろモノクロのインスタントフィルムだからよく見えただけで、カラーだとつまらないかも。とにかく結果次第。
ヨドにもビックにもPolaroidはなし。あちこちで払底の様子。なのにこんなに使っちゃってどうするのか。この用途の縦位置では富士では切れてしまってほとんど使えない。手持ちのPolaroidを使い果たしてしまったらどうするのか。しかもこんなじゃかすか切っちゃって。
でもどうにかするのだ。これまでもそうしてきた。といっても、インスタントフィルムに手を加えることはできないし、どうしたものか。そこではたとひらめいた。撮影位置がずれていて困るなら、ホルダごと動かしちゃえばいいじゃないか。フィルムホルダ挿入部の切り欠きの溝を手前にもう一本作り、尻が余った部分はモルトプレーンで埋めればいい。オフセット量はテストで割り出せば、Polaroid545ホルダより実際に近い結果が得られるようになるのではないか。どんなもんだ。これでPolaroidが消えても怖くない。富士インスタントフィルムが消えるのは怖いけど。
今日こそ日光に行くべきだったかと最初は思ったが、3件4点も撮影できて大成功だった。帰ってきて気象庁webを見たら奥日光も今市も13時から16時まで日照がほとんどなかったらしい。大正解だったわけだ。