[暗室][写真について]

まだ使う。ウナギのタレ。褐色の毒水。こうなったらとことん使ってやる。
昨日ちくちくしたネガを引き伸ばし機にかける。倍率は大全紙相当。やっぱそうでなきゃ気分が悪い。
かつて、階調とサイズと面質の三要素が写真を規定すると述べたが、階調とサイズをはかりにかけて、サイズをとったということだ。この大きさでなければ、という意図が先立つ。これまで使っていた印画紙にそのサイズがなければ印画紙を変更せざるをえず、新しい紙でフィルター値を出し直す必要があるし、ことによると期待した色と階調が出せないかもしれない。それでも、ここではサイズを優先する。色なんてあとからその条件の枠内でどうにかすべき要素にすぎない。だいたい照明によって色の見えは変わるし、体調によってさえも違って見える。絶対的な色などない。そもそも意図する色なんてのがあやふやで、作業のなりゆきでたまたま出てきた色を、さも元からあった意図通りであるかのように思いこんでいるだけのことだ。だがサイズはそうではない。そして少なくとも展示で写真を見る限りにおいて、サイズは絶対的なものである。むろん周囲の環境次第で印画紙の大きさは異なった印象を与えるが、そこにある印画紙のサイズそのものは変わりようがない。そんな思弁以前に、現実の作業の段どりとして、原板に対してまず引き伸ばしサイズを決めないことにはプリント作業に入れない。
30℃90s。間違いなくスポット修整を加えた箇所を焼いているはずなのだが、出てくるのは黒いホコリ跡ばかり。これはひょっとしてちくちくが足りなかったんじゃないか。2006年春に撮影したヤマトロジスティクスのネガに大物が出ているので修整して焼いてみるが、ほぼ黒いまま。キツツキのようにケンシロウのようにもっともっと突かねばならないようだ。前回、どこが修整部分だかわからなかったのもそのためだろう。そこで打つべし打つべしと丹下段平のごとくとなえながら突き続けるも大差なし。これはやはり教えられたとおり乳剤面側に施すのだったかとやり直すと、突いた部分のまわりは乳剤が固まって白くなるのだが、突いた部分はスヌケに近くなってなお黒くなる、結果イボイボ。トータルであまり平均濃度は変わらない気がする。たしかに細いホコリだとフィルムの厚みより細く、ベース面側で修整した場合、レンズから見ると斜めになる周辺部では乳剤側のホコリ跡と修整部分に視差が発生してしまう。だから微少面積に手を加えるスポット修整は乳剤側からのほうがいい。それにしても結果がよくない。充分に遮光できていない。掘っては焼き、また掘り、そして架台の上にキーボードを置いてこれを書き、と何度もやっているのだがなかなか思うようにいかない。そういえばこんな修整跡を見た記憶がある。かえって目立ってしまっている。通常のネガと違ってホコリ跡がでかすぎるからこうなってしまうのだろうか。この技術さえ習得すればもうホコリなんて怖くないと思っていたのだが、見通し甘かったろうか。どこか間違ってるんじゃなかろうか。