4日目

爆睡し出遅れ。やたらと混んでいる。鑑賞目的ではない客で。でも待ち時間のひまつぶしに展示やファイルを見ていく人も多く、鑑賞を目的とはしていなかった人々に見させるしかけとしてときどきはおもしろいかもしれない。ギャラリー専業の空間は鑑賞対象物にとっての保護区ではあるのだが、それは世間の冷たい風から庇護してくれる一方、世の人の目から隠される隔離区域でもある。人を手持ち無沙汰の状態に置かせて無理矢理鑑賞させるという意味ではガチンコ勝負のこういう展示もたまにはいい。興味のない人の視線に否応なくさらされる試練。いつもこうだったとしたら荒涼としすぎているけれど。場所自体はガチンコとか荒涼さとは対極にあるしつらえであり、それがなおさら試練の度をいやます。
写真やファイルを見てくださっている人が、関心を持って見ているのか、その場しのぎで見ているのかが判断しきれず、疑問を呈している人々に説明などすべきかどうか迷う。特に2人連れの客に話しかけるのはかえってお邪魔なような気もするし。
もうスポッティングというありさまではない。グレーでおおまかにつぶしたところで打ち止めとするか。ほとんど空部分なのでグレーでも違和感少ない。Kodak Retouching ColorのNuetralだが、乾くと色に分離する。岩石のように、赤やら青の色素が混ざって見える。成分表を見るとAnthraquinone bleuとYellow dye、Croceine orangeとがかけあわせてある。まさしく墨に五彩あり。本来の墨の五彩と異なり、より直截に彩度がある。モノクロ用と違い、レタッチ染料までが印画紙の発色と似たような加法混色の原理にのっとっているところがおもしろい。経時変化についても、印画紙の色素同様にそれぞれの色の褪色が進行する度合に差があるだろうから、時間がたてばグレーがいずれかの色相に偏っていくと予想される。にもかかわらず、墨のようなニュートラルな色材ではなくこのようにしてあるのはなぜだろう。他の色と混合したときになじむように、あるいは印画紙に乗せたときの光沢などが他の色と変わらないように、だろうか。Anthraquinone bleuはBlue、Yellow dyeはYellowをそれぞれ構成する色素、Croceine orangeはAzo Redと合わされてOrangeになる。Anthraquinone bleuとYellow dyeを合わせたのがGreen。いずれも、おそらくは写真用として使える限りのもっとも高彩度の色素だろう。
早くも頭は次の撮影へ。へんちくりんな着想がまたも湧いて出る。でも11月末までは無理。これから天気もよくなっていくのだろうか。またおあずけ状態か。
さしあたり中断したままの新型器をどうにかしたい。これなら雲が出ていても撮れる。コンパウンドか。あとは箱の縮小、場合によっては作り直し。フジインスタントフィルム45のカラーをジャンクで2箱入手したのでテスト撮影の効率が格段にあがる。
さらに放り出してしまっている次世代器も、続けるかどうかを明確にするためにも、目鼻くらいはつけたい。すぐにもかかれるのはEbonyにリンホフボードの次期主力器。ブローニーフィルムでできるので金もかからない。数も稼げる。荷物も小ぶりですむ。Manfrottoの軽い三脚を買っておくか。SuperAngulonを使うのは晴れて晴天続きになってから。そういえば某店にあったトヨVX125Rはもう売れちゃっただろうか。2回目に行ったときには先客がいじっていて触れなかったのだった。しばらくお休みで確認できない。あれはいいカメラ。けっこう使い込んであるようで状態はさほどよくなかったが、9万は安い。一時期はヤフオクでかなり高値で取引されていた。それだけ人気があったのだ。広角レンズをフィールドで使う人なら、あのカメラの価値がわかるだろう。こうなるんだったらSinarよりもあっちのほうが適切だったかもしれない。何しろ軽くてコンパクト。パッケージングが楽で、たぶんSinarF2の半分で収まる。しかも精度や剛性はSinarF系より高い。SuperAngulon の2本を使うために買おうかと迷っている。SuperSymmar110mmにはおそらく足りない。Apo-Nikkorはまだ先。構想だけはふくらむ。