休みができて天気も悪いので、注文を受けながらずっと先送りしてきた2002年のネガをプリントしようと思い立つ。こないだの個展でお越しいただいてたいへん心苦しかった。このネガはEbony4x5の中ではもっとも成功した、そして展示に耐えるうちではもっとも後期のもの。佐倉市美での展示の最後のカット。コンポジションとしては不満もあるし、フィルムが切れて連続枚数も少ないのだが、それでもたぶんいちばんうまくいった撮影。だから選ばれたのだろう。決してまだやめたつもりではないのだが、気象条件からしても、本人の意欲からしても、今後これ以上の結果が得られる可能性は乏しい。
漂白定着液は18日に希釈して以降ほっぽりっぱなしのを使う。もっとも浮きぶたはかぶせてあったのでほぼ密栓保存に近い状態。発色現像液は大五郎ボトルで貯蔵しておいたのを洗ったバットにあける。どちらもCP31で使うために2リットル程度残しておいたのだが、当分プリントはできそうもないし、このままでは開封ボトルに入れたままいつまで保つかのテストにしかならない。みすみす無駄にするのもなんなので、補充液として使っていくことにする。
今回の展示については、プリントにスリ傷が多いという反省がある。持ち運びでついたものもあろうが、処理過程でのスレが多いと思われる。対価をいただいて渡すプリントではこれは解決されなければならない。印画面を処理時にはつねに上向きにし、バットを移動させるときにバットに接触させないようにし、あとは水洗・乾燥時に慎重に扱えば、三日月状の折れは扱いかたによっては発生するにせよ、基本的にスリ傷はつかないはずである。あとは移動・保管の際に合い紙などでの保護を徹底する、またはブックマッティングして何ものとも接触しないようにする、そうすればすり傷のつく機会を排除できる。どこにも接触させないですむのがプロセッサ処理に対するバット現像の長所であって、ていねいに扱えばプロセッサよりも印画紙へのダメージは減らせるはずだ。ただ、印画面を上にすると、印画紙の一部分が液から浮いてしまって、現像ムラや定着ムラが発生する懸念がある。特に今回の処理では、浮きぶたを置いたときに空気と接触する液面積を少なくするため、液量を8リットルと抑えめにしたのだが、そのため液面が低く印画紙が浮きやすかったのではないかと思われる。補充して10リットルにし、投入時に充分攪拌すれば現像ムラは防げるのではないか。
この使用液を密栓貯蔵しておけば、プロセッサには使えないけれどバット現像なら当分可能だろう。停止液は1カ月近くさらしっぱなしで、黒く濁って油が浮き、ラスター状に変色しているし、さすがに交換。発色現像液と漂白定着液のどちらに混ぜればいいのかわからず、外に放置してあったポリタンクを拾ってきて廃棄。発色現像液用の灯油ポンプを使うのは、発色現像液の貯蔵液を汚染してしまうので、漂白定着液とポンプを共用。
漂白定着液は常時浮きぶたをし、印画紙の投入時のみつっかい棒をかまして開けていたが、これも印画紙をこすってスリ傷の原因になると思われるので、発色現像液同様処理時には基本的に開けておくことにする。浮きぶた置きは、短辺方向がだいぶ狭いがライオンの全紙用バットでどうにかする。
まずはセットしたままの多摩川の別ネガから。これも買いたいという人がいたのだが、ほんとにそのつもりなのかよくわからない。しかし、展示したネガは空のムラが気になっていたこともあり、このネガにはムラがあるのかどうかの確認として焼いておく。個展も終わって、この先展示のあてもあるかどうか定かでなく、無駄といえばまったくの無駄なのだが。
あとはこれまでに確立した処理工程でこなせるはず。とにかくやってみよう。