朝から雨。どうするかな。
他の客は中高年男性が大半の様子。靴箱の靴の有無で在室かどうかわかる。平日9時すぎなのにほぼ満室。雨だから仕事ないんだろうか。退室は9時までだが10時までいいとのこと。15時までフロントの人がいない。シャワーは10時から22時まで。朝は使うなってことか。でも使う。シャワーは新しくてきれい。公衆トイレの水のように、押すとしばらくはお湯が出る方式で、出しっぱなしにできない。カランがない。9時開店の玉山とかいうスーパーのシャッターが開くのをくぐって客が入っていく。安い。うどん一玉20円。白飯とか炊き込みご飯とかかチヂミとかみんな100円。98円のイワシの押し寿司と28円の500mlPET飲料購入。果てしなく続くアーケード商店街のほとんどの店はシャッターが降りている。そういう風体のおっさんたちがうろうろ。もちろんこちらもそういう風体でうろうろ。ネットカフェなんて影も形もない。
ビリケン像はあちこちにあるが、やってもやらなくてもどっちでもいいというところ。
天王寺に出てあちこちにあるメディアカフェポパイにはじめて入ってみる。LANケーブルをつないで固定IPアドレスを入力。接続はしているのだがウェブにもメールサーバにもつながらない。Ubuntuだともうお手上げ。ここは使えないな。
阿倍野橋から吉野行き急行。ここはほんとの山奥。でもこんなところでも山が切り開かれ、多くの民家が建てられている。あれだけの人口をなんの産業で支えているのだろうか。観光だろうか。でも年中従事できるわけではないし、全人口が観光で食えるとは思えない。それに市街地は観光の中心から離れている。葛か。特産品ではあってもそんなに関連業従事者がいるとも思えない。それを含む農業ということか。林業はあるだろう。橿原神宮あたりから単線で有人改札。駅前には土産物屋が3件くらいしかなくさびれている。
時間もないし山道なので無理せず機材をコインロッカーに預けたほうがいいのではないか。これまでたぶん一度も使ったことがない。高さ50cmくらいの大きいサイズが400円は安い気がする。どうするか迷いながら箱だけ出してカメラバッグを入れてみるとギリギリ入るので使うことにする。画期的な贅沢。荷物をただ放り込んだだけで鍵をかけなくてもたぶん大丈夫だろうけど、たぶんじゃない可能性が現実になったらたいへんなので400円投入。三脚は入らず、持っていくことにする。ケーブルカー乗り場に行き、片道350円ならいいかと乗る気になったところでちょうど発車してしまう。待ってくれてもよさそうなものなのに。昨日の乗り遅れといい度重なる不品行の報いだろうか。あんまり贅沢するなとのおぼしめしか。やむなくその脇の車道を7、8分登ったところで、コインロッカーに金を入れただけで鍵を閉めていなかったことに気づく。それじゃ金払った意味がないのでとって返す。ケーブルカーに乗っていたら戻れなかった。なにしろはじめて使うので仕組みがよく理解できていない。戻って、雲台を外してロッカーに入れ、三脚のほうは駅舎の影に隠しておく。あのボロいGitzoなら持っていく人もいないだろうし、もし持っていかれても被害はそう大きくなく、たぶんそこらで代わりは調達できる。ちゃんと鍵を抜いて再度登坂。かえって身軽になってよかった。今度は舗道でなく登山道。けっこう登って金峯山寺仁王門。斜面に建ち、古くて豪壮。さらに進み金峯山寺蔵王堂。あんまり大きくなく拍子抜け。東西本願寺のほうが大きそうだし、知恩院御影堂だってもっと大きいだろう。案内をよく見たら、「木造古建築としては東大寺大仏殿に次ぐ大きさ」とある。なーんだ。古建築っていつからか知らんけど。それも奈良県内の話だったりして。古いことは確かに古い。造作も手がこんでいる。でも世界遺産ってほどのものか。やっぱり日本の国連への拠出金が多いから選定への発言力が強いとかあるんだろうか。そこから如意輪寺まで1.9kmというが、せっかくなので行ってみることにする。金峯山寺あたりから、谷をはさんだ向かいの山の斜面に仏塔があるなと思っていたが、それだった。谷の底まで降りて小川を渡り、また登る。紅葉のまだ赤い落ち葉が積もった山道をはるばる歩いて、ようやくたどりつく。やや荒れた桧皮葺きの小さなお寺。奥にもっと大きい展示館やら本坊やら後醍醐天皇陵があるようだがもう充分と引き返す。川を渡ってしばらく登ったところで、あの塔が見えた。しまった見落とした。でも時間がなくこの先にもあるので戻れない。あの、山の斜面にたたずむ塔にはけっこう惹かれるものがあり、もう行くこともあるまいしちょっと残念ではあるがあきらめる。当初はこのへんで戻って吉野神宮に行くつもりだったのだが、もっと山奥に行く道にすこし入ってしまい、せっかく来たのがもったいないからと引き返さずにさらに奥へ進む。この元とり根性がいつも裏目に出る。途中でやめといたほうがいいかもとうっすら思いながらも、とにかく意地で1.7kmの山道を延々と登って吉野水分神社。社門が見えたときにはさすがに高揚した。大きい、と思ったがよく見るとそうでもない。門は立派。17時にはまだ20分くらいあるのにすでに閉門している。斜面に建てられているのか、境内の向かって左側が木で支えられている。この先の金峯神社は無理。さらに奥に、山頂にあるらしい大峯山寺はもとから無理。これでよしと戻る。17時に鐘がなったと思ったらスピーカからの放送だった。竹林院は宿屋と一体化しているのか。よくわからない。庭園は有名だと謳われているが堂宇は小さい。桜本坊はよくわからず。喜蔵院は宿坊だがユースホステルらしい。お堂は小さい。勝手神社は閉まっていて入れないがたいしたことなし。大日寺は暗いし飛ばす。弘願寺は民家。さて吉水神社はあとでと飛ばしたのだが、17時で閉門。20分過ぎている。先に行っとくんだった。入れてくれないかな、と思いながらうろうろするも固く閉ざされており、帰ろうとしたら「何か用ですか」と声をかけられた。「お参りできればと思ったんですが」「5時までです」「東京から来たんです」「そうですか」「お参りしたかったんですが」「5時で閉門です」。2度と行くか。もっと粘れば入れたのかも。でも元は金峯山寺の僧坊らしいし、所詮はただの書院で、これも世界遺産だけどたいしたことなさそう。金峯山寺ではほら貝を吹き太鼓を叩いている。山岳仏教らしい。高尾山でもそうだった。ここが修験道の根本道場とのことなので発祥の地なのだろうか。そういえば参道の店でほら貝が7万とかで売られていた。ここも高尾山同様権現が本尊らしい。道の先というか入り口なのだが黒門。さらに降りていき、吉野駅吉野神宮への分かれ道でどっちに行くか迷っていたら、右が吉野駅ですよ、帰れますか、と声をかけられる。さすが観光客慣れしている、と見ると剃髪で和風の黄色系の作業着らしきものを着た若い男。でも店の人っぽくて、僧侶なのか俗人なのかよくわからない。吉野神宮はもう参拝できませんかね、と尋ねると、遠いしもう暗いし無理やわ、との答え。確かに、そこから2.2kmの表示。閉まってますかねえ、と聞くと、わからないけどそうかも、と。あきらめて帰りしな、また来てや、と言われるが、申し訳ないけどもう行かないだろうなあ。駅への道を降りていく。空には暗い雲があり、ほとんど真っ暗。道の電灯が頼りだがところどころない区間があり、暗くてけっこう怖い。うねうね蛇行して吉野駅着。ケーブルカーはとっくに終わっていた。時刻表を見るとまだ便はあるはずなんだが。三脚は残っていた。どこに泊まるか。大阪か奈良か。明日天気がよくなりそうな気がして、結局また吉田寮に来てしまった。手続きしようとすると女子学生に細切れでも7日までですよと官僚的に言われる。いちいち細かいなあ。まあ学生でもないのにこんなながなが泊まってるやつはうさんくさく思われても無理はないし、実際そうなんだろうけど。