吉田寮。30代半ば前後で知識人的相貌の男性がいて、某全国紙の支局の記者だという。梶井基次郎がここかここの前身に住んでいたとのことで、地方欄の記事のために取材で泊まっているとのこと。たいへん物腰柔らかで、偉そうなあっちとはまるで違う。そういえば研究室の先輩でその新聞の大阪の整理部に入った人がいたな。名前も忘れたけど。当時から経営が厳しいということになっていた。新聞社のこと、地元のこと、けっこうざっくばらんに話してくれる。
あちらのことばかり話させてもなんなので、素性を明らかにするという意味で最近の写真を少し見せると、6x12のほうに興味を示す。「これは現代美術ですか」「ものの見方を問い直すとか?」。お見通しだ。世間一般でそういう受けとりかたのフォーマットができあがっていて、お約束化しているということか。この記者がたまたまそういう方面に案内があったにしても。
朝出がけに、たぶん使わないだろうということながらも、寮で交流を持った宿泊者ということで、一応部屋の中で顔を撮影される。そうこうしていて出発は8時半。晴れだが南に雲。ところどころ雲。バスを乗り継ぎ9時過ぎに東福寺に着いて三門へ構えているうち雲が広がってくる。またもダメな雲行き。今日はいけると思ったんだけどな。1年中でもっとも寺院建築の撮影に適した日。それでも朝から参拝客はちらほら。境内でこうして日誌。さすがに境内には無線LANの電波なんぞ1本も来ていない。
12時。巻層雲がたなびいている。一旦撤退。あとは様子見。
昔からの知人と会う日取りを決めようとして、天気まかせなのでどうなるかわからないという言うと、計画的に旅行してないなあ、昔から行動に計画性がなかった、と告げられる。確かにその通り。すっとなりゆきまかせの出たとこ勝負。
午後はもうすっかり曇。断念。こうして日々は無為に過ぎてゆく。
ここが潮時だな。やりとげるまでは帰れないけれど、天候が整って完遂したら、戻って次に進もう。これは先が見えた。早くまとめてけりをつけ、次に移ろう。それだけが沈まずにどうにか持ちこたえる唯一の方法。
電源と暖房が確保できる無料の場所を京都のあちこちに見つけた。1月に来たその日に昼寝した京都市役所1F入り口右の「ふれあい待合室」かなんかいうところ。京大吉田食堂の柱の裏。吉田キャンパス近隣のコインランドリーは暖房がないけど無線LANがつながる。でも、今回のが終わったら、そういうのももう用済み。
明日も天気は悪そう。こうなったらもう待ちつづけるしかない。またネカフェへ。