8時過ぎに寝カフェ出発。雪。東山は白い。またも吉田寮に歩いていき荷物をデポ。泊まったほうが楽な気もするがいたしかたなし。「片づけましょう」とか放送していて、ハンカチでマスクをしはたきをかけている寮生がそこここに。大掃除デーらしい。一人が荷物をデポしてある部屋に入っていき何やら検分している様子だが、ここで動かすとかえって怪しまれるのでそのまま出発。気づかないだろう。叡山電車で鞍馬へ。北のほうはすっかり雪が積もっている。山の稜線に電波塔が見える。あれが昨日通ったところか。異国語を話す若いアジア人の一群が雪景色にカメラを向け歓声を上げている。南の出なら雪なんて見る機会はそうそうないだろう。いい時に京都に来たね。紅葉よりよっぽど新鮮なんじゃないか。彼らは鞍馬の手前の貴船口で降りる。どこに行くんだろう。観光名所は特になさそうだが。その意味は降りてわかった。
実は1月にこちらに来たときからずっと拝観料を払っていない。高校の修学旅行は別として、写真撮影のために自分の意志で入場料を払ったのは鎌倉大仏名古屋城だけ。関西の寺には一円たりとも払っていない。ではどうやってきたのか。入り口からじろじろ覗いたり、まあいろいろと。薬師寺三千院寂光院は三脚使用不可でどのみち撮影できないんだから金出して入っても無駄なので素通り。神護寺は閑散期なら三脚が使えるが、門の手前から覗いて、まあいいかと戻ってきた。せっかくあんなところまで行ったのにと考えちゃったら連中の思うつぼ。往復の交通費考えたらたいした出費じゃないけど、払ったら負け。京都にずっと暮らしている人にこの話をすると、それはもっとやったほうがいいと言う。京都の人は内心では寺を嫌っているのだそう。あいつら自分でつくったわけでもないのに先祖の遺産で儲けてでかい顔して税金も払わないで、と京都の人が集まるたびに悪口になるのだとか。その言に力を得てずんずんやってきた。1月に来た時には必要があったら払ってもいいかと思っていたが、今回はせっかくここまで払わずに来たのだから、意地でも払わずに通す、という意気込みがあった。ここの寺は階段を上がると風格ある仁王門がそびえていてその先に料金徴収小屋がある。200円。今回もどっからか侵入できないかと探すが、周囲が山でまわりこめない。一般道とつながっている様子もない。コースをぐるっと回ると貴船口駅側に抜けることになるが、たぶんそっちには徴収所はない。そうかあそこで降りた彼らはそれ狙いで貴船口から入山したんじゃないか。でもそこまで歩こうにも結構ある。電車代払ってわざわざ行くのもなあ。それに拝観料ではなく「愛山料」とある。広い山の境内を維持する費用は入山者が負担するのが筋だろう。200円なら安い。と考え禁を破りついに払ってしまった。ケーブルカー100円は破格の安値設定だと思うが、さすがにそんなものには乗らない。しかしつづら折りの坂を上がっていった先の最大の見もののはずの金堂は鉄コン。あんな山奥なのに焼けちゃったんだろうか。阿吽像は最近のものでやたら僧帽筋が発達し怒り肩。不動堂とか他のお堂も大したことなし。はてに国有林の表示。なんだそりゃ何が愛山料だよ。維持管理費は国が負担してるってことじゃないか。金返せって心境。いや200円でセコいこと言うなとかって金額の問題じゃないんだ。国宝指定されて国庫援助もある国民の共有財産であるはずの文化遺産を観光寺院化して俗化させてしまい、あざとく小銭をまきあげようという商業主義に加担したくないのだ。でもついに払っちまった。残念。途中でさっきのアジア人たちと思われる数人とすれ違う。やっぱりあちら側から入山するとたかられないのか。ヨーロッパ人もあちらから来る。あんたらやるな。それにひきかえこっちはなんて甘ちゃんなんだ。外人観光客に出し抜かれるなんて。案の定西側の徴収小屋は無人で入り放題。たいへんシャク。
途中で雪が降り出す。樹齢の長そうな木にはしめ縄が巻いてある。山岳信仰の中心らしい。でも修行してるんだろうか。高尾山のように毎時ほら貝と太鼓で勤行、という様子はない。奥の院は幕が張ってあってちょっといいけど、貴船神社もしょぼいし他の堂宇もどうというほどでもない。商業ずれはさほどしてなさそうだけれど、建物を見る限りは行く必要のない山。14時頃叡山電車で帰る途中に晴れてくる。京都精華大前駅木野駅近くの妙満寺あたりに行こうかとも思ったが、1月にだいたい行っていた。それに晴れるかもしれない。結果、15時にも積雲があり、16時半でも上天の雲は消えたが遠くに残っていて撮影はどのみち無理だった。
吉田寮に戻ったら、カメラバッグが動かされて、東京からなんとかして食べようと持ってきたピーマンが上に置かれていた。もうデポは無理か。泊まっていた部屋も整理されて畳が見え、置きっぱなしだったカバンがソファの上に置かれていたので回収。ホームレス型家財一式携行スタイルに戻る。