朝から曇。前夜寝カフェに入ったのが早かったため6時に退出。カバンを忘れてきたことにしてデポ。連絡してないけどちゃんと確保されてるんだろうか。予報は軒並み雲マークだが晴れるかもしれない。日が昇って大気の状態が安定してからでないとわからない。京都市役所前から地下鉄東西線に乗って寝ながら様子見。2往復くらいしたところで8時、京阪山科で西まで雲が広がっているのをとくと確認し、大津線で滋賀へ。途中で路面電車になり、信号で止められる。でも市街中心部からそう遠くないと思うのだがさびれた雰囲気。琵琶湖が見える。ちゃんと見たのははじめてか。東海道新幹線から見えるのだったか。朝はワンマンで途中は無人駅。唐橋前は9時まで無人
石山寺駅から川沿いに歩いて、どこまで琵琶湖でどこから川なのかわからないのだが、とにかく石山寺。東大門は堂々。入山料500円。塔多い。本堂は懸造り。紫式部にゆかりがあるらしく内部に紫式部ということになっている異様な人形がある。銅像もある。光堂は最近の築だが木造、これも懸造り。白くてきれい。ちょっといいかも。ちょっとだけ。
石山線を戻るが、一駅先に建部大社なるものがあったと地図を見て気づく。大社か。でもこれなら徒歩で充分行けた。降りるかどうか迷っているうちに発車してしまう。この電車は扉がすぐ閉まる。あとで調べたら歴史のある近江国一宮。これは行っとくべきだったか。社殿が小さそうなのでいいだろう。
三井寺。志納金500円。境内は広い。高台にあって琵琶湖が見晴らせる。観音堂はうしろの屋根の瓦が1/3くらい崩落していて、全体にかしいでいるような衰えた様子。途中に最近のものらしい仏像がいくつか。構えてみるが頭が大きくなりすぎ。一切経蔵は高麗から伝来したという仏教の経典すべての版木が納められた、回転式の書庫のようなもの。圧巻。『2001年宇宙の旅』のHALを思わせる。知の母型の集積にただただ圧倒される。金堂は桧皮拭きでゆったりと落ち着いている。三井寺は桧皮拭きの堂宇が多い。雲は出ているが、撮影するか? でも、すでに正月支度ははじまっていて両脇にテントが建っており、各柱に木の棒がくくりつけられていて夾雑物が多く見送り。ひょっとしたらまた行くかも。建物がみな穏やかで、見た時の天気の影響もあるだろうけど、延暦寺よりこちらのほうが好ましく思える。
円満院門跡は入りかたがわからず。三井寺の敷地内なのか。一般の人間は入れないのかも。大津市歴史博物館は遠目にはプレハブの大きな工場。法明院は遠いので割愛。
近江神宮までは2駅なので歩いていき、道々食べ物屋を探す。ところが定食屋はおろかコンビニすらない。県庁所在地の市役所のある大通りだというのに。トコトコ歩いて皇子山公園近くでローソンとファミマがほぼ向かい合わせ。もっと散らせばよかろうに。さらに歩き近江神宮、鎮座68年。昭和天皇が建立したとか。「こんりゅう」なんていうと平安期の天皇みたいだな。門は朱塗りが鮮やか。狛犬も雨風で削られてない。社殿は新しいがちゃんと木造。境内は広いがこじんまりまとまっている。南滋賀から京阪電車。駅間が短いとはいえ4駅は長い。わずか160円。時間を考えれば乗ったほうがいい。
一眼レフカメラを持ち一人で神社仏閣を回っているらしい30前後の男性が2人はいた。休みだから遠出したのだろう。みな痩身で内省的な面持ち。
終点坂本。滋賀院門跡は庭園の拝観料500円、その先に霊山院、誰ぞの墓陵。奥に天台宗務庁。いずれも延暦寺の一門。さてお目当ての日吉神社、と思ったら石鳥居の先に徴収小屋があり300円とのこと。神社で金とるとははじめて見た。延暦寺と関係あるらしいからそのためだろうか。金払うくらいなら見ない。日吉東照宮は小さいだろうしまた日光のミニチュアだろうから飛ばそうと思ったら極彩色との表記ありこれは見逃せないと坂を昇る。機材一式携行しているのでだんだんつらくなってくる。「ここまで来たらもう少し」とか「ついでだから見ていこう」などといった看板であおってくる。これだけさんざん客寄せしといて、引き返せないところまで登ってみたら有料と突きつけて来たりしたら怒るぞ、と思ったら200円の表示。小屋に人も詰めているが無視してずんずん入る。何も言ってこない。ちんまりとうらさびれた社殿。極彩色ってのは、まあ昔はそうだったんだろうなとしのばれはするというだけで、ずいぶんすすけている。しかも色づかいこそ派手だったろうが、あまり描きこまれておらずどこか散漫で、やる気か才能か金か全部かが乏しかったのだろうと思ってしまう。日光より先にできてモデルになったと謳われている。その先に坂本側から比叡山に登るケーブルカー駅。距離も眺めも日本一とかある。だから片道840円という強気な運賃になるのか。15時なのに待っている人が数人いるが、これから登ってどうするのだろうか。着くころには日没間近。宿坊に泊まる人々だろうか。数泊して御来光を拝むとか。
日吉神社を素通りして西教寺へ。坂を登りきったところにあり、山道脇には塔頭が立ち並び、大寺院の風格を醸す。金堂は障子張りで鎧戸が上開きに開けてある。歴史ある寺でもガラス張りになっていてがっかりすることが多いが、ここは立派。聖徳太子の創建とも伝えられ、比叡山焼き討ちにまきこまれたが明智光秀菩提寺にしようと再興したのだとか。明智一族の墓もあるらしい。延暦寺の山門派、三井寺の寺門派に対して、天台宗の盛門派総本山として近年独立したという。延暦寺ほどの豪壮さはないが端正。金堂前にある、近年作らしい和やかな石仏は悪くないが背景がすっきりせず。道路をはさんで向かいの敷地には聖天堂など、あんまりさえないけどお堂が多数。三井寺にくらべれば規模は小さいが、演出をこらせは拝観料をとれる構えはあると思う。石山寺が金をとるのなら、電車の便はほぼ同じで近隣に日吉大社があるこちらが金をとってもおかしくない。きっと、観光寺院化をいさぎよしとしなかったんじゃないだろうか。好感が感じられるお寺。ひょっとするとまた来るかも。
夕方晴れてくる。京都方面の空を気にしながら歩く。でも今さら間に合わないんだが。千体地蔵尊は近隣のお地蔵さまを集めて野ざらしで並べただけ。ひときわ大きい地蔵が中心にある。みな侵食が大きく、のっぺりしている。そして日吉大社東宮。本殿は古く国宝。日吉造りというここにしかない様式とか。朱塗りはかなりはげている。古い神社は、日本最古の本殿という宇治の宇治上神社もそうだが、拝殿やら幣殿でかこったりせず、本殿を直接拝める。うしろ側にもまわりこめる。鰹木やらなんやらもない。こちらのほうが神社本来の建築様式で、いろいろ大仰に囲い込んだり飾り立てたりする習慣は、寺との対抗上あとから日本固有の様式として案出された擬古的なものだろう。狛犬はやたらと寄り目。西宮があって他にも大きく古い社殿。神社としてはかなり建物が多いほう。文化財としての価値が高いだろうことは素人目にもわかる。これだけ充実した神社は今まで見た中にはなかったのではないか。これは確かに維持費がかさむ。門は朱塗りで高い。三角頭巾のついた鳥居は一つしか見つからなかった。
京橋に出て知人に会う。修行僧のような生活だと言ったら妙に納得された。世間的な価値軸では理解できない衝動に突き動かされる人々はいつの時代にもいて、ただ、そのときどきの時代の流れに応じて、その現れかたとしての行動様式が違ってくる。日本での仏教の全盛期は遥か昔であり、現代美術なり写真の盛りもとうに過ぎている。この先、そうした人々がとるスタイルはどんなものだろうか。
京橋の場末ーな寝カフェ、Manboo!に投宿。東京でもよく目にするが、ネカフェの前段階であるマンキツのはしりだった記憶がある。設備は古い。身分証明見せずに有線LANにつなげる。いいんだろうか。ただSTMPのメール送信はできず。このへんは同じチェーンでも京都より安い。オープン席には見るからにネットカフェ難民な人々。腹が出て頭髪の乏しいおっさん率高し。あとは使えなさそうな金髪男とか。西成ドヤ街ホテルよりは一回り年齢層が低いが似たものがある。おっさんばっかりかと思ったらまともっぽい若い女性も泊まっているらしく、男女共用のトイレで鉢合わせとなる。ここにしばらくいたらすさみそう。1泊でもかなりすさむ。