ようやくプリント。去年の貯蔵使用液をさらに使い回す。500mlPETに入れてある薬品をバットに注いてみるが、発色現像液と漂白定着液の区別が見た目ではつかない。どちらも褐色に変質している。現像してみたらどっちも漂白定着液だった様子。めんどくさいのでちゃんと中身がわかる大五郎ボトルに入っているのを使うことにする。ただこのボトルは材質が厚くて変形しにくいため、へこませて使った分の空気を追い出し、密閉保存するというのが難しい。そうすると内容量の半分は空気となるから、酸化が進んで残液は長くは保たない。どのみち疲弊液なのでそこまでけちらずともよかろう。水槽ヒーターをまだ導入しておらず、バット現像だと暖房で室温調節して液温を上げなければならないのだが、このところ気温が低く貯蔵液も16℃くらいのため、26℃くらいまでもっていくにはかなりの時間を要する。そこで、底の沈殿物が少ないのをいいことに、この疲弊液をCP31にぶっこんでみることにする。こんなむちゃくちゃやってるやつはそうそういないだろうなあ。液を注いでから、OrientalのRA-4互換薬品は発色現像液に独特の甘いにおいがついていて判別できるのだったと思い出した。しばらくやってないとこれだ。ヒーター内蔵なのでしばらくすると35℃になる。
6x6判と6x7判なので、レンズはもらったEl-Nikkor80mm5.6をはじめて使ってみる。63mmと105mmのあいだはたぶんこれまで使ったことがなかった。6x7も105mmRodagonで焼いていた。ひょっとするとレンタル暗室で90mmくらい使ったことがあったかも。El-NikkorとRodagonとComponon-Sが混在しているが、引き伸ばしレンズなんてどれもそうは変わらない。色味なんてネガだしまったく関係なし。もっとも撮影レンズの描写の違いだってろくすっぽわからないばかりかさっぱり興味がない。
だいたい再現的視覚メディウム、つまり写真とかいわゆる映像とかのレンズによる結像を再現するメディウムは、様式の振れ幅が狭すぎて、あたりまえに使っていたのではどれも見た目が似たり寄ったりになってしまう。誰がやっても大差なし。そこで止まったら先が続かなくなるので、進むためにひとはなんらかの展開を講じようとする。そこで二手に分かれる。再現における忠実度を放擲してしまうひとと、固持し続けようとするひとと。前者は、写真が対象の忠実な再現であることに重きを置かなくなり、どんどん新たな仕掛けをこらして目新しい見た目の様式を追求する。ピクトリアリズムをはじめとする写真の改変をよしとする立場。後者は対象再現の忠実度を下げるのはもってのほかと主張し、画像内容自体の様式を更新しようとする。それができる間はいい。しかしたちまち陳腐化し、再現の忠実度にまつわるレヴェルの様式の差異に矮小化されてしまいがちである。その行き着くところは、やれレンズの描写がどうだとか、印画紙のトーン再現がどうだといった話となる。あとは、部外者にはほとんど意味をなさないような微細な画像内容の傾向の違いを過大にとらえて深読みすることとなる。それがf64以降の立場。とはいえそれは大判写真や自然風景写真だけに限らない。ストレートフォトを標榜するひとは基本的にそうだ。そうした立場を否定するものではないし、そうした態度によって価値ある写真がかつてつくられていたことも認める。ただ、もはやそこに新たなものができる余地が豊かに残されているとは考えにくい。閉じた内輪の話に終始するだけではないかと思う。むろん、前者がすべていいというつもりは毛頭ない。フィルター効果に頼りきった、およそ安易で見るに堪えない操作的写真なんてのは昔からいくらでもあった。古典印画法などは一般に忠実度を下げて見えを変えようとするものではあるが、結局後者となんら変わるところはない。
さて結果はどうか。発色はまったく支障なし。保存性はわからんが、水洗を充分行えば実用にはなるだろう。もちろんCP31でOrientalの薬品を使うのはなんら問題ない。自現機は高温の恒温槽で処理時間も短いし投入後は明かりもつけられるしでさすがにバット現像より作業性が高い。現像の待ち時間にこうしてネットなんかもできる。バットでも充分にカラープリントが行えるし、プロセッサの準備とかたづけを考えるとバットのほうが手軽ではあるが、ある程度の枚数を焼くのであればプロセッサのほうがずっと効率的であり、それなりの対価を払って購入し、部屋の専有面積を割いて所有するだけの価値はある。ただ現状では引き伸ばし機と同じ机に載せているので振動の影響がないとはいえない。
あれほど苦労した京都奈良のネガをあとまわしにして、気になる中野のネガを焼く。行ける。これら一連の写真をなんと呼ぼうか。板もの、か。
10x14の富士AGを使い切る。これで八切相当は終わり。四切をまた買ってきて半裁すればいいのだけれど、テストピースの分がもったいないし全暗作業では失敗が多く、それ以上に面倒なのでもうやらない。今後は六切か大キャビネ。現状では4x5ネガからは5x7が焼けないので8x10になる。135mmと150mmの引き伸ばしレンズを1枚のレンズボードにいちいちつけかえるのが手間で、これじゃレンズボードの意味がない。しかしLPLの50mmマウントのレンズボードはもう生産されていない。そこで延長チューブを作ってフランジを伸ばし4x5ネガでも小倍率引き伸ばしができるようにしようかと考えている。さいわい、135mmも150mmも座金がついている。でも当分はそんななくてもなんとかなるものより撮影を優先したい。ブローニーは5x7に焼けるがどうしたものか。こないだ大量に買ったFujiUSAの印画紙は8x10ばかり。5x7は新たに輸入すると送料がかさむので、国産のを買わなきゃならない。しかしどうせならFujiUSAで統一したほうがいいような気もする。考える。