並の晴れ。空の透明度はこの時期の東京程度。
箱持って自転車でライン川を下る。スイス・ドイツ・フランス3カ国の国境が接する場所に塔があるというので行ってみる。貨物線路が行き交い、コンテナ倉庫やくず鉄集積場が並ぶその先に、ライン川に突き出した船着き場があり、その先に立っている。昨日ドイツからの帰りに何か銀色の柱が立っていると遠くから見えたものがそれだった。3国を指す板が巻かれており、先がとがっている。ミサイルか何かの兵器のようにも見えるのはどうかという気もするが。ライン川沿いには平日昼間からぼーっとしている老若男女。これはまあ荒川沿いでも同じ。ライン川の東側には工場が多い。
のちにイルフォクロームと呼ばれる、ポジポジ印画法のチバクロームをかつてつくっていた化学製品メーカーのチバがたくさんビルを構えている。あとは製薬会社のノヴァルティスがライン川の両側に渡って、さらにはフランスとの国境をも越えて広がっている。駅の近くにはやはり製薬企業であるロンザもある。製薬業の世界的中心地だというのが、この地の所得水準が全般に高い一因なのだろう。
アフリカ系やアラブ系と思われるひとも多いがモンゴロイドはあまりいない。
バーゼル中心部をぶらぶら。ミュンスターの片方の塔は工事中。古い建物。坂が多い。都市部らしく建て込んでいて現行器には向かない。
どうやら景観には写真の対象としては興味がないようだ。もっぱら建造物の外観だけを見ており、それが単純な背景を従えている対象が好ましい。街並全体が景観をなしているような場所は風景写真にしかならない。
ただ、そうした図地関係を可能にする条件としては景観がかかわってくる。ここは日本のような電柱はないのだが、路面電車があちこち走っていてその架線を建物の間にワイヤーを張って吊るしてあり、それがないところでも、街灯が道路のまんなかにあるのだが、それを浮かすためにワイヤーが道路の間に渡されている。だから電線はいたるところにある。ただ日本のように平行でなくいたるところ交わってクモの巣のようになっている。誰だったか往年の大家の写真でよく見たような風景。
地下鉄などはなく、市内の公共交通機関路面電車とバス。バスは2両編成、とでもいうのか、通常の車体がうしろにもう一台を従えていて、曲がれるように蛇腹で連結されている。2台分の長さ。路面電車にもそれに近いものがあり、曲率の高い道を曲がれるように短い車両を何台もつなげてあったりする。街中をこいつや自転車がでかい顔して走っているので、全体に移動はのんびり。あと、リヤカーとか、自転車でベビーカーを引っ張ったり、バイクがくっつけてたり、何かを引っぱって走る車輛が多い。歩行者はみな信号を守るし、自転車なども交通ルールを遵守する。車は歩行者に道を譲る。電車の運行も時刻表通りらしい。でも喫煙者が多くて歩きタバコのひとが目につく。きっちりしてるのかおおらかなのかよくわからない。
市内で派手な造作の現代建築は、目についた限りではサンクトヤコブホールとその向かいのショッピングセンター、シアターバーゼル、ジャン・ティンゲリー美術館、ノヴァルティス構内に建設中のガラス張りの建物あたり。どれも撮影するほどではない。ほかにも現代建築はそこここにあるのだが、ダイクロイックフィルターのような赤い独特の色のガラスで覆われていたり素材が風変わりだったりするのだが、おおまかに見ればみな四角四面で、奇抜な形状のものが少ない。景観に配慮しているのだろう。秩序を重んずるお国柄もあろうか。伝統建築のほうは、上に伸びる教会が主でこれも不適。
レオンハルト教会でオルガンコンサート。カベソン、スヴェーリンク、フレスコバルディ、そしてJ.S.バッハ。生でオルガンを聴くなんて20年ぶりくらい。サンフォニスト以降ばかり聴いていてバッハは避けていたのだが、こうしてひさびさに聴いてみると、確かに図抜けていると納得させられる。ジルバーマン製のオルガン。なかなかの楽器。だと思う。日本のように1曲ごとに儀礼的な拍手をしたりしない。終演後に拍手が手拍子になりかかったがお約束のようなアンコールもない。