朝6時。やや巻層雲はあるがほぼ快晴。さっそく出発。6時とはいっても夏時間なので1時間早く、実際には5時。ベルリンは北緯52°で、北海道のさらに北、サハリンの北部に相当する。おそらくそのせいだろうが、4月でもすでに日が長い。現地21時前、実際には20時くらいでもまだ空が明るかったりする。早朝でも明るい。
歩いてブランデンブルク門へ。すぐ近く。さすがに早朝には観光客はいない。警官とよくわからない守衛みたいなひとだけ。ポラ相当数切ってフレームを固め、いざ、と思ったら飛行機雲。これがなかなか消えない。待っているうちに散歩のひとが出てきて、そのうち観光客らしい老人からいつまでここにいるんだと声をかけられる。ずっと、と答えると、三脚がじゃまだから動かせと言ってくるのでNoと突っぱねると去っていく。
こういう観光地で撮影するひとを観察していると、見事に中心の正面を割り出して、そこから撮影するひとが多い。おそらく、そのように教わったからそうするのではあるまい。そうだと考えるにはあまりに多くが正面に立っている。そういう写真をみなが見慣れているからまねするのだろうか。でも、観光名所の絵はがきなどでは、むしろそのような真っ正面の構図は避けられていることが多い。ありふれすぎており、平板だからだろう。にもかかわらずみなが示し合わせたかのように正面に立つのは、こういう対象はそのように撮影するようおのずと導かれるということだろう。こちらも正面に立っているからぶつかることとなる。京都ではさほど問題にならなかったが、日光東照宮陽明門の下では正面に立とうとする人が多かった。特に外国人。そしてここ、ドイツのもっとも有名な観光名所で衝突が勃発した。
その後も若い観光客2人に、いつまでやっているのかと問われる。たぶん5時間くらいと答えると、たった1枚の写真のためにか、と驚いている。クレイジーだと。自分でもそう思うよ。でも、このクレイジーさによって、ほんものの狂気に陥らぬようどうにか持ちこたえているんだから見逃してくれ。ポラを見せると納得し、はげましてくれる。さらにこの箱に興味を示して声をかけてくるひともおり、ポラを見せるとおまえの写真がもっと見たいという。ここなら充分通用する、ここでこそ通用する。
雲が消えたところで、おそらく8時くらいから露光をはじめる。EV15.5程度。日本と同じ。1m。飛行機が多くて注意を要する。これは失敗できない。やや引いて左右に余裕をつくって2枚、合計10枚。10時頃になると観光客が増えてきて、俺はここで写真を撮りたいとおっさんが言ってくるので、2時間待てと答えると、おまえはそこからすぐにどかなければならないと。Why? そんな法律でもあるのか? 俺が撮るからだ。じゃあ1時間半。追い返す。どうしてもここで撮りたいんなら待つなり出直すなりして来いや。こっちはずっとそうしてきている。前にバスが止まったり動かないひとがたくさんいて写りそうだったり、近くに三脚を立てるひとがいたりでかなり厳しい。クロスライトよりサイド寄りになり、もう上部に光があたらない。しかもかなりきつい尿意。潮時だ。斜め前に三脚を兄ちゃんが立てはじめ、1分待ってもらって撮影し、場所を譲って終了。
国会議事堂。西側は客の列だし昼前でまだ早いので東側から。こちらは客が少ない。しかしあまりおもしろくない。しかも雲が出てくる。待っていたら日が回りすぎ暗くなってしまった。とにかく2枚。西には早いので適当にそのへんを見て回ろうと、メンデルスゾーン=バルトルディ公園近くのアンハルター駅だったと思うのだが、たまたま降りたらカイザー・ヴィルヘルム教会よりもさらに破壊されて、壁一面しか残っていない教会の残骸に出くわし、うしろに高層ビルはあるけど時間も空いていることだし撮影。ちょうど正中時。ベルリンは中心部を離れるとある程度の高層ビルはある。フィルムがもう残り少ないので2枚。ここでも雲待ち。2枚目では露光しだしたら黄色いシャツのガキが黄色い自転車で乗りつけて、母親の前でポーズをとっている。読めなかった。追っ払えばよかったんだが、あれは写ったろう。
それからHaus der Kulturen der Welt世界文化の家?を覗いて国会議事堂に15時頃から。早めに固めてあとは日が回ってくるのをただひたすら待つ。こちらは正面から撮影しようというひとはいないが、並んでいるひとが暇なので関心を示してくる。撮影中に声をかけてくるのは、じゃまだからどけと言うやつか、どんなカメラか知りたいひとか、記念撮影をやってほしいひと。いずれにせよカメラになんらかの興味を持つ人間。女性はまずいない、のは日本だけだった。こちらではたまに女性にも声をかけられる。
空は青い。3枚くらいでやめておくつもりが、日没まで見届けようと撮影後もずっといたら、19時に正中した太陽がガラス扉に写って悪くないので撮ったりして、結局5枚も使ってしまう。あと3枚しかない。まずい。とにかく大収穫の1日。12時間の大半を待って過ごしたけれど。
宿は男女3人ずつ。1組以外は単独。2段ベッドの上下に男女がそれぞれ寝ている。ドイツ人が多い。みな若い。ラテンアメリカ系でSonyの一眼レフを持ったお嬢さんのいびきが激しい。毎朝他人が寝てる間に出発し、戻ってくると誰もおらずすぐ寝ちゃうのでほとんど会話もなし。