曇。シテ島ノートルダムへ。朝はさすがに並んでいないが観光客は多い。小ミサをやっているが、参加者より見物客のほうがずっと多い。みなしきりに撮影している。思っていたより狭い。天井は高いのだが、張り出し部分を除いた身頃の幅が狭く、思い描いていた途方もなく広い内部というものとは違っていた。残念ながら大オルガンの音は聞けなかったが、教会オルガニストオリヴィエ・ラトリーによるここでの演奏がCDで試聴できるようになっている。ヘッドフォンが片方しか鳴らず音も悪いが、ヴィドールやヴィエルヌをしばし聴く。高校生の頃聴いていたこれらやフランクやトゥルヌミール、それにドイツのレーガーやカルク=エーレルトのオルガン音楽が自分にとっての音楽の原点であり、今でも積極的に聴きたいと思うのはこれくらいだ。ここパリのノートルダム大聖堂は、演奏空間としては音の分離が悪く塊になりがちでかならずしもいい音響条件ではないけれど、フランス・オルガン楽派のひとつの頂点ではあり、いくらかの感慨はある。かつてのここのオルガニストだったピエール・コシュローによるここでのヴィドール晩年のオルガン交響曲9番や即興の録音は、音がダンゴになるのを防ぐために極端にテンポを落としたものだった。バーゼルの宿主の元オルガニストによればああいう即興のスタイルはとっくに過去のものだそうだけれど、一時代を画した価値のある音楽だと今でも思う。
アンヴァリッドの兵器博物館やロダン美術館は前日だったかもしれない。国立美術学校からサンジェルマン・デ・プレへ。ギャラリー街。通り沿いの1階にある。広くなくてホワイトキューブ指向でもない。むしろサロン風。ラルフ・ギブソンのポスターが外に貼ってある。日本ではまったく聞かないけれど、まだやってるんだ。まったく昔と同じ様式のヌード。でもそのギャラリーは14時からで行けなかった。どのみちこの時期はヴァカンスかも。写真はそこここに。でもざっと見た限りではたいしたことはない。旧来型モノクロかDurstLambda出力の安易な合成系か。でも、あれだけのギャラリーがあって、販売でなりたっているのだろうから、それだけの市場はあるわけだ。
パリで一番古いというサンジェルマン・デ・プレ教会。サンシュルピュス教会ではヴィドールやデュプレがオルガニストをしていたのだった。このあたりではひときわ高く目立つ。中では何もやっていないが、裏に回るとオルガンの音が漏れ出てくる。小型オルガンで練習しているのだろうか。しばし聴きいる。オデオン座、リュクサンブール宮、ソルボンヌ、パンテオンを経て、アンヴェール駅からモンマルトルに行ったのだったか。サクレクール寺院の前は物売りと観光客でいっぱい。何やら歌っている。サンピエール教会。モンマルトル美術館は異様に小さいがあれだったのか。観光客目当てのインチキくさいギャラリーが数軒。申し訳のようなブドウ畑。サンラザール駅だったと思うが、駅前が開けていてスーパーがあり、パテや魚の加工品を見つけて買い込んでしまい、このあとポンピドゥーセンターに行くつもりが行けなくなる。