しばらく前に失明の不安を述べたが、眼の闇などさしたる重大事ではない。精神の闇を前にしては。
ラインが滔々と流れるあのバーゼル、そのバーゼル大学で教授職にあったニーチェは、病のために職務に支障をきたし、職を辞して在野の著作家となったのだった。ほとんど誰からも認められず、ヴァーグナーら近親者とも次々に離反してゆき、ついに精神に変調をきたしたのがこのくらいの年齢だった。こんなみすぼらしいわが身をニーチェほどの巨人になぞらえるつもりはないけれど、このままでは平衡を保てず、あんなふうになってしまうかもしれない、とうっすら考える。
ツァラトゥストラ』を読んだのが30年近く前。あんなものを中学生に読ませちゃいかんよ。規制すべきだ。あれに較べれば18禁だか18金だか児童ポルノだか自動ポルノだか知らんがエロコンテンツなんてどれほど健全で無害なことか。あれとかドストエフスキー地下室の手記』みたいな筋金入りの青少年有害図書が野放しにされていたせいでこんなことになってしまった。どうしてくれる。