朝から特快晴。この時期はそれでも日が昇るにつれ雲がもくもく湧きだすのが通例だが、午前中はほぼ特快晴。昨日改造した次世代器のキャップの接着剤がほぼ固まっているようなので、フィルムを装填してある太いほうの器のキャップと交換し、細いほうにも旧型160NCを突っこむ。昼前になって西に雲が出はじめたが、夏にはめったにないこんな晴天なのに行かないわけにはいかない。あまりに天気がいいので現行器一式も持っていこうと思ったが、ギア雲台#400がどうにも収納できず断念。やっぱこれ重すぎ。405を買ったほうがいいだろうか。とにかくフォトレック30につめて出発。Qui*ckSe*t改は軽すぎて頼りなく感じる。
東へ。しばらくぶりの京葉線。これは知る限り南関東圏内でももっとも感興をそそる路線なのだが、最大の問題は、乗って外を眺めているときがいちばんおもしろくて、降りて地べたを這ってみると地味きわまりないという点。鶴見線も一緒だけれど。15年以上前からさんざん乗ってきたが、海沿いでしかも高架線だから見慣れない風景が見えて期待してしまうだけで、いざ降り立つと企業の敷地内には原則入れないし、見晴らしは悪くてどこを見ても無愛想なつくりであり、期待に反して味気ないというのにはさすがにもう勘づいてくる。まあ今どきふうの「景観に配慮した」媚びた意匠の小賢しさよりはよほどましなのだが、あの単調さだけはいかんともしがたい。しかしながら、いつ行ってもあの無愛想な倉庫が並ぶ風景がある、という期待に手堅く応えてくれるのは、商業地や住宅地のうつろいやすさとは違う、首都圏の安定した風景なのかもしれず、このへんで何かしらの郷愁の対象を求めるなら、いつ破壊されるとも知れない、東武線や成田線の奥にいまだ畑が広がっている田園風景にではなく、開発からは見放されたかのような、京葉線沿いのまるでかわりばえのしない場所こそふさわしいのかもしれない。
新木場の植物園が有望株なのだが、試験段階では早すぎる。葛西臨海公園にもドームがあった。通過してかなりひさびさの千葉みなと。ここは電波塔をはじめ6x12をやっていた頃にずいぶん通った。この駅を起点とする千葉都市モノレールの下を千葉駅方面に向かっていく。市役所のお膝元なのに、あいかわらず乾いて日本離れしている。
千葉都市モノレールは「懸垂型モノレールとして営業距離世界最長」だそうだ。でも2両編成で乗客は少ない。平日はもっといるのだろう。市役所前駅の西側出口、市役所に最も近い出口の階段上で店開き。この駅ではここがいちばんよさそう。東京タワーでカブリに懲りたので短めに20s。14時半頃か。屋根部分は透明だが汚れている。うろうろしながら北上。千葉駅前広場のドームの下の階段上で20s。15.3EV。明るい。しかしふたを開けてみたら遮光テープが影も形もなく、しかもそこらへんにしばらく転がしてあったのでカブっている公算が高く、やりなおし。駅近くの柱の陰でダークバッグの中でもぞもぞとフィルムの交換。通行人に怪訝な目で見られる。近くにストリートミュージシャンが2人いて、一人は直射日光下だが松任谷由実とかの地味なバラードを歌っていて盛り上がらない。もう一人は日陰でポップな曲目で客と手拍子を集めているのだが、声質とか音程のあやしさとか腰でリズムをとっている仕草とかつくった笑顔とか調子よさげな振舞いとか全体にイラッとくる。地味なほうが歌はうまいと思うし親近感も覚えるのだが、まあいずれにせよ彼らは警戒はされないが、こっちは怪しげに見られている。彼我の隔たりに思いを馳せつつダークバッグで汗まみれになりながらフィルム交換して30s。
さらに東に行き、栄町の手前、県庁方面と都賀方面が分岐する付近。東に向かう総武本線に乗っていていつも気になっていた場所。千葉都市モノレールは全体に造形がおもしろいのだが、ここが白眉だと思う。中央分離帯状の狭いところに無理矢理三脚を載っけて露光。まさにうろこのような巻積雲がぽっかり出てきて、やり過ごそうと待っていたら増えてきたのでやむなく。4枚も撮影したから30s。17時頃。三脚をのばしていたらバスがかすめていったりして結構怖い。
まだ空は青いが17時半で日も傾いたので撤退。この時期には珍しい空の青さだが、南関東の夏はかつてはこんなだったんじゃないかと思う。積雲や積乱雲は出ていたけれど、もっと青くて雲がはっきりしていた記憶がある。でも日光は終日曇だったらしい。吾妻線悪天候で運休だか遅延だか。同じ関東でもこうも違うものか。
晴れはありがたいものだ。恩寵のようなもの。こうした日々も結局は社会的には無駄に終わるのかもしれないけれど、こんな晴れの日の記憶を残していけるなら、せめて後年の回想のよすがにはなってくれるだろう。今こうやってかつてを懐旧しているように。