早朝都内は曇っていて涼しかったが、北関東某所に行ったら次第に晴れて強い日差し。この夏3度目くらいの通して晴れの日。国内でもっとも暑くなるあたりの付近で、日中外を歩いている人はほとんどいないがずんずん歩く。主用件をすませて、こんなとこにはそうそうこないからとあちこちの展示に寄る途中で、あとあと写真が必要になる可能性に思い至る。でもカメラを持ち歩く習慣などないので当然どうしようもない。実は出かける前に長らく使っていない12-24mmを持っていこうかとも思ったのだが、荷物が増えるのでやめたのだった。
しばし思案のあげく、14時台のカンカン照りの中、遠くにあった巨大ホームセンターまで歩いていってレンズつきフィルムを購入。27枚撮りフラッシュつき感度400で498円。手元になんの機材もない条件下で写真を撮影するには、今でもこれがもっとも安くて手軽なのだ。パリのノートルダムとかモンマルトルあたりの店先でも売っていた気がするが定かではない。
レンズつきフィルムは、これまで撮影するように指示されて使ったことはあったが、買ったのははじめて。だいたい35mmコンパクトカメラでさえ買ったことがない。ちょうど来た電車に駆け込んで元の場所に戻る。ファインダーはフレームを囲っただけでスヌケなのだが、レンズを通したファインダーやピントグラスを見慣れているとかえってどう見たらいいのか文字通り見当がつかない。だいたい目の位置によってファインダーに見える範囲が違うのだが、適正なアイポイントがわからないので撮影範囲がつかめない。これ眼鏡使用者に配慮したファインダーなんだろうか。パララックスとか倍率とか、さらにはサービスプリントでのフィルムのケラレなんかを考え出すと途方に暮れる。余計なことを知っているばかりにかえって単純な道具が使えなくなるということか。だいたいにしてレンズつきフィルムを使いながら意図通りフレーミングしようとしてしまうところが宿痾というべきか。
他人にはどうでもいい対象を記録として撮影するだけの実用目的の写真なのに、皮肉にも、今年めずらしい晴れで、しかも露光している17時頃には平年でもこの時期めったにない快晴になる。ほんと皮肉だよ。パリでこれだけ晴れてれば。逆光だとどうすればいいかわからないがフラッシュをONにしてやってみる。段階露出というと機構上これしかできない。露光の調整機能もないのにはたしてこれで写っているんだろうかと不安に駆られながらも、腹を決めたらばしばし撮りまくる。使い切れず6枚残す。あとで何かに使うかも、という含みもあったが、たぶん使わないだろうとも思ったし、それよりどうでもいいものを撮影したところでプリント代が無駄だと思った。ネガの無駄よりそっちのほうが大きい。あちこちまわる。晴れの日はいい。真人間になれそうな気がする。いい光なのに撮影しようとは毛頭考えなかった。やっぱ真人間は無理か。