昨日の続き。写真の見かただけでなく、撮影からプリントに至る技術についても展示会場で学んだのだった。こちらは技術指導書を繰り返し読んだのが基礎ではあるし、実際の撮影や暗室で試行錯誤して覚えたほうが多いだろうが、その結果の階調なりシャープネスなり色なりがOKなのかNGなのかを判断するにあたっての基準となったのは、展示で見る他人の写真だったのだ。今なお、一部の人間だけに独占される特殊な技を嫌い、誰にでも習得できる標準的な技術をよしとするのは、学校などで秘伝めかして教わることなく、公開された情報のみを頼りに、あとはみずから手探りで覚えてきたからかもしれない。
海辺や川沿いや街中が撮影のフィールドだったように、街のそこここにある画廊が写真を見る目を鍛えるフィールドだった。象牙の塔汗牛充棟ではなく、ひとが行き交う一期一会の展示の場こそが写真を学ぶ現場だったのだ。