カラーネガの前露光のための道具をこしらえてみるか。シャドウ部がブルーからマゼンタに転んでおり、その補正も兼ねるので、CCフィルターを通してイエロー寄りの微弱な光を与えたい。当然均一な光でなければならない。フィルムの空き箱が遮光されているので流用し、フィルターを貼ってその中にカラーネガを入れ、フタを開け閉めして露光すればいいのではないか。そこで昨日新宿ヨドバシカメラのプロ機材売り場に行き5x7程度のCCフィルターはないかと尋ねると、特注で可能だという。でも高くつくだろう。均一であることは重要だが、拡散板を入れればいいので、光学フィルターほどの精度は必要ない。そこで照明用のフィルターを見てみると、1m幅のロールがあって1,700円とか。これはランプの前につけるので耐熱性が要求されるから高いのだろうが、もっと安いセロファンがあるだろうと世界堂へ。画材関連はハンズより品揃えが豊富だし、あればこっちのほうが安い。ロールが160円。これを枠に貼って、濃度は枚数で調整すればいい。重ねて暗くし、数秒露光するようにすれば、手で箱を開け閉めしてもある程度露光量を一定にできる。光源はセーフライトボックスに入っている豆球で、同じ高さに置いてフィルムとの距離を一定に保つ。でもそれならタイマーでON/OFFすれば時間精度を上げられる。タイマーを使うんだったら、引き伸ばし機というものがすでにつながっているじゃないか。露光は均一、フィルターで色の調整も自由自在、高さも目盛つきで一定にできる。しかし明るすぎて困るくらいなのに、微弱な光が必要なこの用途に使えるのだろうか。
そこでフィルター値をC170M140Y200にし、減衰器を入れ、ヘッドは最上部まで上げ、レンズをf45まで絞り込んで点灯してみると、ほとんど見えないくらいの明るさというか暗さ。フィルター値表示窓とかあちこちからの漏光のほうが明るいくらい。使えるんじゃないか。露出を測るとFlash Meter Vの測定限界をはるかに下回る。測定限界は感度ISO8000でEV4.4、f値表示なら1sでf4.04。一般の写真が撮影可能な光量からは程遠いので、これを検知できないからといって10数年前の露出計を責められはしない。これでもまだ明るすぎたら、グレーのフィルムをネガキャリアにかければいい。箱をつくる必要もなく、フィルムの空き箱にそのまま突っこんで定位置に置くだけでいい。
引き伸ばしタイマーといえば、アクセサリーであるLuckyのフットスイッチが数年前から故障している。タイマー3につないで踏んでもうんともすんともいわない。こいつをどうにかしてやろうじゃないか。原因の切りわけのためケンコー藤本写真事業部に電話すると、ヒューズが飛んでいるのではないかという。コードのないコンセントのプラグをフットスイッチに差しこむのだが、これがヒューズになっている。開けてみたら、確かに焼き切れていた。線ヒューズで、今ではあまり売っているところがないという。担当の年配のひとはたいへん親切で、たぶんヒューズ長に余裕があるのでつけ直せばそのまま使えるんじゃないかと教えてくれた。根元で切れているので、大部分は生きている。ネジに巻きつけてある部分をほどいてみたら切れたほうに届いた! ネジで締め、これで使えるとタイマーにつないでみたら、今度は点灯しっぱなし。常時ON。フットスイッチの中で結線されたままの状態になっているらしい。きっとこれで異常電流が発生しヒューズが飛んだのだろう。根本的な原因はスイッチ本体であって、ヒューズの断線はそこから派生した結果にすぎなかったのだ。ぬか喜びだったか。ダメモトで本体を開腹。ホコリがうっすらたまっている。内部を拭いて元に戻し、もう一度タイマーにつないでみたら、なんと復活した。何ごともなかったかのように快調に動作する。積もったホコリでショートしていたらしい。水で洗っても直っただろう。水責めにした電子レンジは結局直らなかったけれど、こちらは生還した。まさしくラッキー。しくみが単純だからこそ、電気工事の素人でも対処できるのだ。これはきっと長く働いてくれる。
昨日ある席で聞いた話だが、かつての多摩美での脇リギオの授業ではカラーポジ現像の実習があり、そこでは暗室時計など使わず、テープに各工程の終了のタイミングを録音して、それを再生していたそうだ。さすが往年の第一人者、その手があったか。デジタルカメラの録音機能で吹き込もうかと思ったが、暗室で自分の声を聴くのはあまり気分のいいものではなさそうなので、パソコンにくっついてきたが使ったことのないGarageBandで作成するかもしれない。iTunesはラジオをかけているからQuickTimeで同時に流せばいい。