住んでいる集合住宅で去年大がかりな工事が行われ、それまでは屋上にある給水タンクから、建物内部に敷設されているパイプを通して給水されていたのだが、外側に新しく各戸別のパイプを配管して上水管から直接給水するように変更された。水質は向上したのだろうが、水圧が以前より格段に高くなり、蛇口を全開にすると手が吹っ飛ばされるほどの奔流が噴き出すようになった。水量が多すぎて温水器が制御できず、いっぱいに開けると風呂がぬるくなってしまう。それまでは位置エネルギーだけを使って重力で水圧を得ていたわけだが、水道管にかかる水圧をそのまま使うのだからパワーは強くなる。地震で水道管が折れ水が噴き上がっている絵柄には誰しも見覚えがあるだろうが、あれくらいの圧はかかっているわけだ。今住んでいるのは3階だが、そこまで持ち上げてなおありあまる水圧がある。途中にさらに何か調整器が入っているようで、これが加圧しているのか減圧しているのかはわからない。
水圧が上がったこと自体は、Kostinerのアーカイヴァルプリントウォッシャーを使う際に泡がよく出るようになって水洗効率が向上するなど、暗室作業の上では歓迎すべきかもしれない。ところが、蛇口から出た水が白濁しているのである。何らかの不純物が混ざって濁っているのではなく、水圧が高いために泡だっている。問題は、このことで水に含まれる溶存酸素が増えているのではないかということだ。蛇口を絞っても、水流が細くなるだけで流れの速さは変わらないから事情は同じ。圧がかかるために酸素が溶けるということなら、水道管で運ばれてくる過程で溶けこんでいるので、出口が変わろうと同じことである。しかし、出口の勢いで泡だっているように思えるので、工事前より条件が悪化していると考えていいのではないか。
煮沸すれば追い出せるわけだが、鍋やらで水を沸騰させると金属の味になる。鉄イオンが溶けだしているのだろうが、これがまた問題になるように思うので、これもあまり気が進まない。困ったことである。
以前気になっていた道路の振動は、道路が埋め戻されていつしか解消していた。この道路工事は当初今年の3月までの予定で、年度内予算をきっちり使いきるということだったようだが、近隣住民の苦情が相次いだのかずいぶん早くに切りあげたようだ。
それにしても。写真に関係することしか書いてないのに、よくもまあこれだけ毎日毎日ネタが尽きることもなく、こんなに長々と書けるものだ。われながら感心する。実作に没頭していると思弁をやる暇はないので[写真について]カテゴリーも書かず、たいがいのかたにはちんぷんかんぷんだろうが、日々写真のことばかり考えて暮らしているというのだけは一目瞭然だと思う。
さて今日も曇。昨日の副露光テストネガは2sでごくわずかに濃度が乗っている。プリント時の副露光であれば、印画紙のトーナルレンジをフルに使おうとするのが一般的なので、印画紙の白が出なくなるカブリは避けられるだろう。ハイライトの階調を出そうとするのが副露光で、ハイライトに濃度を乗せる方向なので、ハイエストライトの白を残すこととの両立はなかなか困難なんじゃないかとも思うが。でもネガならベースカブリ濃度が多少増えても、プリント時にその分露出を増やせばいいだけなので、かぶる手前のぎりぎりの露光量で副露光を抑える必要はないのである。一般の引き伸ばしプリントでは、コントラストと濃度は切り離せない。プリント上の低濃度部はハイライトになるが、特性曲線のS字カーヴの脚部にあたり、ここのコントラストは寝ていて、立てることは通常できない。ところがネガのシャドウ部、すなわち低濃度部を必ずしも脚部にする必要はなく、副露光で持ち上げてやれば、傾斜の大きい部分でシャドウ部を撮影することができ、シャドウ部のコントラストを上げられる。副露光でなくて、露出や現像をオーバーにして濃度を上げてもいい。それぞれにコントラストは変わってくる。モノクロネガなら濃度が高くなると粒状が荒れるので極力薄いネガがよしとされるが、カラーネガの場合、シャドウ部は高感度乳剤層の領分なので粗粒子になるから、むしろ濃いめのほうがいいことが多い。プリントと違って、ネガではコントラストと濃度を別に制御することができるのである。副露光と、それに応じた自家現像の組み合わせで、カラーネガのコントラスト操作の可能性が拡がるに違いない。という推測だが、過度のカブリを与えるのは悪影響を及ぼしかねないので、しばらくは控えめに、かぶるかどうかの2sでやってみるか。後露光なら、撮影感度だけでなく、撮影時の照明コントラストなど条件に応じて副露光量を変更できるのもいい。