1泊し8時過ぎ出発。曇。透明度低いさえない空。T美術館に開館前に着いてしまい15分くらい待つ。開館時間前からずっと待っていて、一方警備員がガラスドア越しに時計を見ながら内側でまだ開けないと通せんぼしている。掃除のおばちゃんは「私の時計ではもう過ぎてる」と言うのが聞こえ、こちらの時計でも開館時間を回っているというのに。やっと開けたと思ったら、お待たせしましたのひところどころか、三脚を使うのかなどといきなりのお咎め。三脚もって入っちゃいかんのかよ。東京近辺でそんな追及はこれまで一度もない。すかさず受付に荷物一式預ける。
公募展なので期待していなかったが予想外におもしろかった。応募規約や選考形式にもよるのかもしれないが、ほとんどが平面。立体もあるが手のかかったつくりこまれたものが多く、ひところよくあった配置だけで勝負というアルテ・ポーヴェラの二番煎じとか様式化したインスタレーションは1、2点くらい。これまた既視感たっぷりのコンセプチュアルは皆無。映像も2点程度で、どちらも単純にモニタやプロジェクタで映写するものではない。何度も述べているが、決まりきった展示媒体に乗せられる限り、内容がどうであろうとみんな同じに見える。どれもみんないい加減飽きがきたということだろう。ストレートな写真は1点もない。最近の趨勢はこうなっているのか。無論これが現代美術全般の傾向を示していると即断はできないだろうが、これなら見てもいいなと思える。公募展で1点勝負だと見た目の訴求力の強いものが有利ということかもしれない。しかも制作者がありったけの力をつぎこんだ1点ばかりを並べてあるのだから、並の個展よりおもしろいに決まっている。いずれにせよパソコンでちょいちょいとひねりだしたものより、こういった物をじかに扱っているほうが何ものかを見たという手応えがずっとある。
企画のほうは、個々の玉には見るべきものもあるが、ありがちな趣旨と人選という印象。これはやられたというのもあったが、あれも一発屋で終わるだろう。いつもの面子を安定起用といった様子で、企画者の持ち駒が固定されているように見える。見るほうから遠ざかっていずれだいたいそうなるもの。それでも全体として満足感があった。地方で市街地から離れた美術館にはときどきある、広々とした土地をゆったり使った落ち着ける建物と環境。いい美術館。警備員以外は。2時間たっぷり見たら外が晴れてきた。
荷物をデポしたまま付近を探索。ホール。ロボットアニメに出てくる要塞のようなスタジアムは休日で入れず。鎧のような無駄な装飾つきの橋。市庁舎も新しいし産業文化センターやらの箱物も豊富。さすが税収のある自治体。途中で南に巻雲が出てきてこりゃまずいと13時半ごろ戻り、荷物を回収して屋外で撮影。三脚は使ってませんよ。直置き。でもからまれると厄介なので警備員の目を盗んでこっそりと。またしてもフィルムを詰め替えながらの自転車操業。日蔭でやってたら日が当たってきて四苦八苦。遠く雲があるが朝よりは透明度が高くなっている。上天はまずまずの青さ。その後任意の角度で傾けるため雲台だけ使う。三脚があるせいで要注意人物とみなされているらしく警備員がしょっちゅうやってきてはガン見していく。15時半過ぎまで露光しまくった。何枚撮ったかわからないが10枚はいってるだろう。もうそうそう来ることもなかろうと思うと、つい未練がましく枚数を重ねてしまう。中抜けあったものの6時間ここにいたことになる。帰り際散歩中のご隠居さんに「遠くからですか」と話しかけられ土地の由来など聞く。城址だったとか。お金のある自治体ですねと言ったら、これまではそうだった、でも今後はそうはいかないと思ってます、と。
戻って、朝からカロリーメイト半箱しか食べてないのでヴァイキングに行ったらたいして食べられず。明日晴れそうなのでもう1泊。