カラー印画紙がらみでの検索の来客が多い。
オタオタしている者どもに告げておく。
富士があるだろう富士が。
シネフィルの中には、富士のフィルムは青みがかっていてKodakは暖色系である、などといまだに訳知り顔で吹聴している輩がいるが、自分でカラープリントをやっているひとでさえこんな偏見に囚われているとは理解を超えている。あんたらの使っているのはネガ感材だろう。フィルターっちゅうものを知らんのか。今さらいうまでもないことだが、ネガプリントにはカラーポジのように絶対的な再現色などどこにもなく、フィルター補正したプリントではじめて色が問題になるのである。むしろこの色再現の自由度が、ネガプリントを商業印刷用途に供する上で壁になっていたくらいだ。ネガ感材そのものの色味を云々してもほとんど意味がない。昔の富士のカラーポジは多少寒色系寄りだったのだろうが、富士のネガフィルムとプリントフィルムを使っている70年代頃の映画に全編クールトーンの色調設計のものがあるのは、ただのカラーマネジメントの話であり、この映画は青主体の色調にしたいという意向に沿って照明設計なり撮影やプリント時にいじっているというだけのことで、たまたま寒色系に強いということになっている富士が選ばれているにすぎない。普通にやってあんなに極端に青に転んでたら欠陥製品である。単純に、フィルター操作の結果、そうした青っぽい色調に演出されたのである。意図的にそのようにされたのであって、決して感材の性能に由来する色転びではない。
露骨な青転びはそのようなフィルター操作の結果なのだが、確かに、微妙な特性の差はあるだろう。15年ほど前のAgfaのカラーネガからのプリントでは、どう補正しても国産やKodakと同じ色調にはできず、独特の癖のある色合いになったようだ。自分で処理したことはないが、いろいろやってみても他メーカーのネガと色調を揃えられなかった、というのはプリントを見る限りよくわかった。ただし、これは印画紙とのマッチングの問題と、昔のスピーカのような色づけなのだろうと思う。富士であれKodakであれ、現在のネガでも印画紙でもそんなおおらかなキャラクターづけはないだろう。いずれも全スケールに渡ってニュートラルなグレイバランスに整えられている。シビアに見れば若干の偏りはあるにせよ、ネガ感材なんだから、フィルター補正で変えられる幅に比較すればまったくとるに足りない。演色域の差は測定すれば多少出るのかもしれないが、一般の階調ネガを普通に焼く分には、Kodakだって青の発色はいいし、富士の黄や赤もKodakに対して遜色ない、文字通りに。富士は青から緑が強くKodakは黄から赤に長けているというのは、30年前ならいざ知らず、今じゃ箱とかの色から来るただの思いこみがほとんどというべきだろう。
富士CGとKodakの歴代のSupraで何度か同じネガから焼きくらべて、同じフィルター値なら当然差はあるが、フィルター値を変更して追いこめば色調に関してはかなり近くできる。それより問題になるのは富士で一般的なCGがSupraより硬調だということだが、より軟調なPGもディープマットのPDもあればアマチュア用のFAもある。FujiUSAにはポートレート用のTypePもある。これはCGより明らかに低コントラスト。
だいたいKodakにしてもカラー印画紙を全面的に中止したわけではなく、シートをやめただけで、ロールもなくなるとのアナウンスはない。ロイヤルペーパーは健在。なんとでもやりようはあるはず。
とにかく、国産富士なりFujiUSAを一度使ってみてくれ。思いこみと先入見なしに使ってみて、それで駄目なら何も言わない。自分で実際に使いもせずに、伝聞と風評と印象で烙印を押すのだけはやめてくれ。