朝から曇。雨上がり。上の客がガタガタやっていて起こされる。Good Morningと言っても返事がない。見たらひげそり中だった。そういえばアメリカ人はみな髭をそっているか、伸ばしていたら手入れしている。メキシカンも身だしなみがいい。ホームレス以外は体臭もしない。意外にみんなきれい好き。LAでは身なりはラフだったけど。無精ひげに寝癖で歩いてる奴なんて他にいない。
寝床の次は交通手段。街の様子が知りたいので今日は歩いてみることにする。撮影できそうもないので三脚は置いていくが、盗難防止でカメラバッグは背負っていく。だいじなのは撮影済みネガだが、金目のものではまったくない。他の誰にとっても1セントにもなりゃしない。トラベルケースから出してレジ袋に入れて棚に置いておく。トラベルケースは盗んでも、これ持ってく奴はまずいないだろう。開けて中身を見られたらお陀仏だが、フィルムと箱に書いてはある。写真やってるなら値の張るカメラが入ってるに違いないと、中身を見ずにトラベルケースごとやられる可能性はあるが。レンズも棚に置く。大判レンズも、たいていの人間はなんだかわからず手をつけないはず。
Times SquereをかすめEmpire State Buildingのまわりを一周するがどちらも特になし。中央郵便局までローマ風で偉そう。BroadwayからCarnegy Hall。意外にこじんまり。ビルがひしめく中に建ってるからこうもなるか。コチシュのピアノとか。まだそんなのをやってるのか。25年前で止まってる。
LAでは歩行者はみな信号を守り、横断でもまっすぐ渡る。斜めのショートカットなどしない。でもNYでは赤信号でもどんどん渡る。車が来てても突っ切る。信号無視には自信があるが、それも所詮東京レベルで、こっちのひとには負ける。何しろひとりだけ渡りきれずとりのこされるくらい。ベビーシッターもベビーカーでぐいぐい渡る。警官がいても平気で信号無視するし、警官もとがめない。これを、LA人はきっちりしていて遵法精神に富み、ニューヨーカーはいいかげんで荒っぽい、ととらえると違和感があるが、せかせかしてるかどうかの差、と考えると合点がいく。NYは車も強引だが、LAでは右折とかでも待っていてくれる。車社会の余裕が感じられる。そういえばLAにはYellow CabがいたがここではNY City Taxiとなっている。LAに流しのタクシーはいないがこっちは多い。同じ国でもいろいろ違う。
そしてCentral Park。馬糞のにおいがするというのが最初の印象。馬車がかぽかぽいわせていて、公園の中に車道があってタクシーが走る。それだけ広いのだ。ここはNYに行ったら一度見ておいたほうがいいとされているが、どこがいいのかわからなかった。でも歩いているとわかる。なるほどここは来ておく価値がある。自由に歩けるというのはほんとうにすばらしいことだ。雀が水浴びして飛び回っている。あんな雀のように、思いのままに行きたいところにいける。軽く一周。肌寒い。みな冬着。昨日まで同じ国でTシャツの人ばかりの場所にいたというのに。昼過ぎにやや晴れてきて、1枚しか着てないので陽射しがありがたい。LAより陰影に富む街。椰子の木は1本もない。こっちのほうが合ってるとじんわり感じる。
公園の北はCentral Harlem。この際だから行ってみることにする。昼間の大通りなら危険は感じない。でも黒人ばかり。ヒスパニックもあまり見かけない。メインストリートの125Stに折れ、ストアがあったのでHarlemなら物価も安いだろうと入ってみる。Chelseaと大差ない。パンがかろうじて安い程度。もちろん庶民的な安売り店。食べ物がこんなに高いのに暮らしていけるなんて、平日昼間からそのへんで油売ってるようなひとびとは貧しいふりしてるだけに違いない。
橋を横目にEast River川岸を下る。つい水辺に行ってしまう。TargetとCostcoと安売り電器店チェーンのBest Buyが入っている建物を見つけ入る。Targetは全米展開か。今まで行った店より安いがLAのTargetより高いと思う。LAで買った靴が、包帯を巻いてはくことも考慮して大きめだったため、足が中で動いてしまう。そこで厚手のスポーツ靴下を購入。
15時半に出ると世間並みの快晴。遠く雲はあるが空が狭いので隠れる。しまった三脚持ってくるんだった。NYは西より晴れないと甘く見ていた。写真器はあるのに撮影できない。いつでも持って出るようにしないと。
そこから1St Aveを南下。1Stとはいっても、Manhattan島の南北に伸びる道としては東端にあるというだけで、別にここが歴史的発祥地だとか重要度が高いということではなさそう。でも到着後の街歩きの初日だし、1Stでよかろう。なおLAの道路は、たしかBoulevard、Avenue、Street、Driveの順で基本的には細くなり、PlとかWayとかもあったが、NYでは東西に走るのがStreetで南北がAvenue、Avenueはだいたい広い様子。1Aveははずれのせいか古い建物が多い。突然視界が開けて国連本部が現れる。押し出しはいいが横から見ると薄っぺら。象徴的。南に出るとNYUの病院とか、大規模な医療関連施設が多くなる
わりに広い23Stに折れてChelseaに帰る。地理はすぐに把握した。18時頃着。両足にマメができた。ひさびさだ。よく歩いた。NYなんて狭いよ、Manhattanなんて小さいもの、と聞いていたのでよほど狭いのかと思っていたが、1日では歩ききれない。東京都区部より狭いという意味だったのだろうが。明日からは厚手の靴下なのでマメはできないだろう。
共同炊事場はあってガスは使えるが鍋がない。事実上火が使えないばかりか電子レンジも冷蔵庫もなく、包丁とまな板すらない住居に住んで、外食せずにすませようとするとなかなか難しい。いきおいパン中心になってしまう。なおインスタント麺類は20年以上食べていない。この先も食べないつもり。タンパク質はチーズとハム。こちらは卵の洗浄が日本より甘いので生では食べられない。では野菜はどうするか。
ストアでも切ったレタスを袋詰めにしたようなのは売っている。ほとんど空気なのに5ドルとかする。でもレタスなんて食物繊維と水ばかり。あと生の人参がよく入ってるけど人参の生は食べても無駄。だいたい生野菜嫌いなのだ。おいしい野菜の生ならともかく、化学肥料たっぷりの水っぽい野菜を生で食べてもしょうがない。和食に生野菜を食べるなんて習慣はもともとなかった。生で食べるのは生姜茗荷葱山葵山椒木の芽大葉大根といった薬味だけ。あと山芋類。みな殺菌効果がある。無農薬の野菜なんて虫がいるし生で食べるようなもんじゃない。それにキャベツやら玉葱をスライスして水に漬けたら水溶性のビタミンとか有用な成分がみな失われてしまう。いいことなし。中国人だって生野菜なんか食べない。体を冷やすのでよくないという。もっともだ。生野菜が好きでどうしても食べたいというのなら別だが、好きでもないのに無理して食べるくらいならやめたほうがいい。野菜は加熱するか発酵させるか乾燥させて、あるいはせめてタイのサラダのように和えてしんなりさせて食べるもの。
ベルリンではザワークラフトとかオリーブとかが安かったが、こっちではそういう加工野菜は少ない。
LAでは街角に手押し車を出して、むいた果物を透明ケースに入れて氷で冷やし、客が来るとカットして詰め合わせて売るメキシカンをよく見かけた。こちらでは野菜や果物をそのまま路上で売っている。店よりは安いし買いたいが、冷蔵庫も包丁も、食器すらなしでは手が出せない。
そこでどうするか。今やっているのは、サルサをパンとかに載っけるというもの。トウモロコシ粉を焼いた奴はあんまり見ない。サルサには豆とか玉葱とかいろいろ入っているので、イタリアンのトマトソースより野菜の種類が豊富。トマトは果実なので生でも食べる。キュウリとか瓜類は生でもまあいいことにする。
あと金はないが時間がある人間にいい食べ物はひまわりの種。安いし栄養価も高い。ただ、殻つきで売ってる奴はむいて食べるのが面倒。ビールのつまみには向かない。ちまちまやってるうちにビールが抜けてぬるくなってしまう。殻がかさばって手間もかかるわりには中身が少なくて、少し食べてもたくさん食べたような気になれるのでよろしい。満腹中枢がいかれていて、満腹感が来るのが遅くて食べすぎがちなひとにはおすすめ。調味料を直接まぶしてあるかぼちゃの種より塩分の摂取量も減らせる。LVのCVS Pharmacyで99セントだった。こっちのCVS Pharmacyではまだ見てない。