朝から薄い巻雲。
ホステルのインターネットは20分2ドル。しかしUSBでつなげたpomeraもSDカードも認識しない。ほとんど使いものにならない。WiFiのパソコンを持ってくるべきだった。まあ荷物が重量制限いっぱいだったのでどのみち厳しかったけど。
安いホステルを探しにBrooklynへ。BroadwayにあるMetroM-LineのMarcy Ave.駅近く。Manhattanまで2駅なので出やすい。ゲットーっぽいが夜出歩かなければ平気だろう。人間が暮らしてるんだから。しかし問題はホステル自体にあった。Glenwood Hostel。入り口が狭くて階段も汚く、見るからにやばそうな雰囲気。受付は鉄柵で囲まれ檻のよう。20日までしか泊まれないと張り紙。明日から泊まれるか、と聞くと、明日来いという。部屋を見せてもらう。大阪京橋の漫喫Manboo!を30年分ぐらい荒らした感じ。ブースであって壁は天井まで届いていない。その気になれば左右の部屋から侵入できるだろう。浴室はトイレと一緒、トイレの不衛生さは京大吉田寮を数段上回る。何よりそこに吹き溜まっている連中が見るからに尋常ではない。身の危険は考えないとしても、バックパック1つに全所有物をつめこんで肌身離さず持ち歩けるなら別だが、荷物を置いておいたらいつか必ずやられる。しかも三脚持ってる日本人なんていい餌食だ。もちろん荷物置き場なんてない。あそこに滞在して無傷でいられると思えるほど図太くはない。一泊23ドルくらいだが、道理で安いわけだ。他のホステルがみな満室なのに、ここはいつでも空いている。さもありなん。このへんの夜は安全かと聞くと、Yeah、という。Really?と返すと手を広げていた。最初に泊まったのがここじゃなくChelseaでよかった。あそこだけはさすがに無理。ならどうする。渡航前にNYで泊まるつもりだったホステルは10ドル代で格安だったし日本語サイトもあって、空港からも近かったが、直前にサイトを除いたら募集を停止していた。たぶん、泊まらなくてよかったのだろう。大阪釜が崎のドヤはなんて安全で快適だったのだろうと痛感する。しかも安い。大阪には銃がないが、それだけじゃないんだ、何かが決定的に違う。この地でやっていけるんだろうか。不安になってくる。
34Stに出て9Aveまで歩き、かの有名な写真用品店B&Hへ。片づけるべき問題がいろいろあるんだが、つい。プロ機材がごろごろ。客もわんさか。写真用品店はこうでなくちゃ。ヨドバシで昔感じた高揚感。Freestyleなんてお話にならない。
暗室用品コーナーもあったが、あれほどの取扱品目をすべて陳列しているわけではもちろんない。中古の展示も一部。たぶん渡航前に、LPLのレンズボードの中古をwebで見つけたのだが、当然のように売り切れていた。Sigma12-24レンズのなくしたキャップの在庫を聞いたら、特別なキャップなので扱ってない、Sigmaに聞いてくれ、とのことだった。ここにないということは、アメリカのどこにも、新品のパーツとしてはないということだ。
MetroのMarcy Ave.駅で、もみあげあたりにカールした髪を垂らし、黒のスーツを着て山高帽をかぶった独特の出で立ちの男が2人いて何かと思ったが、ここの店にはたくさんいる。そうかユダヤ人だ。それだけじゃなくてアジア系もいるんだが、6割方は巻き毛のひとびと。B&Hはイスラエル支援企業だったりするのだろうか……。
その後34Stで曇天下のHudson Riverを見て、バスで東に戻って南下し、South Ferryから自由の女神像を遠目に見る。Wall Stは特別な緊張感の漂う場所だと思っていたのだが、17時頃の時点では特にそんな雰囲気ではなかった。あちこちに小さな路面店がある。大手町や兜町のほうがよっぽど、すみませんうっかりして迷い込んじゃいました悪うござんした、という気分にさせられる。
NY証券取引所も迷ってやっとたどりつく。あんなに小さかったとは。東京証券取引所も意外に小さいけど、印象としてはその4割くらい。でも警備は厳重。道をせり上げて車が入れないようにして、警官が周囲を固めている。観光客が多いが近寄れない。世界の資本主義の総本山なのだから当然か。いや別に総本山というのは比喩であって、資本主義が宗教であるとかいった乱暴で素朴すぎる主張を振りかざすつもりはない。
世界貿易センタービル跡地の再開発現場も見る。途中まで目隠しがしてあり、歩行者は近づけないようになっている。かなり離れて工事現場が見え、完成予想図が飾ってある。むしろこちらのほうがよほど実定宗教の影響下にありそうだが、どうでもいい、かなりどうでもいい。
日が沈み帰還。しばらくここにいることになりそう。どうなるかまだわからないが。冷蔵庫はあった。業務用。全入居者の共用だけど……。ビール1ダースなんか入れといたらたぶんたちどころに消える。ホステルが夕食にピザを振る舞ってくれたよ。これほど味気ないものかと、6ピースぐらいビールで食べて満腹した。