朝から特快晴。しかし飲み過ぎか調子が悪くて早起きできない。早起きしてBrooklyn Museumの朝の光線状態を確認しようと思っていたのに。それにMemorial Archも昼に旧型器で、と思っていて、今回旧型器と重い思いして持ってきたギア雲台をようやく使える機会だ、と思っていたのだが、これもやる気がなくなりとりやめ。
11時頃Times Squareをなんとかできないかと行ってみる。しかしどうもうまくいきそうもない。30分後くらい、Broadwayに陽が射す頃合いに行ってもおもしろくない。
あきらめてAの14 Stから西へ。Chelseaの先に行ってみる。Greenwich Villageである。Greenwich Stを南下。これがおもしろい。Chelseaと同様昔の建築がたくさん残っているのだが、低層建築が多いので道に陽が当たり、街が明るい。建物もシンプル。観光客でにぎわうChelsea倉庫街から一転して閑静な住宅地。通る住民に黒人はいない。13時頃、Bank Stとの南東角で4枚ほど。監視カメラが随所に。さすが高級住宅地。地下鉄の駅が近くにないので車が必須らしい。貧乏人には住めない。その先で2枚だったか。Tribeckaに入ると倉庫が増え、高層建築が多くなってManhattanの他と同じく空が狭くて暗い通りになる。Chembers Stで止まり、川沿いからWashington Stに入って北上。15時頃全道制覇し14 StからUnion Sqへ。Grece Church。ギリシア正教会なのだろうか。そのわりにはゴシック様式の尖塔を持つ、鈍く光るステンドグラスのある教会。16時からオルガンメディテイション。大バッハメンデルスゾーンソナタ4番というロマン派から後期ロマン派中心の選曲。拍手はなし。オルガンは前方右陣にあるらしいが隠してあって見えない。奏者も姿を現さない。メディテイションか。45分で終わりの予定だったが、終わったら16時55分。急いで帰って荷物を置き、Museum Mileへ。ところがあわてて乗った電車の行き先が違い、戻って乗り換え大幅に遅れる。Guggenheimに着いたのが18時過ぎ。土曜日は17時45分から入館料任意なのだが、これだけ過ぎてても美術館の正面では足りず南側の道にまわりこむ長蛇の列。18時半にようやく入館。1ドル払って。
螺旋状のつくりなのでいったんエレヴェータで最上階に上がったが、展示の順路としては下から見ていくようにできていた。時間がないのでどんどん見ていく。大戦間のヨーロッパ美術でのギリシア・ローマの古典様式への反映といった趣旨らしいが、文字情報を読まないのでよくわからない。というより、説明されないとなぜこれが古典主義なのかわからない、というものがよくある。だから「Caos」なのかもしれないけれど。それにしても、これほどのコレクションを持つ有名美術館でさえ、助成金を受けてまであちこちからタマを借りてきて特別展をやらないと回せないのだろうか。もっとコレクションを見せてほしいと思うのは1回しか行ったことのない観光客風情の浅はかな感想に過ぎないのだろうか。例によって立派なカタログがあり、キュレーターはがんばったんだろうけど、キュレーターのがんばりはそんなに重要なものなのだろうか。
でも目玉のカンディンスキーは1室さいて展示してある。近代絵画のコレクションも別館のほうにある。こっちのほうが観光客にはずっと楽しめる。ルソーのフットボールがあった。結局最後はここに戻ってきた。
19時45分で追い出される。1時間しかいなかったが、急げば1時間で見られる美術館。真ん中の吹き抜けに容積の大半をとられているのと、展示もだいたいは広いブースひとつ使って1点をゆったり展示してあるから。でも、順路が明確なので、少なくとも本館のほうは展示の一部を見落とすことがなく、たくさんある展示室のどこかを見てないんじゃないか、と気になったりはしないし、果てしなく続く展示室にまだ見なくちゃいけないのか、とうんざりもしない。気分のいい美術館。
監視員の中にiマークをつけた若い白人男女がいて、展示内容について受け答えできる様子。美術の学生のバイトのような気がする。ボディガードのような押し出しのいい黒人監視員とは雰囲気が違う。
客はやはり黒人が少ない。それに東洋人も少なく、いてもたいてい日本人。中国人観光客は大勢いるのに、美術館には来ないらしい。中国が国策として美術を振興して美術館をたくさん建てているというが、かつてのアメリカのような成功の目はあるまい。何しろ国民の大半が美術になんて関心なさそうなのだから。しかも美術の中心がアメリカに移った時期のような可能性と活気はもはやこのジャンルにはないし、主導的な地域やムーヴメントに世界中の美術界が席巻される、という時代でもない。それに評価の定まった美術品はほとんど収まるべきところに収まって、かつてのようには動かないのではないか。あらゆる点で、中国が美術で世界の尊敬を勝ちとろうという戦略は失敗するだろう。アメリカの文化戦略をまねするのは、彼らお得意の工業製品のコピーのようには簡単ではない。たくさん建てた美術館も、日本同様閑古鳥が鳴いて、いずれ閉じる羽目になるだろう。そして中国は彼らがなりたい最盛期のアメリカ、世界中から一目おかれていたアメリカにはなれず、彼らがもっとも毛嫌いする、金はあっても世界中の鼻つまみ者だったかつての日本のようになるだろう。あちこちでの中国人の振る舞いを見るとついそう思ってしまう。