朝から小雨。左足にマメが顕在化して歩きづらい。手ぶらで出発。傘も何かいわれるんじゃないかと思い置いてきたが、傘くらい持ってくればよかった。さてこの地で最後の大物ミュージアムSmithonian National Air and Space Museum。この国の威光を誇示するにはなんといってもこれだろう。建物もいちばんでかい。南側正面入口の前にはSMITHONIAN INSTITUTIONとの堂々たる石刻。平日朝ならすいてるだろうと思ったら予想通りがらがら。こりゃいい。
入口ではX線検査と金属探知機。そりゃそうだろう。なんたって兵器がある。Holocaust Memorial Museumも確かそうだった。議会図書館は金属探知機だけだったか。今のところこの体制はそれくらい。
ソ連の長距離弾道ミサイルSS-20がPersing IIとなかよく並んでいる。SS-20のほうが倍近くでかくて射程距離も長いが、あちらの顔を立てたのだろうか。
宇宙開発とプロペラ機が多い。大型機は置けないだろうから。軍用ジェット機は思ったより少なく、X15とかF104とか、かなり昔の小型の機体が多い。軍用機はNYCのIntrepid Museumにまかせてあるのだろうか。旅客機は機首のみのカットモデルが数機。気になるのは実物かどうかだが、断面を見ると本物らしいし、スプートニクとかにはレプリカとある。アポロ11号の月面着陸機だったか実物などあるわけがないものには試作器などとあるので、特記のないものは実機なのだろう。
さまざまなテーマでたくさんの展示があるが、そのなかに「Golden Age of Flight」というのがある。黄金期とは、大戦間の1918年から39年まで、真の黄金期はリンドバーグの大西洋横断の1927年から39年までとのこと。飛行というジャンルは70年も前にピークを過ぎてしまっていたのだ。冒険と一緒か。個人が前人未踏の偉業をなしとげ記録をうちたてて英雄となれた時代。それは写真でもアートでも同じ。すべてに共通するのは、大きな目標となることはもうやりつくされたということだろう。頂点が極められ、技術の進展によって特別なものではなくなり、大衆化と普及が進んで誰にでも可能になる。飛行も写真も一見すると今が全盛期のようだが、輝いていた時代はとうに過ぎているのだ。それはこの国全体がそうなのかもしれない。
単発の単葉と複葉の小型プロペラ機の下にコンロ用のアルミ箔が敷いてある。エンジンから油が流れて落ちるので、それを受けるため。今でも飛行可能なように整備されているのだろう。
多様性。生物進化の多様性のように、およそ思いつく限りのありとあらゆる形態と機能と用途が試され、あるものはそのまま発展していき、またあるものは衰退していった。
そうした多様性は重要だ。何でも試してみることができること、ある条件が含みもつ可能性の沃野を踏破しつくそうとすること、ここにあるのはそうしたとりくみの歴史である。写真にだってそういうとりくみがあっていいだろう。
ものが言いたければ文章で言えばいい。そのほうがはるかに手っとり早いし、現に日々そうしている。写真によって言いたいことを表に出す気はさらさらない。
ならば写真で何をしているのか。探究である。ここで見られる多様なとりくみと同じことだ。
1階だけで4時間もかかってしまった。英語の説明パネルはほとんど読まずにとばしているし、そんなにじっくり見ているつもりはないのだが。さっと見てもっと回るつもりだったのに。
昼食はまた富記Full Keeの中華。Sweet and Sour Porkってなんだろうと頼んでみたら酢豚だった。甘い。戻り道、National Galleryを突っ切っていくと近道なので入館。なんという贅沢。手ぶらなので荷物検査もなく素通り。でも途中で迷って北側から出てしまい、かえって遠回り。
2階。1階に初期の飛行機の歴史があってリリエンタールとかが出てくるのだが、アメリカ人であるライト兄弟についてはえらくあっさり。初飛行の機体はずっとイギリスにあったのがここに戻ったのではなかったか、と思ったら上にライト兄弟に絞った1室があった。1903 Wright Flyerはここにあった。このミュージアムの中でいちばん価値があるのはこれだろう。次がアポロ11号の大気圏突入カプセルColumbiaか。それは昔日本で見た気がするが、ライトフライヤーはまず貸し出さないだろう。でも、ライト兄弟が最初なのは動力飛行であって、リリエンンタールがグライダーを開発し研究した業績に乗っかっているし、ジェット機メッサーシュミットMe262が最初、ロケットはV2、みんなドイツ人が先にやった成果をアメリカが横取りして成功させている。そのへんの経緯を無視しているわけではもちろんなく、メッサーシュミットMe262の実機は置いてあるし、ここでは歴史として追ってあるのだが、世間一般では飛行機はアメリカが発明し発展させたものという理解になってしまっている。写真も映画も発明はヨーロッパなのにアメリカ特産品になってしまったし、アートもそう。
ここに展示されている飛行機はどれもマイルストーンになった機体だという。リンドバーグのSpirit of Saint Louisとか。
イオニアが賞賛される。初の大陸間飛行、初の極点飛行、初の有人宇宙飛行、初の女性黒人機長……。一番乗り、オリジナリティを賞賛する文化。だが、都合よく改変されていることも多々あるような気がする。
結局閉館17時半までいて、途中飛ばしたのだが見きれなかった。もう飽きてきたのだが、しゃあないまた行くか。
もう味の薄いトマトソースのパスタには飽きた。I StとMassachusetts Stと6 Stの交差点の東角にある、東洋系のおばさんがいる小さな店でジャスミンライスグリーンピースパニールカレーの缶を見つけて買う。こんなものすら見つけるまでにこれだけかかった。何しろダウンタウンなど中心部に居住者はほとんどいないらしく、スーパーマーケットもなんにもないのだ。China Townの店にも米はあるが、10kgもあってとても使いきれない。生野菜があるのはここくらいだが、適当な調味料がない。卵は以前あったが切れていた。Targetに行きたいが遠い。
鍋だけでは米は炊けない。鍋に合うふたが必要だ。水と火も。ふたがなくてNYで買った米はとうとう炊けなかった。ここにはある。炊いてみた。ジャポニカ種と同じ炊き方でおいしく炊けた。もっとぱらぱらしてるほうがインディカ種らしいんだろうけど。カレーはさえない。まあこんなもんだろう。