7時頃の日の出前には快晴。でも予報ではぱっとしない天気。日の出頃の7時半には積雲がちらほら。
Smithonianはまだコンプリートではなかった。残っていた施設のひとつ、National Zoological Parkへ。遠出すると天気の急変時に戻ってこられず、せっかく晴れたのにと臍を噛む羽目となりかねないのだが、ここは思い切って出発。9ドルでメトロの1日パス購入。歩いて行けない距離でもないし、地下鉄に乗っちゃうと街並が見えないわけだが、電車に乗れば徒歩では行けないところに行けると言われてそれもそうだと今さらながら気づく。DCに着いた初日にUnion StationからMetro CenterまでRed Lineに乗って以来の交通費出費。ところが改札を通れない。駅員に告げると平日は9時半まで使えないとのこと。ラッシュ時は使えないと。1日パスじゃないだろうが。昨日使っておけばよかった。待ってようやく乗車。駅からしばらく歩いて動物園。
チータは暇そうにごろごろしている。ガゼルとか寒そうなんだけど、あのひとたち赤道あたりに適応した体だろうに、こんな池に氷が張ってるようなところじゃどう考えてもしんどいだろう。種の保存もいいけどそこんとこはどうなってんだろう、なんてことは動物園側は百も承知で、この時期になると休止中の展示が多い。ここが目的で行くならもっと温暖な時期に行くべき施設。
パンダの展示はFujifilmのサポートらしい。Fujifilmからの撮影法のアドヴァイスが書いてある。パンダは中国からのレンタルでかなりとられるらしいのだが、いつまで続くだろうか。しかも監視室があってモニタであちこちから見張る人員も必要。
Bird Houseでは鳥が間近で見られて楽しい。ちっちゃい鳥かごで飼うのは動物虐待だと思うけど、これくらい広ければまあそこそこ飛べるし餌には不自由しないし子孫も残せるしで、彼らもどうにか我慢できるだろう。
ニューギニアに生息するWestern Crowned-Pigeonという、アフロヘアのような頭飾りをつけた、ブロイラーより大きいくらいの鳥のたぶんオスが、木の枝を拾ってきてたぶんメスに渡そうとするのだが、メスはちょっとかじって落としてしまう。オスは落ちた枝をあちこち探してはまた拾ってきて、メスの気を引こうと持っていく。でもメスは無関心。オスは懲りずにまた同じ枝を拾ってくる。で身づくろいしてやったり。何度も何度もやっているけど見向きもされない。おもしろいなあ。Outdoor Flight Exhibitは寒いせいか休止中。アフリカの赤くてでかいインコは小さな温室に閉じこめられ、こつこつガラスを叩いて出たがっている。フラミンゴとか首を後方に180°以上回してるのだが、何もそんなに回さなくても。
無脊椎動物でひとまとめ。オウムガイの目はピント合わせのために、人間の目のようにレンズである水晶体の焦点距離を変えるのでなく、眼球自体を変形させ、ピント位置に色覚細胞を動かすのだとか。いわば、インナーフォーカスでレンズの内部構成を変更し、焦点距離を変えてピントを合わせるレンズと、全体繰り出し式のレンズとの違いに相当するだろう。あるいはバックフォーカス方式。図によるとオウムガイのレンズは球に近いが、屈折率の高い水中でそんなに焦点距離を縮める必要があるのか疑問だし、だいたい近くにピントを合わせる際に眼球が縮まっているのはおかしいので、この解説の図はあてにならない。
無脊椎動物を食べるには何がいいかという話で、「望ましくない」としてハングルの書かれたカップめんや日本語の入った乾燥沢ガニ、エビフライ、エビのスープなんかがあげられている。養殖されるなどして他の海棲生物や環境を脅かすから。でもあんな商品そのものを、具体名の入ったラベルつきのまま堂々と出して買わないよううながしていて、問題にならないのだろうか。しかも国立の機関が。企業批判としてあえてやっているのだろうか。訴えられたらどうするんだろう。
推奨されているのはカキ、アサリ、タコ。はちみつも入っているのだが、はちみつ自体は無脊椎動物じゃないでしょうに。
さっと見てすぐ出てどんどんMetroに乗って元をとるつもりが、どうもゆったり見てしまう傾向がある。見終わって出たのが14時過ぎ。Red LineからGreen Lineに乗り換え、Anacostiaで降りてSmithonian InsutitutionのAnacostia Museumに行くつもりだったが、歩いても行けるし時間も少ないので別の日に行くことにし、せっかくの1日パスを有効活用すべくそのまま先へ。はじめての土地で、そこを知ろうといつも最初にやっているやつだが、Washington D.C.では主要目的地がみな徒歩圏内なので、地下鉄に乗ろうという気が起きなかった。Southern Aveから外に出る。森の中に同じつくりの家が並ぶ住宅地がときどきぽつんと出現。丘陵に墓地。とりたてて降りる必要はなさそう。Branch Aveで折り返す。古い家が点在する新興住宅地。Yellow Lineに乗換。ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港の手前から地上へ。低層ビルが建ち並ぶ。King Streetで降りる。でかい塔のある建物も歴史的建造物らしいが、そちらとは逆側のAlexandriaへ。ヴィジターセンターを探そうとしたら、King Street行きのトロリーバスが止まっていて、FREEとある。行き先も町のことも何も知らないのに迷わず乗る。ベンチが前向きに並べてある古風なバス。利用者は多い。その名もOld Townという古い町の観光スポットや店の案内のアナウンスが流れる。終点まで乗って降りる。煉瓦づくりの古い家が並ぶ趣のある町。いわゆる「かわいい」的街並なのだが、日本のその方面と違ってこれは本物。戻りのバスに乗せてもらうつもりだったが、ミュージアムとアナウンスにあったので探してみる。すぐそばがPotomac川で、船着き場がある。港町として歴史があるらしい。King StreetからUnion Streetに入ったあたりにTorpedo Factory Art Centerというのがあり、入ってみる。案内係までいる3階建ての大きな施設だが、要するにアーティストの集合アトリエ兼展示即売集積所。たくさんのアーティストが入居しており、中でスタジオとして制作をしていたりただ制作物を飾ってあるだけだったり。1、2階はアクセサリー類が多く、3階は絵画。これがお話にならない程度の低さ。ラッセンとかあんな感じの売り絵。銀座の貸画廊のほうがよほどまし。写真は4人いて、モノクロとカラーが2人ずつ。いずれも大型インクジェットプリンタが中にある。1人はパソコンで作業中。モノクロの甘ったるい売り写真、というより今時あの程度で売れるんだろうか。中に入って話をする気にもならないので外から眺めるだけだった。写真のギャラリーも1件。中でちゃんと見たわけではないけれど、外から見る限りでは同様。とにかく、幾十とあるブースのひとつとして中に入ってみようという気を起こさせるものはなかった。そのビルの中にAlexandria Archaeology Museumという1室もあった。これもお粗末な代物。あれほどの美術館のあるDCの文化圏でさえ、この程度のものが大手を振ってまかり通っているのか、というのがわかったのはいいことであった。あれだけで判断できるだろうか。Alexandriaに関してはできると思う。何しろ数が多かったから。そのビルはショッピングビルに通じていて、出たところでさっきのバスが止まっていて、発車を待つひとが数人。ちょうどよく運転手が戻り乗れて駅に戻れた。もう外は暗い。Alexandriaの町自体は、DCのDowntownとは違ってひとの温もりの感じられるいい町。でも、もう行くことはなさそう。
駅のホームにあがるとYellow Lineの下りが来たのでさらに先へ。もう18時過ぎで暗くてよくわからないものの、わりあい大きなビルもあって広い道路もあって開けている様子。終点Huntingtonで折り返し。Crystal Cityで降りてみる。どんな光輝く都市かと思ったら、なんのことはない集合住宅が並ぶだけ。たぶん。駅は大型ショッピングセンターにつながっているが、その上も集合住宅。ロッキード・マーティンの戦闘機なんかの広告が駅にたくさんあったので、工場があるのかもと期待したのだが、少なくとも駅のそばにはない。その1駅先のPen*ta*gon Cityでも降りてみるが、やはりショッピングセンターだけ。こっちは大きい。ホテルもある。それだけ。さらに1駅先のPen*ta*gonでも降りてMemorialも見るが、暗くてよくわからない。おそらく人名が刻んである透明の碑が並んでいる。こうして無理矢理1日パスの元をとった。
pomeraの底面についているゴム脚が1つなくなってしまった。残り3個で支えている状態で、外で打つなら問題ないが、平らなテーブルの上などだとガタガタして打ちづらい。どうってことないパーツなのだが、ないと使い勝手に大きく影響する。帰ったら修理に出すか。自分でなんとかするか。それとも残り3つもとっちゃうか。延長脚部を延ばすと少しは安定するがまだガタガタ。と思ったらポケットからゴム脚が出てきた。
このpomeraも数カ月でだいぶ使い込んだので、キーの印字がかすれて表面がテカテカになってきた。思ったことがあればポケットからさっととりだして、立ったまま片手で打っている。手放せない。旅の道連れ、話し相手。こっちが一方的にだらだらしゃべりまくるだけだけど。
ニンニクとバーベキューソースの野菜炒めをつくっていたら、においがおいしそうで困るといって、アリゾナから来たという学生が窓を開けにきたので、少し振る舞ったところ、カリフォルニアワインの赤をくれた。なかなかおいしかったのだが、DCでは宿での飲酒は御法度。DC滞在中は個人的にも御法度だったのだが、つい忘れてしまった。せっかく12日間酒を抜けたのに、わずかだが飲んでしまった。不覚。
DCにこんなに長く滞在するひとは少ないようで、同じ部屋の宿泊客もどんどん入れ替わっていく。部屋には机などがなくベッドで寝るだけ。座りたければ食堂かロビーに行くが、机で作業するには食堂。そこで一緒になるひとの顔ぶれも移り変わっていって、来た頃からいるのはNatural History Museumに交換研修で来ているというメキシコの植物学者くらい。おそらくその次に長い滞在者になった。それもあと少し。みんな旅人。