暗室二回目。8時間。8x10ベタ9枚。ようやく効率が上がってきた。千葉など夕刻はニュートラルこそ出せてもやはり冴えない。白飛びや黒ツブレが出るにしても、やはりコントラストが高いほうがいい。
ここで今回初めての引き伸ばし。そなえつけのEL-Nikkor135mmを追っ払って、持参したRodagon150mm様をマウント。しようとするも、レンズボードをライカマウントから50mmに換えてもその先の口径が小さくてつっかえる。ターレットは回らないし情けないぜOMEGA。しょうがなくねじこみを途中までで止めてどうにかセット。傾斜支柱機でなくAFならちゃんとつけられそうな気もするが、あれはマニュアルのフォーカシングがかったるい。と思ってこっちにしたのだが、これはこれでピントギアが固くてよろしくない。やっぱり国産の伸ばし機は使いやすい。Componon135mmも持って行ったが150mmのほうが小倍率時にレンズが低くなりすぎないのと周辺減光が少ないのでこちらにする。支柱高も今回のサイズなら足りる。置いてあるガラスキャリアはレジストピンが邪魔してロールフィルムのスリーブが装填できないという啞然とするようなヘタレ。しかも一枚しかなくガラスはキズがちらほら。ガラスキャリアが必要になるようなへんてこなことはせずにお決まりの範囲で足りる客ばかりだと見える。そこですかさず持参のLPLガラスキャリアを持ちだし横浜NTTを8x10半裁の5x8に露光。ところがニュートンリング発生。キャリアに紙を挟んで浮かせても解消しない。ベース側のアンチニュートンリングガラスを外してみるが依然出るので戻して乳剤側のスヌケガラスを外したら消えた。しかし両端にくわえのマージンがあるコマはいいのだが、中間のコマだと片側に押さえがなく浮いてしまう。その状態でひっくり返して乳剤側をアンチニュートンにし、ネガをただ乗せた状態にして当座をしのぐ。しかし平面性はかなり劣化するはず。無雲の空が広範囲にわたっていて乳剤面が平坦すぎるということに起因しているのだろうから、ネガの濃度とは関わりなく今回は基本的にすべてのネガで発生すると考えられる。両方をアンチニュートンにすればいいわけだが間に合わない。片側のみガラスというのはホコリの除去という点からすると利点もあるので、今回はこの条件で何とかするしかない。アンチニュートンガラスは、オフフォーカスにすると妙なニジミがピントルーペで確認できるし、画像に何らかの影響を与えると思われる。6x12を4x5のキャリアにかけて片面しかガラスがないということだと、上記のくわえが足りない問題を解決しても、挟まれているのは2辺だけで残りの2辺は遊んでいて片側にガラスがあるだけなので、全体としてフィルムの浮きは避けがたい。したがってある程度絞り込む必要があり、両面がアンチニュートンになっているこのガラスでは裏側の粒状も焦点深度に入ってしまって画像により影響を与えるという可能性もある……が、今回は内容柄画質に拘泥しすぎてもしょうがないだろう。
次の障害は画面内に黒い汚れの発生。ネガにはないのでほっとするが、イーゼルのつまみで反射しているらしい。四枚羽根のネガマスクも用意がないのでマスクを作らない限りフィルム外に素通しの光が出てしまう。DO! PRINTSのIFFにはマスクがあった。この点はあちらのほうがよくできている。しかしこれまで誰もガラスキャリア+マスクを要求しなかったのか。フルフレーム黒フチ付きで焼こうという人間はここには来ないのだろうか。
横浜一組焼く。IMPRESAで一段オーバーでもほぼ色の傾向は変わらないようで、フィルター値は変えず露出を調整するだけでほぼ揃えられる。なんとかなりそうだ。撮影時の周辺減光は画面内で1段程度と見なし、下辺を最大にして全体と同じ秒数露光する。この数値の妥当性よりも、セーフライトもない環境で0%から100%までなだらかなグラデーションで焼き込むのが至難。とにかく数焼くしかあるまい。フットスイッチを持参してレンズに蓄光テープ貼れば少しは助けになるだろう。空にまだらのようなものが見える。乳剤のムラだろうか。こればかりはどうにも……。
フジの印画紙は青がよく出る。コントラストも高いようだ。まともな比較はしてない。ような気がするだけ。
浦和では焼き込んだ部分の色が黄カブリ。何度やっても解消しない。ヘイズだろうか。露光が3秒程度と短いので、相反則不軌の可能性がある。
浦和のあとのセッションは空が冴えないだけでなく3番目が傾いている。ピントがいいのだけがとりえ。いままでこういった場合には、たいていピントよりも構図なりで選んできた。ちょっと眠いし、ここはピントには目をつぶって抜けのいいほうにするべきだろう。パキーンとコントラストもあるし。と焼いてみるが想像以上のボケ方。平行を出していなかった段階なので片側が極端にボケている。これじゃあいくらなんでも。というわけでやりなおし。無駄はなくならない。
これまで制作上でどんな問題が起ころうともすべて克服してきた。何しろ人がやっていないことをやるのだから予想外の障害があるに決まっている。必ずどうにかできるという自信もついた。4x5にしても何回かやれば障害も出つくして難なく処理できるようになるが、それは量産体制に入ってしまったということでもあり、ほんとうにおもしろいのはこうやって悪戦苦闘している時期かもしれないとたまに思う。とはいえ、今後見込まれる困難を考えるだけでもひるんでしまう。3組のために当面かかりそう。まったくえらいことをおっぱじめてしまったもんだ。またしても。