H-4.9F-3.6シノゴ二台。しかしエボニーとジナーよりははるかに実用的。しかし三脚もあいかわらず二本で両手がふさがる。ところがレンズを忘れる。これまでレリーズケーブルやらルーペやらいろんなものを入れ忘れてきたけれど、レンズ一本も持たずに出るというのはさすがになかったのではないか。でもさっぱりで案ずるにも及ばず。
朝から特快晴。しかし彼方の空はくすんでいる。あとひと月もすれば大陸から黄色い奴が風に乗ってきてもっとひどくなる。水道橋東京ドームホテル南側正面から。その場で入射部改造。12時。EV15.7、2m。太陽の反射が入るので山中信夫型フレアが出るか。外堀通りと白山通りの交差点を隔てて都立工芸高校。EV15.8、2m。水道橋クリエイトに出して3時間ちょっと。ここがいちばん速い。お茶の水を経て秋葉原、ラジオデパートとラジオセンターターレット式かスライド式か、穴の切替と遮蔽機構に流用できるものはないかと探すが見つからず。あのへんはそういうふうにつぶしのきくものはほとんどなくて、いつ行っても期待はずれ。浅草橋でおりかえして水道橋に戻りネガ引きとり。これって……ちょっとやりすぎかな。そんな弱気でどーすんの。この時点で16時前なのでもう一セット回すつもりだったが、もう特にテストすることもなく、あとはパラメータを確定して仮どめ部分を固定したほうがいいので撤収。土日はラボも休みだししばし熟考。
この機材をカメラと称するのにどことなく違和感があって、どうしてかと考えるに、万人にとって操作法を標準化できるようなわかりやすい機構を備え、多様な条件下でも一定の動作が保証されている機械なるものがカメラのアーキタイプとして刷りこまれているからではないかと。しかもメカメカしさがないとカメラと呼びづらいと。その線でカメラというとオリンパスOM-1とかアサヒペンタックスのSPあたりの昔使った機種か。コンタックスRTSII型はまぎれもなくカメラだった。しかしRTSIII型になると、あまりに存在感と精密感、というより単純に重量がありすぎて、あんた写真を撮る以上に何かたくらんでるんじゃないの、とかこれ写真なんか撮っててもいいような道具なんだろうか、と思ってしまうぜいたくさがあった。今回のものはそれと絶対値は同じで向きはマイナスともいうべき途惑いをもたらす。ここまで貧相なのにカメラ扱いしていいのかと。写真を撮影するための道具と考えるならまぎれもなくカメラなのだが、世間一般におけるカメラの通念に照らすとあまりに落差が大きすぎる。ジナーを街中で構えていると興味深そうに見ていく通行人が多いが、これは何やらまずいものであるかのようにそそくさと立ち去っていく人が多いのだ。陰謀を感じさせるのだろうか。それとも禁忌のにおいがするのか。カメラは不適当としても、暗箱ならいいだろ。ジナーよりははるかに暗箱だし、エボニーのノンフォールディングタイプよりも暗箱と呼ぶにふさわしい。でも暗箱ってたぶん蔑称なんだけど。
そういえばフレアは出ていなかった。太陽光が直接じゃないと出ないようだ。