乾燥後のネガだがあちこち指紋がついている。写真器への脱着時だろう。ハンガーではないという気がする。ハンガーに入れたまま乾燥させると跡がつく。水洗まで、あるいはAgガード浴までで、乾燥はベビークリップで順当に行うべき。穴は開くがそういうもの。画角はかなり広い。光量ムラはさほどではない。テストとしては充分なデータが回収できたとは言いがたいが、そんなのはこの先どうとでもなることであって、初っ端の一発目で何より肝心なのは、これは行けるとの手応えが得られるかどうか、ここに尽きる。手応えはあったのか。あった。どう化けるかはわからないけれど、こうすればこうなるはずだという仮説が実証されて、しかも、どうなるかやってみないとわからない部分が目の当たりになる。昨日書いた、このメディウムの懐の深さとか可塑性とかいうのはズレていた。盛り上がりどころはそこじゃない。筋道立てて考えていった過程が現実の結果に裏づけられて、なお、そこには見たことのないものがある。「理科」の実験、それこそ日光写真とかいった実験の「わくわく」とか「驚き」、そうした原点と同じものがここにはある。
そこで実用器の原料を調達しに上井草へ。むろん徒歩。早稲田通りを西へ。妙正寺が近隣にあるようなので脇道に入る。妙正寺公園。かつて妙正寺池というものだったらしい水たまりを中心とする公園。噴水があって水鳥が泳いでいる。古いが夏のさなかにはほっとする。
妙正寺にはなかなかたどりつかず杉並区立科学館なるものに行きあたる。このあたりはずいぶん動き回ったつもりなのだが、まったく知らなかった。早稲田通りは自転車やら原付やらで何度も通ったはず。道一本入るとこんなものが出てくるとは。まだまだ東京には知らないものがいろいろあるかもしれない。高度成長期の「夢ある未来」を体現したかのような建物。ずいぶんとすすけてさびれている。区レベルの文化施設としては、科学館と特化したもののはしりだったのではないかと思えるくらいの古さ。これがあったかわりに美術館はできなかったというところか。天井はドーム状。プラネタリウムがあるらしい。あのドームの内側がプラネタリウムならかなり大規模。webで館長募集している。裏で縁故で決まっているが表向き公募、という風情ではない。1年契約で月26万。これじゃ気の利いた人は誰もやらんだろう。公式webサイトもない。全体としてやる気なさげで、とうに盛りを過ぎたおもむき。でも、「かつて未来があったところ」のなつかしさは悪くない。
やっと法光山妙正寺。豪奢ではないが居ずまいのいい寺院。この一帯はおそらくなんとか種低層住宅地で高層建築が規制されているので、ある程度の敷地があればその中では寺が寺としての景観を保てる。ところが都内ではそういう寺がおそらく少ない。
しばし歩く。西日が正面から当たる。ともかく行きつき塩ビを見てみる。これだけの厚があればそこそこ遮光される。完全かどうかの保証はないけれど。しかし40では細すぎ。50は太いがこれで行くしかない。しかしスーパークランプもどきで固定できるかという懸念がある。戻ってクランプ持参で出直すかとも考えるが、せっかく遠路はるばる来たのにまた来るのもかったるいので一か八かの勝負。計6,000円近く。おかしいな。電話で聞いた話と違うような。まあいい。切ってくれ、というと、1、2箇所ならいいがこんなに多くは無理、という。他の店よりこっちのほうが割高で遠いのに、サービスで切ってくれるって言うから汗だくになってここまで来たんだがね。しかしもう暑いからここでいいやって心境。そこで自分で切ることにして電動ノコギリを貸してもらうのだが、こいつがどうやってもまっすぐに切れない。チェーンソーのように歯が回転する仕組みなのだが、チェーンではなく幅12mm程度の鋸歯。途中でねじれているためかどうしても直線が出せず曲がってしまう。これは技術とか習熟度の問題ではない。まいったな。まともな機材を自分で買うしかないか。ともかく蚊にたかられまくりながらぶった切りまくり。
帰りに井草*八幡宮に寄る。ここは青梅街道と早稲田通りの交差点に参道が面していたので知っていたが入ったことはない。入り口の灯籠と門が立派。敷地は広い。拝殿と本殿は古風。蝉がたくさん。鬱蒼とした鎮守の森があるまっとうな神社。善福寺という寺はこのあたりにはなさそう。地名に残っているだけか。高幡不動駅近くの万願寺みたいなもんだろう。
帰って試したら、クランプでしっかり固定できた。快哉。クリップではまず無理だった。こっちで正解。さて実用器の組み立て。低反射布を内面に貼り、銅板を貼りつけるという手順。さてさて。