朝からはっきりした雲はないがやたらと視界が悪い。巻層雲か、光化学スモッグか。昼前から雲が厚くなり光量が下がったので様子見。山中信夫に倣って自宅の前に向ける。ベランダからなのは山中とは違うけれど。Gitzoにスーパークランプのバッタもんを設置し水平は出すが方位磁針もなくZ軸方向はあてずっぽうで正面を出す。16:30露光開始。EV14.9。雲のせいで暗い。.28φの長型で4m、.34φの短型2m。
日没後処理。その前にKodakのシートフィルム現像ハンガーを使ったことがないので、タンクに水を入れて不要フィルムを使って全暗で練習。タンクの間を開けなきゃ指が入らない。実際にやってみないとわからないというのが情けないがいたしかたなし。フィルムの端だけではなく面にどうしても触ってしまう。なかなかタンクの中にすんなり入ってくれずKodak純正のラバータンクでは前後方向の照準を外してはみだすことがある。6本でも多いのかもしれない。パンケース流用の容器では左右も広すぎるのできちんと入れないとハンガーが容器内に落ちてしまう。それにしても攪拌で傾斜させたときの滑り止めといいさすがよく考えられている。他メーカーのパチもんはこのへんのつくりが手抜き。
次に薬品を調製。T-MaxRSデベロッパーは1ガロン用でT-Maxデベロッパーのように小分けはきかないとのこと。やってやれなくもないが最初なのでおとなしく従って全量希釈。ちょっと水が多すぎ。用意した冷水の量が足りず27℃。無理に液温下げてもその液温を維持する手段がないしそもそも温度計が見えないので調整もできない。取説がついてこなかったので、タンクのどこまで液を入れればいいのかもわからない。適当に。1.5L程度なので3.8Lだと2回使って半端に余る。密栓すれば半年もつとはいえこれで1,000円強は高すぎ。やはりXTOLにするか。単薬買って自家調合も考えるが、そんなに量使わないし、単薬と化学天秤の初期費用を考えると元が取れるかどうか難しいところ。定着液は2004年の個展の時に溶解したものかもしれないフジフィックス。1本では足りずフジフィックスではないかもしれないのも混ぜる。白い粉が浮いている。悪の巣窟。停止は前浴と兼用。それに水洗で計4槽。
100T-MaxはEI100の24℃で6m15sとのことなので、27℃なら5mくらいか。写真器を遮光袋から出してみたら、たぶん袋ごと踏んづけたのだろう、短いほうは銅板がぐんにゃりと曲がり、もうひとつは、あろうことか板が剥がれている。あわてて袋にしまうがしっかりカブリ済。とにかく消灯して装填。あと4枚は4月15日の大崎、10年前のTMY。タイマー押して現像開始、30sに一回攪拌。ハンガーがタンクに入ってくれず難儀。しかし現代の一般的な写真用品は基本的に誰にでも使えるようにつくられている。誰にでも、というのはすべての人に、ということではなく、意志を持った人が訓練すれば使えるようになる、ということである。駅の券売機や銀行ATMの操作は高齢者などを排除しているが、それでも表向きは誰でも合理的にふるまえば操作できるものとして設計されている。その程度に「誰もが適応できる」ことで公共性は満たされるという考え方が、こうした製品を成り立たせている。これが標準化というものである。そして写真用品も、誰もが取扱説明を理解して多少の努力さえすれば正しく使えるはずであるという態度のもと設計されている。その是非は別にして、だったらわれわれには使えるはずだ。使いこなせないわけがない。5mちょいで停止浴へ、のつもりがその先に置いてあった未使用現像液のメスカップにつっこんでしまう。悪行三昧。
定着が5mくらい経過したところで明かりをつけてみると、大崎はやや薄いがなんとか像が出ている。1枚はかぶっている。新型写真器の1枚はかぶっているなりに像は見える。もう1枚は正体不明の光斑。デバイス・マテリアル・プロセスの三者ともとんでもなくでたらめ放題なのに、とにかく像が現れている。新しい試みの最初の結果を見たときにはいつも思うことだが、写真ってのはたいしたもんだ。この懐の深さ、可塑性の大きさ。
しかしこれははたしておもしろいのだろうか。それが問題だ。