また一晩貯蔵した液をプロセッサに投入。これは、バット処理への準備として、少量ずつ使った薬品を保管しながら何日くらい使い続けられるのかのテストも兼ねている。
ハンズで加工したアクリルの保護紙をはがしてみたら、肝心の中窓の片側が全体にわたって細かく欠けている。今まではこんなことはなかった。2mmと薄いと切断時に欠けるのだろうか。以前アクリル専門業者に加工させたときには、紙を貼ったままカットするとエッジが汚くなるとのことだったので、そのせいではないかとハンズに聞くと、むしろ紙をはがして切るとそうなるという。糸ノコの歯の目が向かう側は切り口が荒れるので、切断時には裏に不要のアクリル板を当てて切るのだが、その当て板が浮いていたのではないかとのこと。むろんやり直してくれるという。アクリル屋よりハンズのほうが、切断に限っていえば加工水準は高いと思う。
ところがこの板をマスクとしてガラスネガキャリアの下に置いて焼いてみると、どうも思い描いていたのと違う。2mm厚では黒フチの周囲のボケ足が短くて、そのわりには境界が微妙に曲がっていて、手でアクリルカッターで切ったのとさしてかわりばえしない。やはり5mm厚のほうがよかったろうか。
せっかくなのでこの板をひっくり返したりネガキャリアから離したりして黒フチの出かたを試してみる。断面に歯の方向の影響が出ていて表寄りと裏寄りで均等ではない。ただ、アクリル表面が片面のみのマット加工なので、実際にはマット側をネガキャリアに向ける必要があるのだが、再加工の際の指示の判断材料にはなる。ただ、エッジの欠けの影響のほうが大きい。赤いボケ足が草食動物の歯状に細かくデコボコしており、欠けがそのまま出ていると思われる。
黒フチの出目がはっきりしていると主張が強くなりすぎる。ネガキャリアを削ってアルミの地肌がむき出しになった状態で焼いたプリントのように、一枚だけならいいが展示で並べると同じ反射パターンが続いて目についてしまう結果となる。なるべく癖のないまっすぐな矩形でなだらかなボケ足のほうがいい。しかしある程度ボケ足の幅があり、細かいテクスチュアが見えることが望ましい。目立ちすぎず、しかも光学的なボケの反映であることが適切に見てとれるようなものが望ましい。
これは効果の問題である。いやしい話と見る向きもあろう。しかし、額装やらフォトアクリルといった展示形態を気にするなら、少なくともそれと同程度には無視できない展示効果だと思う。何しろ画面の一部なのだから、外側のフレームなどよりもはるかに中身に強く関わっている。だいたいが、日頃鑑賞対象として提示される写真の多くが、画像のまわりをシャープカットして、そのまわりを紙白、ポジ感材の場合にはまれに黒、あるいはマット、裏貼り、フレーム、壁、といったもので取り巻かせているわけだが、画像のエッジをきっちり切る処理が大半を占める展示形態に対して、疑問を抱かずに受け入れていていいのだろうか。矩形のはっきりしたフレームを、あたかも天から降ってきた掟のごとくに守っていてどうするのか。むろんインクジェットでの黒フチもどきはお話にならないけれど、ここを工夫してみることは無駄ではないと思う。「邪道」ではあるかもしれんが、それはそれでおおいに結構。